Top > 長嶺修のねこのめ雑記帳

シコ・メンデス、中米パナマの憂うつ

2025.06.14

なんだかバタバタとオコンコロ、イトテレ、イジャな日常を過ごしていて「ラテン世界」と触れ合う機会が目減りしており、主な情報摂取源と言えば、晩飯(というか晩酌)を摂りながら、録画しといたのを観るテレビのドキュメンタリー番組となっている。そんななかから、最近印象に残ったものを2本ほど。

「おとなのEテレタイムマシン」で1992年放送作が再放送された『緒形拳のアマゾン紀行 闘い、シコ・メンデス』前後編。ブラジルの人々の懐に入り込んでいく緒形拳の佇まいがまた、とてもよい。

スクリーンショット 2025-06-03 131806.png

https://www.nhk.jp/p/ts/NL2MGZPNVN/episode/te/21J4NJVQ1Y/

スクリーンショット 2025-06-03 132003.png

https://www.nhk.jp/p/ts/NL2MGZPNVN/episode/te/QG92RV6J6J/


もう1本は、BS世界のドキュメンタリー「中米パナマの憂うつ “船と不法移民の交差点”で何が」 。パナマ運河と移民ビジネスの“2本立て”。いずれもトランプの米国と関わる問題でもある。

スクリーンショット 2025-06-03 132151.png

https://www.nhk.jp/p/wdoc/ts/88Z7X45XZY/episode/te/G6LZ98RQXP/

posted by eLPop at 01:26 | 長嶺修のねこのめ雑記帳

2024年はこれだった!『戦争は、』、伊那市と愛川町のペルー料理店

2024.12.31

●ジョゼ・ジョルジェ・レトリア 文/アンドレ・レトリア 絵『戦争は、』(木下眞穗訳、岩波書店)

643142.jpg

https://www.iwanami.co.jp/book/b643142.html



●伊那市と愛川町のペルー料理店

20230218_120203.jpg
https://sakuranbou.com/0265-LaCasaDeJimmy.html

https://www.tripadvisor.jp/ShowUserReviews-g1021343-d26805645-r923741541-La_Casa_de_Jimmy-Ina_Nagano_Prefecture_Koshinetsu_Chubu.html


スクリーンショット 2024-12-31 120854.png
https://www.facebook.com/@TikiTiki2000/

 子どものころ愛読していた鴨川つばめの漫画『マカロニほうれん荘』に、先の万博のテーマを引き、「人類の、進歩と、ちょー、わ!!」と唱和して、「キャ〜〜〜〜〜〜ッ!!」とハジけるギャグがあり、それを気に入り子どもなりの”進歩史観”で、人類はこのまま進歩し世の中はよくなっていくんだと素朴に信じていたものだったが、翻って今、この世の中を眺めてみると、なるほど情報通信をはじめとする技術は格段の進歩を遂げてきたが、人間のこころのほうは本当に”脈々と”進歩しているのか、もしかするとかえって退化しているのでないかと疑問に感じさせられたりもする。

 ポルトガルのジョゼ・ジョルジェ・レトリアとアンドレ・レトリアによる『戦争は、』は、父ジョゼ・ジョルジェによる「戦争は、物語を語れたことがない。」などの「戦争は、」で始まる格言のような短い詩句に、息子アンドレの中間色を活かした柔らかなタッチながらも、描かれているものは薄ら寒くなるような内容の絵がついた絵本。戦争が人間の愚かな欲望や猜疑心の肥大した、巨大な虚無しか生み出さないことを改めて認識させられる。

 とはいえそれでも、日常の暮らしは続けていかなければならないわけで、そんな日常を支えるささやかな愉しみのひとつとしているのが、地方都市の南米系レストランや食材などを扱うストアをふらりと巡ること。今年は、伊那市(長野県)と愛川町(神奈川県)のペルー料理屋に行くことができた。

伊那市駅から少し歩いた街道沿いには別途ストアもあり、かつては南米系食材などを中心に扱っていたということだが、現在は近年増えたアジア系住民向けの食材などを扱っているのだと、店番担当の、流暢な日本語を操るがブラジル出身との壮年の女性は言う。南米系の食材などはお隣箕輪町の姉妹店で扱っているということで、教えてもらった場所を帰宅後、グーグルマップで確認すると、そこを目指さなければたどり着きそうにない、里山に近い辺りの倉庫のような店構えをした店舗であった。

そこでは日々、どのような物語が語られているのだろうか。

posted by eLPop at 13:01 | 長嶺修のねこのめ雑記帳

ガリシアと吟遊詩人

2024.12.12

 中世スペイン(カスティーリャ・イ・レオン)にアルフォンソ10世(1221-1284)という、学芸に秀で、賢王(エル・サビオ)と讃えられた王様がいて、彼の編纂によるガリシア=ポルトガル語で書かれた『聖母マリアのカンティーガ集』には、トルバドゥールの要素が取り入れられているものとされる。あるいは、13世紀の半ばから14世紀の初めにかけて生涯を過ごしたガリシアの吟遊詩人マルティン・コダックスは、ガリシア名産の白ワインの銘柄名にもなっているが、彼の残した「カンティーガス・デ・アミーゴ」といったナンバーは、現代の音楽家によっても演じ続けられている。

 ガリシアの古都サンティアゴ・デ・コンポステラは、ルイス・ブニュエル監督の映画『銀河』や、篠田昌巳率いるユニットの名称で認識している向きもあるかもしれないが、キリスト教徒の巡礼地として名高い。その最終目的地である大聖堂の「栄光の門」のアーチ部分には、老楽師たちの姿を写した石像が掘られている。彼らが手にしている楽器は、オルガニストルムや竪琴、中世フィドルといった古楽器である。

 2人の奏者に演奏されるオルガニストルムは、ハーディ・ガ―ディの原形態とされる楽器だが、現代のガリシアにおいて、当地の言葉でサンフォーナと呼ばれるハーディ・ガーディのような楽器が好んで用いられるのは、必ずしもこの栄光の門に刻まれたオルガニストルムに結びついたものとは言えないだろう。

 オルガニストルムはその後小型化して独奏可能となり、やがて支配階級の手を離れ、世俗的な下層の辻楽師の楽器となった。バイオリンにしてもそうである。栄光の門の中世フィドルに繋がるというよりは、ラベルと呼ばれるスペイン北部地方に分布する民衆バイオリンなどを介し、サンフォーナと同じように、多くは盲目の辻楽師が定期市などの人の集まる場所に出向いて楽器を奏で、人寄せしてはニュース情報やコプラのような短詩(8音節4行を標準型とする)を吟じ、それを刷った冊子を販売した。

複製技術が発展し、情報伝達機関としてのマスコミや音楽ビジネスが確立していくまでの20世紀前期の片田舎では、彼/彼女らのようなフグラール、ガリシア語で言うところのショグラール(xograr)の存在が唯一、職業音楽家と言える存在であった。その演奏にはフェリーニョス(トライアングル)やパンデイレータ(タンバリン)といった打楽器を伴ったり、主楽器がアコーディオンに置き換えられたりした。

 下記にリンクした動画は、そうしたバイオリン弾きのガリシアの最後の生き残りとされたフロレンシオ・ロペス・フェルナンデス(1914-1986)の姿を捉えた映像である。「オ・セゴ・ドス・ビラーレス」といった通り名でも知られたフロレンシオについては、現代のガリシア音楽シーンのマルチ弦楽器奏者パンチョ・アルバレスが1998年に発表した初リーダー作"Florencio, O Cego dos Vilares"でトリビュートを捧げている。

Florencio, cego dos Vilares "A filla de Bartolo"

https://youtu.be/HM8sYXUuNPw?si=VRlnvwCWGJBIs5xL

 上尾信也は、著書『吟遊詩人』(新紀元社、2006年)で次のように言う。「19世紀に峻別された吟遊詩人と芸人・楽師たちのイメージが混在して今日の「吟遊詩人」像ができあがっているのである。/では、19世紀の生み出した吟遊詩人の原型とされるのは、本当は誰であったのか。/吟遊詩人とは「トルバドゥール、トルヴェール、ミンネジンガー」と呼ばれる「宮廷歌人」とするのが適切なのか、それとも「ジョングルール、ミンストレル」などと呼ばれた「楽師・芸人」が本当の姿なのか。しかし、そこには簡単な分類では捉えられない彼らの姿が見え隠れする。」

 そのような意味では、現代のガリシアの伝統=民衆音楽には、トロバドールやショグラールの系譜が混在し、19世紀の民族主義の勃興によりナショナル・アイデンティティ化したケルトの伝統、同じケルト圏としてのフランスのブルターニュにおける流行に習い20世紀後半に定着したというアルパ(ケルティック・ハープ)のような所謂「創られた伝統」や、ジャズ、ロック、ポップス、テクノといった現代ポピュラー音楽などが渾然となっていると言える。

 経済的にはあまり恵まれてこなかったガリシアからは、アルゼンチンやキューバなど、ラテンアメリカに多くの移民が送り出されており、ガリシアの吟遊詩人的な遺産も、なんらかの形で伝播しているものと予想される。

ガリシアとポルトガルの言語=文化的繋がりからすれば、ブラジル北東部の音楽で用いられる弦楽器のハベッカは、スペイン北部地域のラベルのような楽器と関係があるように思われるし、ブラジルのコルデル文学の世界は、フロレンシオらの生業と地続きのようにも思うのだが、そうしたルーツやルートを、今は日本の戦後占領期の地域社会史に取り組んでいる最中のため、詳しく検証している余裕がない。生半可な情報提供に終始していることは承知の上で、他力本願でまことに恐縮だが、どなたか詳しい方にご教示いただければ幸いである。


→【本企画目次へ戻る】
http://elpop.jp/article/191144018.html

posted by eLPop at 13:04 | 長嶺修のねこのめ雑記帳

The Cuban Jazz Syndicate

2024.02.27

自己のユニット”Michael Olivera Group"やアルフレド・ロドリゲス(p)のドラマーとして活躍もしている(Alfredo Rodriguez "Sound of Space"(2012), "The Little Dream"(2018))、キューバ出身のドラマー、ミカエル(ミチャエル)・オリベーラのスペインで活躍するキューバ人ミュージシャンのユニット「キューバン・ジャズ・シンジケート」での2024年の新作。前作は2021年ゆえ、3年ぶりの録音となる。

メンバーは
Pepe Rivero / piano
Michael Olivera / drum and vocals
Carlos Sarduy / Trumpet
Sebastian Laverde / vibes
Inoidel Gonzales / tenor sax
Yarel Hernandez / electric bass
Fernando Brox / flute
Yuvisney Aguilar / percussion and vocal

“ Po Po Pi Pi “ The Cuban Jazz Syndicate NEW 2024

https://youtu.be/9ab4DXjyFrQ?si=8TbfZa51wz4oylQC


“ Güiro “ The Cuban Jazz Syndicate NEW 2024

https://youtu.be/4uPx4BXWiqc?si=ug3C5YhFcKR94H85


⇒目次に戻る
posted by eLPop at 22:37 | 長嶺修のねこのめ雑記帳

eLPop今年のお気に入り!Las Migas - La desgana con Sheila Quero y Esther González

2023.12.30

◆長嶺修(猫の目雑記帳担当)『Las Migas - La desgana con Sheila Quero y Esther González』

https://youtu.be/CwAFowkNZFI?si=ceAPcTbkqm3UjiND

<編集部注>
Las Migasは2004年に女性4人で結成されたスペイン/バルセロナのグループ。フラメンコをポップな現代性を以て作品を発表している。シルビア・ペレス・クルスが2011年までヴォーカルとして在席。


⇒特集「eLPop今年のお気に入り!2023年」メインに戻る

posted by eLPop at 19:35 | 長嶺修のねこのめ雑記帳