
ルーツである“クラシック音楽への回帰”を謳うカンタオールTakamitsu Ishizuka、8年ぶりのアルバム(コアポート)は静かな自信作。のっけ楽曲説明から始まり意表を突かれた9月のリリース記念ライブ@COTTON CLUBでは、マヌエル・デ・ファリャ「7つのスペイン民謡」を、まずゲスト鈴木大介の秀逸な音色のギターとともに熱唱。続いて同曲を、録音と同じカルテット(大儀見元perc、コモブチキイチロウbase、石塚まみpiano)で歌い上げるという不思議だがオツな趣向。後半部に重鎮バイラオール、アントニオ・アロンソと佐藤浩希、三枝雄輔が友情出演。
CDリリースに先立つ2023年11月、収録レパートリーはすでに「石塚隆充カルテットwith沖仁&早川純 カンタオール スペイン語歌曲を歌う」として同所で披露済み。「スペインの歌 その1〜ロルカの世界〜」「アルゼンチンの歌〜タンゴ・カンシオン、クラシック、フォルクローレから」「スペインの歌 その2〜ロドリーゴ、そしてファリャの世界〜」と贅沢な3部構成で届けられたフラメンコギター&バンドネオンがときに加勢する前年のステージのほうも、すこぶる味わい深かった。うむ、彼はやっぱり厳かできらびやかな舞台がよく似合う!(狭いタブラオでの佇まいもいいけどね…)
◆第39回浅草サンバカーニバル
コロナ禍の空白期間を経て5年ぶりにコンテスト形式のパレードが戻ってきた、晩夏の一大イベント浅草サンバカーニバル。初回の前年にあたるプレ・カーニバルから3年続けて取材し、行きがかり上3年間は某チームで連続出場。1990年代末、恩人の供養のため一度限りの特別チームに参加。何の因果か、その恩人の妻より緊急代打の推挙を受け……2010年からこのかた審査員なるものを務めておりやす。汗

なんで今さらよく知られたイベントに特段の紹介を?と思われる向きもあろうが、リオのメインパレードを規範に年を追うごと練磨を重ね、知恵を絞っては技を競い、カーニバル全体のレベルアップを図ってきた各エスコーラ(※チームを指す)。もはや初期の面影は微塵もない。今夏は久々のパレード実現とあって参加エスコーラの士気高く、意匠を凝らしたパフォーマンスはとりわけ熱かった!
で、アフターはお馴染み、浅草の一隅で酒宴と洒落込む。しばし浅草サンバから遠ざかっていた十数年を経て、2010年に表彰式後の一献をと、通称ホッピー通りに繰り出したら仰天。ぬわんとあの界隈が、1990年代後半に再生したリオ屈指の盛り場“ラパ”地区もかくや…の様相を呈しているではないかっ!
さすがに昨今では時間制限ほか音曲禁止の居酒屋も出てきたそうだが、もうあちこちパゴージのサンバで盛り上がっておる。所属集団を越えてみなさん、全身で歌い奏でながらたんと飲んでらっさる。すらばしい!(※I氏のパクリ) パゴージの原点たるフンド・ジ・キンタルの長老メンバーたちに見せてあげたい。
なぎら健壱審査員長の年、雷門通りから表彰式会場へ向かう道すがら、うっかり飲み屋に引っかかってしまったことも……今年の審査員長は小野リサさん、取材以外でのお喋りが懐かしかった。
◆優勝・舞台・映画ほか…
☆予想だにしなかった2024年最高の歓喜=横浜ベイスターズ優勝! だって今季ホームでの試合を観に行っても、近年で一番ダメダメな勝率の低さ。ところがシーズン最終盤……ホークス戦で人生初のパブリックビューイング@ホーム観戦まで体験せり。常になく長いシーズンを終え、勢い余って優勝記念Tシャツ買っちまったほど。笑
☆初公開作品の忘れ得ぬ余韻=パトリシオ・グスマン監督『私の想う国』、レオン・プルドフスキー監督『お隣さんはヒトラー』、ビクトル・エリセ監督『瞳をとじて』。

☆想像以上のステージパフォーマンス:4月、ゼー・イバーハによる色香あふれたギター&ピアノ弾き語り@渋谷www。6月、「定期能―宝生流」における山本東次郎の衰えぬ至芸@セルリアンタワー能楽堂。9月、ジョー・バターン不動のパワーとバンドの実力@晴れたら空に豆まいて。
☆感涙ものの舞台=3月、人形劇団ひとみ座『花田少年史』@川崎市アートセンター アルテリオ小劇場。一色まこと作、1995年度第19回講談社漫画賞を受賞した名コミック。コロナ禍中にナマの舞台が完遂できない苦悩を劇中に盛り込んだ、巧みな芝居。原作を単行本で読んだ時も泣いちまったが、人形劇でもついぞ落涙。

実を申せば……昨年来、コロナ明けの憂さ晴らし(?)に始めたコミックサイト探訪がどうにも止まらん。守備範囲は腐女子系(苦笑)から2010年以降に発表された少女・青年マンガまで。つらつら思うに、コミック界はコロナ禍にあっても途切れずヒトに訴えかけ続けられる媒体だったのではないか。最近のお気に入り作品は、タイムトラベラーと転生者が交錯する『雪と墨』。新年1月10日から地上波で再開、『薬屋のひとりごと』シーズン2の放映が待ち遠しい。