Top > 宮田信のダンス・トゥ・マイ・マンボ

THEE HEART TONES “SABOR A MI”

2024.02.27

イースト・ロサンゼルスを中心とした南カリフォルニアのチカーノ音楽シーンを俯瞰すると、今もっとも勢いが強いのは相変わらず新世代によるチカーノ・ソウル・シーン。他にもメキシコ北部から伝わったダンス・シーンも含めてのクンビア、また、バンダにヌエボ・コリードなどスペイン語音楽シーンも移民社会の成熟と共に勢いは増すばかりだ。

スペイン語系音楽の趨勢は巨大資本に牛耳られたラジオがその媒介となっているが、越境してきた労働者たちの職場には必ずラジオが大音量で鳴っているというUSラティーノたちのユニークな環境がその要因だ。さらにバリオには40年代から続くアメリカ生まれのメキシコ系音楽の伝統も続いている。異なる音楽体系が並列する複雑な状況はバリオのなかで生活してみないと実体験として迫ってこないので厄介だが、バリオ音楽の魅力はそこにある。

 さて今回紹介するのは、まだティーンだというロサンゼルス・サウスベイ出身の6人組、ジ・ハート・トーンズ。定冠詞をTHEではなく例のようにTHEEにしたところも心憎い演出だ。

NY発で多くのカリフォルニアのチカーノ・アクトをリリースするビッグ・クラウン・レコードと契約を果たしたセカンド・シングルがリリースされたが、なんどB面にはボレロの名曲「サボール・ア・ミ」が収録されている。

イースト・ロサンゼルスでは、イーディ・ゴーメ&ロス・パンチョスの名演ももちろん有名だが、やはり何と言っても71年にラテン・ロックの雄、エル・チカーノが発表したヴァージョンがバリオの隅々にまで浸透している。一時はイースト・ロサンゼルスのアンセムなんて言われていたこともある。ジ・ハート・トーンズのカヴァーも、明らかにエル・チカーノを意識したもの。伝統がそんなカタチで継承されていくことに日本のチカーノ音楽ファンも感動。私の周りで今、ちょっとした話題になっている。

Thee Heart Tones - Sabor A Mi

https://youtu.be/YDdeQZj4z5w?si=hcjTP3XqhJ175nwi

El Chicano - Sabor A Mi

https://youtu.be/a8Bh85LdgCE?si=vQb89sI61kN37eLl

Eydie Gorme ・ Los Panchos - Sabor A Mi

https://youtu.be/Gb1FrnjlXoo?si=aiKa3kBW8nKWzkfX

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eLPop eLPop今年のお気に入り『JOSE JOSE "CONTIGO EN LA DISTANCIA"』

2023.12.30

◆宮田信(DANCE TO MY MAMBO)『JOSE JOSE "CONTIGO EN LA DISTANCIA"』

https://youtu.be/xUTEQ9IiDP8?si=d2w_YwV0Hkf8CjMb

<編集部注>
ホセ・ホセ(Jose Jose):本名ホセ・ロムロ・ソーサ・オルティス(José Rómulo Sosa Ortiz、(1948年-2019年)メキシコの歌手。

エル・プリンシペ・デ・ラ・カンシオン(歌の王子/貴公子)としても知られ、ラテン世界史では知らぬもののいない人気。多くのラテン・ポップス・アーティストに影響を与えた。

1983年に発表したアルバム『Secretos』は400万枚以上のセールスを記録。数多くの世界的ヒットを放ち、グラミー賞にも何度もノミネートされている。アーティストからのトリビュート作品も多い。


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LALOM=ロサンゼルス・リーグ・オブ・ミュージシャン

2023.10.25

ここ4〜5年、ソウル系グループの躍進がひとつのムーヴメントだったチカーノ・シー
ン。ダプトーンやビッグ・クラウンといったNYのレーベルがピックアップしたことで
その勢いはアメリカを越えて広く知られるようになった。しかし、それは単純にバリ
オの外に伝わっていなかっただけのこと。どの時代にもソウルを奏でる上手いバンド
は沢山存在してきた。同じようにアフロ・キューバンやカリブ海からのトロピカル・
サウンドを奏でるバンドもバリオの伝統としてそのアイデアと実力を競ってきた。若
い世代の間でクンビア・ブームの復興もあり、現代進行形の新しいバンドにも新たな
注目が集まりそうだ。

LALOM1.jpg

特にこのバンドが起爆剤になるかもしれない。チカーノたちが愛してきたヴィンテー
ジ・ソウル、ペルーが産んだチチャ、メキシコ発のムシカ・ロマンティカ・・・バリ
オのなかで密かに溢れていた多種多彩な音楽を吸収して、お洒落でヴィンテージな
モードで小粋なラテン・ナンバーを奏でる話題のグループ、LALOM=ロサンゼルス・
リーグ・オブ・ミュージシャン
。基本はビザ―ル・ギターから妖しいサウンドを編み
出すギタリスト、ドラム、アップライト・ベースの3人組。そこにエル・ハル・クロ
イのドラム奏者、ドミニク・ロドリゲスがボンゴで参加、また曲によってはスチー
ル・ギターも加わっている。

LALOM2.jpg

動画を観て欲しい。スタイリッシュな男たちがチチャをひたすらクールに奏でる。先
日発表された2枚のシングル盤はあっという間にソールドアウト。ソウル系だけでは
ないバリオ音楽の新しい動きの核となりそうな気配だ。

LA LOM Performs "Maravilla"

https://youtu.be/VJMFDoHYIws?si=GmwxmTzjpZdzDX2p

LA LOM Performs "Juana La Cubana"

https://youtu.be/br-Ij3WMvsg?si=fgO3qtpnASDKqo2g



ケッツァル『チカーナ・スカイズ』

2023.08.03

既に24年も経つのかと感慨に耽けた。今やラテン・グラミー賞を獲得し、レーベルは
あのスミソニアン。歌手のマーサは大学教授の職も得て、イースト・ロサンゼルスの
知的演奏家集団として確固たるポジションを獲得している。ちょうど会社を退職して
暗澹たる気持ちで日々過ごしていた当時の私に強烈な光を届けたのがこの動画だっ
た。

既存のラテン・ロックから離脱してソン・ハローチョの楽器や要素を摂り入れた
有機的ともいえる優しい「音」の感触。新しい時代の鋭く若い息吹を感じ、その感動
と共に会社を立ち上げてしまったのだ。2度の来日公演を実現させるなど随分と張り
切って宣伝にも力を尽くした。が、残念ながらレーベル移籍などでビジネスの関係は
途切れてしまった。

緩やかな友人関係は続いていた。 リーダーのケッツァルから突然日本に遊びに行く
からと連絡が入ったのは6月だった。18歳になった息子も連れてくるという。3人の
演奏も可能ということでかつてのファンとの親交の宴のような演奏会を急遽、東京で
開くことに。また高知県神山に移住した共通の友人で映像作家のアキラ・ボックを訪
ねて四国まで足を運ぶという。現地でも演奏をするかもということで、私も700kmを
一気にクルマで走って現地へ向かった。山のなかに建つビール工房の敷地で開かれた
演奏会には悪天にも関わらず沢山の子供たちも含めて100名以上の住人が集まった。
剣山も近い深い山谷に響く彼らの力強い演奏。マーサのサパテアードとケッツァルの
ハラーナはまさにダウン・トゥ・アース。子供たちが自由に踊り出した。

この動画を久しぶりに観た。音楽の核心は全くぶれていない。グループを結成して今
年で30年だそうだ。8月19日にはロサンゼルスで記念ライヴも開催されるようだ。昨
今の余りの円安では気軽に行けないが、東京から一緒に喜びたいと思う。

QUETZAL: CHICANA SKIES

https://youtu.be/o4phwEm55L4

ジ・マーローズ

2023.05.26

 オルタナ・ミュージック、ソウル、ジャズ、トロピカルなどの既存ジャンルを巧みにミックスした新世代によるネオ・ヴィンテージ・サウンドの勢いはアメリカのインディー・シーンのなかで確かな存在感を示しているが、昨今はヨーロッパ、日本でも耳の肥えた音楽ファンやアーティストを魅了している。コールマインペンローズ、そしてビッグ・クラウンといったレーベルがシーンを牽引する人気レーベルだ。昨年秋に来日して多くのファンをもつボリビア系フィンランド人ボビー・オローサを輩出したビッグ・クラウンから再び大注目のアクトが登場して愛好家の間で大きな話題になっている。

 バンド名はジ・マーローズ。褐色の肌にスタイリッシュなファッションに身を包む女性1名男性2名によるトリオ。甘いメロディ・フックをもつサウンドはカリフォルニアからの若いチカーノ・グループかと思いきや、なんと出身はインドネシア第二の都市、スラバヤ。バンド名の定冠詞をTHEではなくTHEEとしたのは、大好きなチカーノ・グループ、ジ・ミッドナイターズからとったというのだから二度驚いてしまった。

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「ソウル、ファンク、ヒップホップ、ロックステディ、ラヴァーズ・ロック、ジャズ、ポップス、ダブなど、さまざまなタイプの音楽を聴いています。ジ・マーローズの音楽に最も影響を与えたのは、グラディス・ナイト、ブラッドストーン、スモーキー・ロビンソンからエリカ・バドゥ、シャーデー、そしてクレオ・ソルのような新しいアーティストまで、新旧のR&Bです。ラルフィ・パガン、クリシェ、アストラッド・ジルベルト、山下達郎など、様々な時代や文化からのポップスからもたくさん影響を受けています。」(筆者によるインタビュー)


 英語も巧みに操り、インターネットで溢れる情報を巧みにエディットして一気に最先端の音楽を創造してしまう。その才能には驚くばかりだ。夏に第2弾のシングルを発売し、来年には待望のフルアルバムも出るそうだ。ぜひ来日ツアーも実現させたいと思っている。今、一番気になるバンドのひとつだ。

THEE MARLOES “MIDONIGHT HOTLINE”

https://youtu.be/yLmBJ-pXy8o

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