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ラテンアメリカの移民の歌

2018.10.29

【eLPopよりのまえがき】:10月半ばからホンジュラスからの人々を中心とした「移民キャラバン」数千人がメキシコ経由で米国目指し移動しています。

母国での暴力やギャングによる犯罪から逃れて、より良い生活を送る機会を得ようとしているひとたちです。しかし、ドナルド・トランプ米大統領は、移民キャラバンの入国は認めないと宣言。メキシコ国境に軍を出動させ国境を閉鎖する方針といいます。

そんな動きに際して、eLPopメンバーの山口さんが中南米の移民の色々な歌を取り上げてくれました!
山口さんによる和訳の歌詞を読むと、移民の人々の心情や、様々な実情が浮かび上がります。
音源へのリンクもあります。ぜひ!

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ホンジュラスからの移民のキャラバンが話題になっていますが、ラテンアメリカには多くの移民の歌があります。これまでいくつか訳したことがあるのですが、気が向くままにまとめてみましょう。

"3度ずぶ濡れ / Tres veces mojado"
エルサルバドル人はアメリカにたどり着くまでにグアテマラ、メキシコ、アメリカと3度国境をわたることにちなんだタイトルです。
by Los Tigres del Norte

http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20110528/1306555525

"俺たちこそがアメリカ人 / Somos más Americanos"
"グリンゴには思い出してほしいもんだ おれが国境を横切ったんじゃないよ 国境がおれを横切ったのさ" かつてアメリカの西部もメキシコの国土であったことを指しています。
by Los Tigres del Norte

http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20120115/1326597882

"ずぶ濡れ / Mojado"
不法移民のことです。歌うのはグアテマラの人気ポップ歌手です。
by Ricardo Arjona

http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20091024/1256408037

"不法移民ばんざい / Vivan los mojados "
”おれたちの問題を解決するなんて簡単さ どこかのアメリカ娘をみつけて 結婚すりゃいいのさ ビザさえもらったら 離婚しちゃうけどね”だそうです
by Los Tigres del Norte

http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20110606/1307391343

"午後3時 / A las tres"
国に残してきた家族を思う出稼ぎ移民の歌。アルゼンチンのロックグループの作品です。
by Enanitos Verdes
http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20091108/1257634915

"自叙伝 / Autobiografía"
ニカラグアから不法移民としてアメリカに渡ったサルサ歌手の自伝サルサ。
by Luis Enrique

http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20100222/1266810408


"どうなるのだろう / Qué será"
アルゼンチン人ポップ歌手の歌です。原曲はプエルトリコ人歌手の作品。
by Diego Torres
Lyrics/composition: Franco Migliacci, Jimmy Fontana, Nicola Italo Greco, Carlo Pes

http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20100411/1270975891

"さすらいのコロンビア人 / El Colombiano Errante"
by Jorge Villamizar

http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20101205/1291556637

"エルナンデスの子どもたち Los hijos de Hernandez"
とぼけた曲調からは想像しにくいかも知れませんが移民の子がイラク戦争で前線に送られる不公平に対するプロテストソングです。
by Los Tigres del Norte

http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20110508/1304816960

"黄金の檻 La jaula de oro"
常に摘発に怯える不法移民の心情を歌っています
by Los Tigres del Norte con Juanes

http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20110527/1306491529

"フアンシート / Juancito"
プエルトリコ人なので不法ではありませんが移民先でストレスを感じている心情を歌うサルサです。
by Willie Colon

http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20110609/1307628127

"ラテン移民 / Emigrante latino"
作曲者はコロンビア人のトロピカル歌手フアン・ピーニャです。実はフアン・ピーニャって意外に若くてまだ67歳なんですよ・・・もっとも普通の人は知らないので意外もなにもないですが。
Autor: Antonio del Villar / Intérprete: Juan Piña con la orquesta La Revelación / Colombia, 1977.


http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20110603/1307134348


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posted by eLPop at 15:06 | 山口元一のiAy Hombe!

バジェナートとユネスコの無形文化遺産登録

2015.12.03

バジェナートがユネスコの無形文化遺産に登録されました。

https://twitter.com/UNESCO_es/status/671681508319604736

vallenato.jpg

でもすごいことですよね バジェナートなんて世界的に無名どころか(今でも無名だと思いますが)、コロンビアでもちょっと前まで”cosas de peones descalzos, ”(裸足で歩いてる土方風情の代物)“muy buenas para entretener borrachos, pero no para entrar con la pata en el suelo en las casas decentes”(酔っぱらいを楽しませるには良いかもしれないがまともな家の敷居をまたげるものではない)などといって、徹底的に侮蔑の対象だったんだから。

http://elpais.com/diario/1983/06/22/opinion/425080810_850215.html

ほとんどのバジェナートの音楽家は辺境の地の文字も読めない最下層の出身で、その多くはさすらいの旅芸人として人知れずのたれ死のような最後を迎えた。それがユネスコのお墨付きの「アーティスト様」だなんて・・・他国のことながら誇らしい。

http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20091114/1258178285

[Valle Dupar]



ユネスコに登録されたのはフグラーレス(旅芸人たち)のバジェナート。彼らは遅くとも19世紀末頃からコロンビア東北部、現在の行政区分でいうとラ・グアヒーラ県、セサル県、マグダレナ県東部を、アコーディオンをかついで、ニュースやゴシップから恋愛沙汰まであらゆる題材を歌にしながら放浪してめぐっていた。商業音楽としてのバジェナートは、歌謡曲化、ダンス音楽化しながら今も盛況だが、メディアが発達した今どきは旅芸人も何もないのは当然で、伝統的にもっとも重要だったバジェナートの社会的機能は、今も歌われる古い歌の歌詞や節回しにその痕跡を残すだけでとうに絶滅している。その世代でおそらく今唯一の生き残り、ナフェル・ドゥラン。彼が死ねばこの時代を音楽家として生きた人はいなくなる。



バジェナートに限らずコロンビアは伝統音楽が虐げられている他のラテンアメリカ諸国と違って、1960年代頃から「おらが地の音楽」を守ることに関しては、聴衆、音楽家、メディア、行政が一致団結して熱心なんです。(コロンビア音楽が定期的に「いなたい」とか言われて流行に敏感な人に「変な音楽」として取りあげられるのはそのせい) ちょっと素晴らしいですね。
posted by eLPop at 12:28 | 山口元一のiAy Hombe!

Hermoso cañaguate florecido...美しく咲き乱れるコガネノウゼンよ

2014.03.09

 ビジャヌエバからバジェドゥパルにいくバスに、その男は乗っていた。ラ・グアヒーラ県ビジャヌエバ市生まれ、職業はバジェナートの歌手。音楽家の一 族に生まれ、30歳に近くなって、ようやく名門楽団“Binomio de Oro”のセカンド・ボーカルに採用されたが、たいした評判にもならないうちに脱退。ついでにいうと、つきあっていた彼女にふられたばかりだった。

 失意の男を乗せたバスがある町にさしかかると、cañaguate(コガネノウゼン)の花束を山のようにかかえた男性が乗り込んできた。彼が奥の席へと歩いていくと、花束からこぼれ落ちた花びらがバスの通路を鮮やかな黄色に染める。その光景をみて、男は歌を作った。



Hermoso cañaguate florecido  美しく咲き乱れるコガネノウゼンよ
si pasa dile que deje el afán  もしもあのこがとおりかかったら、愛情を残していくように伝えておくれ
por favor embellece el camino  そして、その道を美しく飾っておくれ
que pise de tus flores al andar  あのこがおまえの花ビラを踏みながら歩くように

No quiere nada de mi  あのこはオレのことがだいきらい
ni mi adiós quiso aceptar  さよならさえも無視された
tantas veces le mentí  何度もあのこにウソをついてきた
que hoy me duele la verdad  今、真実がオレを苦しめる

tuvo toda la razón   オレにはわかるよ
para marcharse lo sé  あのこが去っていくのももっともだ
como buen guajiro yo  でもオレは一人前のグアヒーラっ子だから
mi falta la pagaré  自分のあやまちはつぐなうよ

 
Ay hombe olvidarla es imposíble   ああ、なんてこった、あのこのことを忘れるなんてできっこない
Ay hombe esto para mi es terrible  なんて恐ろしいことなんだ
Ay hombe sin su amor yo no soy nada  あのこの愛なしにはオレなんてないのもいっしょだ
Ay hombe que vacio hay en el alma   心の中にぽっかり穴があいたみたいだ


 「アレホ・ドゥランの“Alicia adorada”以来、誰もレコードにしたら売れるなんて思わなかった」(マネージャーのロベルト・メサ)古くさいリズム、“ソン”に乗せたこの歌は、2002年に発表されると、あれよあれよというまにヒットチャートを駆け上り、2003年のコロンビアでは、フアネスやシャキーラといった世界的なスーパースターをおさえてラジオでもっともよくかかった曲となった。
 “Ay Hombe”のメガ・ヒットは、“el muchacho que alguna vez cantó con Jean Carlos Centeno en el Binomio de Oro(いつだったか、ビノミオ・デ・オロでジャン・カルロス・センテーノの横で歌っていた若いの)”を“ホルヘ・セレドン”という一人前の歌手として知らしめるとともに、“La Nueva Ola”(新しい波)と呼ばれる、バジェナートの隆盛のシンボルになった。

Cuando escuche esta canción  この歌を聞いたら
va a saber que hay ansiedad  あのこはオレの熱い想いを知るだろう
tengo fé de que mi son  オレは自分のソンを信じている
donde esté la va a encontrar  あのこがどこにいようと届くはずさ

 ところで、夢の中でコガネノウゼンの道を踏んだ彼女に、セレドンのソンは届いたのだろうか。
“En un momento me la encontré . Me dijo que había escuchado la canción, pero no sabía que era para ella. Tuve la oportunidad de decírselo, pero no fue lo mismo. Soltó una sonrisa y siguió su camino...”
「その後、彼女とばったり会ったよ。その歌、聞いたわ、って言ってくれた。でも彼女のために書いた歌だって気がついていなかった。ボクはそのことを伝えるチャンスはあったんだけど、もう昔と同じじゃなかった。彼女はほほえむと、そのままいっちゃったんだ…」

posted by eLPop at 07:27 | 山口元一のiAy Hombe!