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ソンのルーツを探しに 〜キューバ、グアンタナモへの旅〜(その4) by二田綾子

2021.10.28

二田綾子さんによる『ソンのルーツを探しに 〜キューバ、グアンタナモへの旅〜』最終回です!

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(その3から続く)

<ハイチの移民が残る町、エル・サルバドール>

 2004年にグアンタナモを再訪した際、モンゴが私と会うなり熱く語りだした。
「前はヤテーラスが発祥地だ!と言っていたけど、調べていくうちに違う場所もいくつか出てきた。チャングイにおける最重要の町はヤテーラスじゃないかもしれない。エル・サルバドールだ!」
 すぐさまエル・サルバドールに私を連れて行かないといけないという使命感に燃えていたモンゴは、急いで車をチャーターしてくれ(今回は車の調達がスムーズだった)、エル・サルバドールってどこよ?中米の国?などとしか思えないような全く無知な私を翌朝その町に連行した。
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posted by eLPop at 18:58 | Guindahamacas

ソンのルーツを探しに 〜キューバ、グアンタナモへの旅〜(その3) by二田綾子

2021.10.21

二田綾子さんによる『ソンのルーツを探しに 〜キューバ、グアンタナモへの旅〜』第3回目です!

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(その2から続く)

<チャングイはどこで生まれたのか?>

 しばしばチャングイはソンの先行ジャンルと言われるが、チャングイが生まれる以前に、グアンタナモよりさらに東に約150kmに位置するキューバ最東端の町、バラコアでネンゴンという非常にシンプルな音楽が生まれた。2小節のモントゥーノ(コール&レスポンスによる掛け合い)が何度も反復され、ほとんど即興的な要素もなく非常にシンプルな構成でできている。チャングイを演奏するグループの多くがネンゴンをレパートリーとして演奏しているあたり、ネンゴンとチャングイは密接な関係があるように思える。その他、同じくバラコアにはキリバという、これもモントゥーノが繰り返される様式が存在するが、こちらもグアンタナモのチャングイ・グループの演奏でよく聴くことができる。また、グアンタナモにレヒーナやモントンポロなどという、こちらもネンゴン同様モントゥーノの反復による音楽様式が伝承しているが、これらのようなシンプルなソロとコーラスによる掛け合いの音楽様式が土台となり、チャングイが生まれたと考えられる。
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posted by eLPop at 20:38 | Guindahamacas

ソンのルーツを探しに 〜キューバ、グアンタナモへの旅〜(その2) by二田綾子

2021.10.14

二田綾子さんによる『ソンのルーツを探しに 〜キューバ、グアンタナモへの旅〜』第2回目です!

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(その1から続く)

<初めてのグアンタナモ>

 キューバ第二の都市、サンティアゴ・デ・クーバからトラックに揺れること約二時間、すっかりモンゴに洗脳されて本場のチャングイを聴かない訳にはいかないという気持ちになっていた私は、同じくキューバに留学していた日本の友人と一緒に念願のグアンタナモに到着した。ちなみにそのトラックは「安いから」と知り合いに進められた乗り合いトラックで、後ろの荷台に大勢がひしめき合って座るオープンカー・スタイルだ。風に当たりながら眺める田舎の風景が旅情をかき立ててくれる上に非常に格安なのが嬉しい。しかも一緒に乗っている人とも面白おかしいおしゃべりもできるから、体力に自信がある人はこのようなスタイルでの移動がおすすめ。(しかし友人は移動中に降られたにわか雨のせいでグアンタナモ滞在中は風邪で寝込んでしまった。)
 サンティアゴ・デ・クーバもそんなに大きな町でもないので、想像した通りグアンタナモは小さな町だったが、それでも右も左も分からない。近くにいた男性に尋ねると「町の中心は公園があるところだ」というのでパルケ・セントラル(中央公園)に向かうことにした。
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posted by eLPop at 09:12 | Guindahamacas

ソンのルーツを探しに 〜キューバ、グアンタナモへの旅〜(その1) by二田綾子

2021.10.08

 キューバン・ジャズの「カミータ」レーベルやドキュメンタリー映画『Cu-Bop CUBA〜New York music documentary』の制作に携わってきた二田綾子さんが、『チャングイ:ザ・サウンド・オブ・グアンタナモ』という、キューバのチャングイの新録3枚組CDボックス・セットをSNSで取り上げ、かなり盛り上がっていた。そこで、キューバ音楽、特にソンやそのルーツの1つとされるチャングイなどに詳しい彼女に、チャングイの原稿を依頼したら、快諾下さった。マニアック〜学術的内容とグアンタナモ周辺の紀行的な側面ももった、魅力的な内容に仕上げて下さったので、ぜひお楽しみ下さい。
 全4回に分け、アップする予定です。

【二田綾子さんプロフィール】
 東京藝術大学音楽学部修士課程音楽学専攻修了。1995年以降度々キューバを訪れ、在ハバナ『キューバ音楽研究・発展センター』に留学し大衆音楽「ソン」のルーツを研究。
 2000年にキューバン・ジャズを中心とする音楽制作チーム「カミータ・レーベル」を写真家の高橋慎一さんと立ち上げ、2015年にドキュメンタリー映画『Cu-Bop CUBA〜New York music documentary』を制作。
 職歴は、音楽ジャーナリスト竹村淳さんが経営するテイクオフ→ディスクユニオン(ラテン・ブラジル専門フロア)→『SALSA120%』のウノを経て、今はなぜかペルシャ絨毯販売業。


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 今夏、マニアの心をわしづかみにするとんでもなく豪華な商品が発売された。その名は『チャングイ:ザ・サウンド・オブ・グアンタナモ』という3枚組CDと本のセットだ。

1. Changui the sound of guantanamo.jpg
*写真Changüí:The sound of Guantanamo (発売:Petaluma)

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posted by eLPop at 20:16 | Guindahamacas

わたしたちの間にある壁をどのように乗り越えていくべきか、粘り強く思考するためにby高際裕哉

2019.11.20

 eLPopメンバーの友人の一人でもある高際裕哉さんが、facebook上でチリの劇団ボノボの公演『汝、愛せよ』の観劇レポートを、今まさにチリが直面している社会闘争、そして日本における芸術をめぐる問題、そしてそれらすべての根源ともいえる分断と階層化による社会の地滑り的組み換えなどと絡めて非常に熱量あるエッセイを書かれておられた。高際さん曰く「勢いに任せて書かずにはいられなかった」というその文章に感銘を受け、今、少しでも多くの人にこのメッセージを呼んでほしいと思ったので、高際さんの許可を得て、ここに転載させていただくことといたしました。(水口)

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東京芸術祭ワールドコペンペティション2019 Photo Maiko Miyagawa


【基礎情報】
東京芸術祭ワールドコンペティション2019
アメリカ部門
劇団ボノボ『汝、愛せよ』
11月2日 (土) 14:00 / 18:00
東京芸術劇場 シアターウエスト


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posted by eLPop at 20:08 | Guindahamacas