長年受け継がれてきた定型にどんなアプローチを加えれば再び新たな命を宿して、輪の外の人々にまで本来の魅力を広く伝えることができるのか。伝統と呼ばれる文化につきものの悩みではある。カラオケの普及でお座敷芸や土地ならではの宴の車座がすっかり消え、大いに落胆した小生は、当時リオデジャネイロ郊外からブラジル全土へと人気拡大したサンバのパゴージpagodeと呼ばれるスタイルに惹かれていった。あの頃の本州の民謡が失った呑みつ奏で歌う宴席の醍醐味を、まさしくパゴージが提供してくれていたから。
2005年前後だったか…友人に強く勧められ初めて体験したのが民謡ユニット「つるとかめ」。居酒屋でのお座敷ライブや2010年「青山民謡酒場」イベントをとおして、あらためて本土の民謡の闊達さに惚れ惚れしたものだ。木津かおりの存在を知ったのも、確かその頃。
2015年パーカッショニスト岡部洋一企画の音楽実験で出会い、翌2016年にゲスト岡部洋一&太田恵資(ヴァイオリン)でスタートしたという「木津かおりとthe民謡」シリーズ。2026年6月2日。当夜は10周年記念のめでたい節目。木津の艶やかな歌声、唄に応じて巧妙に三味線と和紙三味線、ごったんを使い分ける配慮が見事。
「佐渡おけさ」メドレーに始まり、海の唄括りで「神津節」〜「ショメ節(八丈)」〜「大島あんこ節」と続く第1部。「ナオハイ節」、暗黒版(?)「出雲崎おけさ」、「牛深ハイヤ節」、「阿波よしこの節」とくる。生粋の民謡サポーターと呑みながら普段着で民謡を味わいに来た観衆、およそ半々といったところか。
(写真提供:小澤周二さん)
第2部は10周年にふさわしく、ときにゲストを交えての賑わいを堪能。「魚沼松阪」、「黒田武士」、「新保広大寺」ときて…岡部のビリンバウ、太田お得意のホーミーまでが仕事唄「(阿蘇の)刈干切唄」に重なり、異界が交錯してゾワゾワ。まさにthe民謡の本領発揮。たまらん!
「おてもやん」の後は、プロを含む踊り手たちも飛び入りで、郡上踊り「川崎」〜「ゲンゲンバラバラ」〜「春駒」とすっかり祭りの渦の中。the民謡10周年記念バージョン「八木節」、アンコール「山中節」まで、木津らしい適度な緊張と笑い、のどけさのうちに駆け抜けて幕。ご来場の伊藤多喜雄さんより祝いの口上、ひとひねり。お土産に、記念の巾着まで…嬉しやのう。
昨年末の木津かおりリサイタルVol.3でも共演した、囃子方・田中傳一郎(鼓)
(写真提供:小澤周二さん)
☆次回予告:木津かおりとthe民謡Vol.33「人間くさく、土くさく、呑んで、囃して、みんなでひとつ」2026年9月3日(木)@晴れたら空に豆まいて
https://kitsu-kaori.com/posts/Rg3_bpIf
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