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【チェオ・フェリシアーノ追悼:熱狂のジョー・クーバ・セクステット】 2014.05.19
【セレーナの誕生日に…】2014.04.17
【セルヒオ・ジョージ・インタヴュー】
【ラロ・ロドリゲス!】 2014.03.14
【「サルサ・ジャイアンツ」NORAインタビュー】
【キックオフ・パーティの選曲リストです!】2014.02.24
【朝から泣けるぜ】2014.02.13

レジーナ・カーター インタビュー

2026.04.09

3月に、UCLA(カリフォルニア州立大学)ハーブ・アルパート音楽学校の教授・教員らと卒業生で構成される「UCLA Latin World Music Ensemble」が来日した。
ラテン音楽研究の第一人者でありグラミー賞審査員も歴任したスティーブン・ロサ教授がディレクターをつとめ、ジャズ、ラテン・ジャズ、チカーノ音楽、サルサなどを聞かせるグループで、3月19日の南青山MANDALAを皮切りに、赤坂B-flat、晴れたら空に豆まいて、明治大学アカデミーホール、東京藝術大学第1ホールと、連日パフォーマンスを行った。
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資料によると、ベーシックなメンバーは以下のとおり。
・Steven Loza (trumpet / vocals):UCLA教授。ラテン音楽研究の第一人者、グラミー賞審査員も歴任。
・Regina Carter (violin / vocals):ジャズ・ヴァイオリン界の至宝、グラミー賞ノミネート多数。
・Clayton Cameron (drums):トニー・ベネットやサミー・デイヴィスJr.を支えたドラム界のレジェンド。
・Abhiman Kaushal (tabla):世界的なタブラ(打楽器)奏者、2017年グラミー賞受賞アルバムに主要奏者として参加。
・Arturo O’Farrill (piano) :グラミー賞を8回受賞。アフロ・キューバン・ジャズを現代に継承するピアニストとしてラテン・ジャズ界に君臨。
・Charlie Tovar (congas)
・Gregory Esparza (vocals)
・Hitomi Oba (saxophone)
・Nick DePinna (trombone, arranger)
・Salim Washington (saxophones, flute)
・Simeon Pillich (bass)
・Eriko Onojima (vocals)

来日中、何人かのメンバーにインタビューすることができた。
まずはヴァイオリンのレジーナ・カーターから・・・
レジーナといえば、何といっても、エディ・パルミエリのアルバム『Listen Here!』での鮮烈な演奏が印象的だ。
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――あなたはデトロイト生まれですよね? 2020年のアルバム『Swing State:Harmony In The Battleground』の1曲目「Welcome to Swing States from Regina Carter」の中で、「デトロイトで生まれ、カリブ系やメキシコ系など、様々な文化圏の人々に囲まれて育った」と語っていますが、そのことについてお聞かせいただけますか?
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1950年代以前から自動車産業が盛んだったから、様々な文化圏の人々がデトロイトに移住してきました。メキシコ系住民が非常に多く、カリブ系住民も最大規模でした。ギリシャ人が多く住むグリーク・タウン(Greektown)や、ポーランド系住民が多く住むハムトラムク(Hamtramck)もありました。これらの地域の子どもたちのほとんどは公立学校に通っていたので、私たちは幼い頃からお互いの文化に触れる機会が多かったんです。そして、これらの地域にはそれぞれ故郷の音楽がありました。ですから、ヨーロッパのクラシック音楽、モータウン、ジャズといったものに加えて、そういった音楽に触れることで、実に多様な文化と音楽に触れることができたんです。

1966年8月6日デトロイト生まれのレジーナ・カーター。
以下、オフィシャルサイトによると・・・

4歳からスズキ・メソードでヴァイオリンを始め、デトロイトのキャス・テクニカル高校を卒業後、ニューイングランド音楽院とミシガン州のオークランド大学でジャズの研鑽を積んだ。デトロイトの公立学校やドイツの米軍基地でヴァイオリンを教え、女性5人組ジャズ・クインテット「ストレート・アヘッド」で注目を集めた(このグループは最近、デトロイト・ジャズ・フェスティバルで結成25周年を祝った)。ほかに、ニューヨークのストリング・トリオとも6年間レコーディングやツアーを行っている。
そして、1995年、アトランティック・レコードからソロ・デビュー・アルバムをリリース。その後、ヴァーヴから『サムシング・フォー・グレース』(1997年)、『リズムズ・オブ・ザ・ハート』(1999年)、『モーター・シティ・モーメンツ』(2000年)と、立て続けに3枚のアルバムを発表。
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イタリアのジェノヴァを訪れ、1743年にジュゼッペ・グァルネリが製作した伝説のヴァイオリン、ニコロ・パガニーニの「イル・カンノーネ」を演奏した初の“非クラシック”ヴァイオリニストとして歴史に名を刻んだことが、次の作品『パガニーニ:アフター・ア・ドリーム』(2003年)のインスピレーションとなった。その後も、『アイル・ビー・シーイング・ユー:ア・センチメンタル・ジャーニー』(2006年)は、『リバース・スレッド』(2010年)と『サザン・コンフォート』(2014年)、『エラ:アクセントエイト・ザ・ポジティブ』(2017年)とリリースを続けている。

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――子供の頃、初めて聴いたのはどんな音楽でしたか?

おそらく・・・レコード、それも、ヨーロッパのクラシック音楽だったと思います。そう、4歳でヴァイオリンを始めたので。でも、兄たちがいて、彼らはモータウンやビートルズを聴いてましたし、両親はジャズのレコードも持っていて、エラ・フィッツジェラルドやナット・キング・コール、それから映画のサウンドトラックも聴いてました。だから、あらゆるジャンルの音楽を少しずつ聴いていたんです。

――子供のころ、どんなトレーニングを受けていたんですか? クラシック音楽の学校に通って、その後ジャズやラテン音楽を学んだと聞きましたが。

ヨーロッパのクラシック音楽を勉強する学校に通って、高校でジャズを少し始めました。でも、ジャズを本格的に学んだのはデトロイトでした。デトロイトはジャズ・シーンが盛んで、そこでミュージシャンたちから教わったんです。学校ではなく、ミュージシャンたちから直接学んだんです。ライヴをしながら、そういう風に学んでいったんです。今でもストリートで学び続けています。

――あなた自身は、ラテン系の血を引いているんですか?

いいえ。ただ、音楽が大好きなんです。そうなんですよ。

――初めてあなたの演奏を聴いたのは、エディ・パルミエリのアルバム『Listen Here!』で、だったと思います。

ああ、そうなのね。

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――2005年ごろだったかな? 21年前ですね。

ほかに、チュチョ・バルデスとも演奏したりレコーディングしたりしました。そして、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのオマラ・ポルトゥオンドとも。あと、(90年代に)ニューヨークで数年間、ロス・ホベネス・デル・バリオというチャランガ・バンドでも演奏していましたよ。





――アルトゥーロ(・オファリル)ともやってますよね。どういう経緯でラテン音楽に関わるようになったんですか? 例えば、エディ・パルミエリとは・・・?

デトロイトに住んでたころ、オルガン奏者とバンドを組んでいました。彼はラテン音楽が大好きで、よく私にレコードを聴かせてくれたんです。私が初めて聴いた、ラテン音楽を演奏するヴァイオリニストは、アルフレド・デ・ラ・フェだったと思います。彼の音楽が大好きになりました。あの音楽を聴くと、踊りたくなるんです。一番好きな音楽だと思います。そして、ニューヨークに引っ越してからは、仕事を得るためにどんな音楽でも演奏していました。エディ・パルミエリとはどうやって知り合ったのか、自分でもよく覚えていません。たぶんフェスティバルか何かだったと思いますが、彼が私をレコーディングに誘ってくれたんです。そうですね・・・ニューヨークやツアー先でたくさんのミュージシャンと出会い、一緒にレコーディングしたり、演奏したりする機会に恵まれた、というわけです。

――クラシック音楽やジャズも演奏しますよね?

以前はヨーロッパのクラシック音楽を演奏してたし、ジャズも演奏してました。

――今回は、ラテン・ジャズ・バンドですよね。さまざまなジャンルを演奏するとき、脳の別の部分を使っているんですか?

(爆笑)ちゃんと機能しているのかどうか、よく分からない(笑)。ただ、なんとなく、そういう感じ。まるでカメレオンみたいに、簡単に周りに溶け込めるような気がします。
実は今回、2年半ぶりにヴァイオリンを弾いてるんですよ。脊椎の手術を受けて、手にも問題があったので、ずっと弾いてませんでした。まだ手が弱っているんです。人前で演奏するのは2年ぐらいぶりなんです。


――そうなんですか・・・。脳の話は置いといて(笑)、やっぱり、曲ごとに必要な演奏テクニックは違うわけですよね?

ええ。でも、あまり意識していないんです、本当に。確かに違いはあります。まるで違う言語を話すようなものですから、口の形も変えなければなりません。でも、意識的にやっているわけじゃないんです。ただ音を聴いて、どうすればいいかを考えるだけだと思います。

――昨日、(「晴れたら空に豆まいて」でのライヴで)たぶん「Low Rider」でだったと思いますが、最後にソロがまわってきて、ワルツみたいなリズムで、変わったフレーズを弾いてましたよね・・・覚えてますか?

(笑)さあ、どうでしょう・・・ただ、その場で起こっていることにインスピレーションを受けているだけなんですよ。

――つまり、他の音を聞いてそれに反応している、と?

はい。そうすると、色々なイメージが浮かんでくるんです・・・すみません、具体的な方法はないんです(笑)。

――変な質問ばかりですみません。

いえいえ、ただ、今まで考えたこともなかったことなので(笑)。だから、そのプロセスは面白いんです。あまり深く考えないようにしています。

――いまのところの最新アルバム『Swing State』について教えてください。とても素晴らしいアルバムだと思います。

ありがとうございます。あのアルバムは、ちょうど(2020年の)大統領選挙の投票直前に製作しました。アメリカでは、激戦州(Swing State)が、誰が当選するかを左右するんです。多くの人が失望していて、投票に行きたがらない状況だったので、投票してほしいと思いました。投票は私たちにとってとても大切なことなんです。それで、激戦州それぞれの、地元の曲を選んでレコーディングしました。

――参加しているのは、ジョン・バティステ・・・

ハーヴィー・メイソン・ジュニア、ジョン・デヴァーサ・・・(ほかに、アレクシス・クアドラドとカビール・セーガル)

――彼らはレギュラー・メンバーだったんですか?

いえ違います。あれは一回だけの特別なプロジェクトで、アルトゥーロの『ファンダンゴ・アット・ザ・ウォール(Fandango at the Wall)』をプロデュースしたカビール・セーガル(Kabir Sehgal)が、このアルバムをプロデュースしてくれたんです。

――いまはニュージャージーにお住まいですよね?

そうです。でも、UCLAで教えているので、学期中はロサンゼルスに住んでいて、学期が終わると自宅に帰ります。夫はニュージャージーにいて、ドラマーなので、そこで教えたり仕事をしたりしています。その自宅に帰るんです。

――私自身は、ラテン音楽を聴くのが大好きで、もう40〜50年くらいになります。ファニア・レコードはじめ、サルサ、メレンゲ、そういう音楽が大好きなんです。今の音楽シーンはどんどん変化していると思いますが、どうでしょうか?

ええ、業界全体が変化してますよね。良い方向に変化している部分もあれば、そうでない部分もあると思います。レコーディングに関しては、今では、誰でも録音できます。大手レーベルやメジャーレーベルと契約する必要はありません。そして、ライヴや仕事のギャラは、多くの場合、上がっています。他のミュージシャンのギャラは上がっていますし、物価も上がっていますが、ジャズ・ミュージシャンのギャラは上がってません。いまだにとても低いままです。若い人たちは当然、演奏したいと思っていて、仕事があれば引き受けます。プロのミュージシャンもそういう仕事を引き受けます。だから、ギャラを上げようとしない若い人たちにとっては、状況がさらに難しくなるんです。それに、クラブが閉店したり、そもそも数が少なくなったりして、演奏できる場所がほとんどないんです。それに、今の世界情勢を考えると、ツアーも難しいですよね。

――そして、今まさに若いアーティストたちが台頭してきています。例えば、バッド・バニー。世界中で大旋風を巻き起こしていると思いますが、彼についてどう思いますか? 

実は最近まで彼のことをよく知らなかったんです。でも、(スーパーボウルの)ハーフタイムショーを見て、すごく感動しました。本当に重要なことだと思います。まさに民衆の音楽(music of the people)です。彼は労働者、つまり世界を動かしている人々について、重要なメッセージを発信しています。だから、とても大切なことだと思います。
ほかにも、素晴らしい若手ミュージシャンがたくさん出てきていますね。サックス奏者のラケシア・ベンジャミン(Lakecia Benjamin)、カミーユ・サーマン(Camille Thurman)、それに私が知らない若い世代もいますが、彼らはまだハングリー精神にあふれ、この音楽を演奏したいと強く願っています。


――最後に・・・ジャズやラテン音楽でヴァイオリンを演奏する上で、一番大切なことは何ですか?

私はただ、ありのままの自分でいたいんです。自分のエゴを静めて、邪魔をしないように。何かを演奏しようとするのではなく、ただ音楽が自分を通して流れてくるようにしたいんです。だから、音楽の邪魔をしないようにしなければならないのですが、それが時々難しいんです。そのマインドがね・・・

――ありがとうございました。

(3月21日:明治大学アカデミーホールにて)

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posted by eLPop at 22:23 | 岡本郁生のラテン横丁

『2025年はこれだった:カロルG』(岡本郁生)

2026.01.01

今年、2025年のラテン界で最大の出来事といえばやはり何といってもバッド・バニーの大活躍!
それに続く注目の的は、コロンビアの女性シンガー、カロルGだったのではないでしょうか。

1991年コロンビアのメデジン生まれ、2017年にはバッド・バニーとのコラボ「Ahora Me Llama(アオラ・メ・ジャマ)」が話題となり、その後、さまざまなシンガーたちとのコラボによるヒットを連発。2022年の4作目『Mañana Será Bonito(マニャナ・セラ・ボニート)』から、コロンビアの大先輩、シャキーラとの共演「TQG」が全米シングル・チャート7位。アルバム自体も、女性アーティストによるスペイン語アルバムとして史上初めて全米アルバム・チャート1位を獲得し、第25回ラテン・グラミー、第66回グラミー賞ともに、アーバン・ミュージック・アルバム賞を受賞しました。

Karol G, Bad Bunny - Ahora Me Llama

https://www.youtube.com/watch?v=4NNRy_Wz16k

KAROL G, Shakira - TQG

https://www.youtube.com/watch?v=jZGpkLElSu8

そんな彼女のキーワードともいえるのが「Bichota(ビチョタ)」という言葉で、同名のヒットもありました。この「ビチョタ」は造語で、もともとプエルトリコで使われる「bichote(ビチョテ)」という言葉から来たものだそう。麻薬の売人、ギャングのボスなどを意味しますが、カロルGはこれを拡大解釈して、女性に焦点を当てた肯定的な言葉に変容させ、「強い女性」「女性らしい力」「女性的なエネルギー」を意味する言葉として使っています。

彼女自身の言葉によれば、「セクシーで、軽薄で、大胆で、強く、力強く感じられる瞬間であり、ある意味で個人的なモチベーションと自信につながる。私たちは皆、心の中ではスーパー・ビチョタなの。世界中の人々にも見てもらえるように信じて努力することが大切」ということで、彼女自身のニックネームとなり、さらに、自己のレーベルの名前にもなっています。

KAROL G - BICHOTA

https://www.youtube.com/watch?v=QaXhVryxVBk

確かにミュージック・ヴィデオを見ても、パっと見は、いかにもなセクシー系(?)映像という印象ですが、よく見ると、“女性らしさ”や“強さ”を強調した、いまの時代ならではの映像であることが感じられます。しかも、女性だけが登場する映像が非常に多いのも特徴。そのへんが、同性の共感・支持を得ているポイントではないか?という気がします。

KAROL G - LATINA FOREVA

https://www.youtube.com/watch?v=BgMU9Vuj17Y


KAROL G - Si Antes Te Hubiera Conocido

https://www.youtube.com/watch?v=MgsdDfdGdHc

KAROL G - Si Antes Te Hubiera Conocido

https://www.youtube.com/watch?v=QCZZwZQ4qNs

KAROL G - Provenza

https://www.youtube.com/watch?v=ca48oMV59LU

そして今年6月にリリースした5枚目となる『Tropicoqueta(トロピコケタ)』。
彼女自身が「私を表すものすべて」と表現するとおり、このアルバムは彼女自身がこれまでに聞いて、触れて、吸収してきたすべてのものが収められたもの。一般的にはレゲトン/ラテン・トラップのアーティストとしてとらえられますが、特に最近の楽曲ではその枠にとらわれない幅広いレパートリーを聞かせているとおり、特定のジャンルには収まりきらない広がりを持っていて、彼女ならではの、あらゆる雑多な楽曲たちが詰め込まれています。

「私のルーツ、幼い頃から聴いていた曲、音楽に夢中になったサウンドに立ち返った」で、「私と同じように、特定のジャンルだけでなく、私たちの音楽を聴いて育ったラテン系の人たち全員に向けたアルバムだと感じている。結局のところ、すべてのジャンルが好きじゃない人も、少なくとも自分と繋がれるジャンルがひとつは見つかるはず」と彼女は語っています。

12月はじめには、各地のテレビ出演などを集めたスペシャル映像作品「La PremiEre」も配信。これ、最高です

KAROL G - La PremiEre

https://www.youtube.com/watch?v=LenBa0yOAus

カロルGは腕に、自分の顔とリアーナ、そしてセレーナの顔のタトゥーを入れているそうですが、そのセレーナのドキュメンタリー『セレーナ・イ・ロス・ディノス:永遠なる家族のレガシー』がNetflixで公開されています。

1995年3月31日、24歳になる直前、そして英語マーケットへの進出を目前にして凶弾に倒れてしまった「テハーノ音楽の女王」・・・

1997年に製作された伝記映画にジェニファー・ロペスが主演し、これをきっかけにスターの座へ駆け上っていったことは有名ですが、その後もドラマ化され、主演がぜんぜん似てない!などと酷評されたこともありました。
しかし、今回はドキュメンタリーで、両親はじめ兄のAB、姉のスセッテ、夫のクリス、さらに主要なバンド・メンバーたちの証言と記録映像だけで構成され、セレーナの生い立ちから、どのようにアーティストとして、人間として自立していったかがよくわかる内容となっています。思わずグッとくるシーンが満載。
セレーナの歌とその存在によって、その後の若い世代が自分たちのアイデンティティを自覚し、メキシコの(さらにラテンの)文化を継承していること、彼女がいかにラテン・コミュニティに貢献してきたかがひしひしと感じられる作品です。そんな世代の中から、カロルGのようなアーティストが登場し、彼女がまたその下の世代へと文化を継承し・・・と、歴史は続いていくわけですね。

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https://www.netflix.com/watch/82028788?trackId=14170286&tctx=2%2C0%2C1b92cdb9-626f-4a43-8f0c-d751e74cc6c9-291256189%2CNES_E6522C8E8AAF4AECA7EC95F403D972-994911DC4F528C-D88909F8BE_p_1767052368901%2CNES_E6522C8E8AAF4AECA7EC95F403D972_p_1767052368901%2C%2C%2C%2C82028788%2CVideo%3A82028788%2CminiDpPlayButton

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posted by eLPop at 12:45 | 岡本郁生のラテン横丁

シーラ・E & グロリア・エステファン

2025.06.14

 昨年リリースされたシーラ・Eのアルバム『Bailar(バイラル)』のリード・トラック「ベンバ・コロラ」。セリア・クルスの代表曲として知られたこの曲に参加していたのは、シーラ・E、ミミ・スッカル、そして、グロリア・エステファンの3人だった。冒頭、ルンバに乗ってまず登場するのはグロリア。なんだかちょっと久しぶり…な感じのグロリアだが、歌いだした途端、相変わらずパンチ力抜群の歌いっぷり。3人の“女王”たちがご機嫌な共演を繰り広げた



https://www.youtube.com/watch?v=VkOu6mE07-8

考えてみれば、シーラとグロリアは同じ1957年生まれ。その後、TVの「ジミー・キンメル・ライブ」でも息の合った演奏を見せてくれる。



https://www.youtube.com/watch?v=eB4So8wUao8

 それから1年…5月29日に発表されたのが、新作の『Raíces(ライセス)』である。

 新録としては、かつてのヒット曲をブラジルのリズムで再録した『Brazil305』以来5年ぶり、全編スペイン語のアルバムとしては『90 Millas』(2007年)以来、18年ぶりとなる。“ラテン・ポップの女王が復活”!と海外では大きな話題を集めている。

 アルバム・タイトルは「ルーツ」の意味で、1曲目に収録されたタイトル曲はゆったりとしたボレロ。YouTubeに公開されているMVを見ると、過去の写真、映像などをフィーチャーしたながら、エステファン・ファミリーの歩みをたどるような内容だ。後半では「良い収穫のためには種の撒き方を知らねばならない」というコーラスが繰り返されている。



https://www.youtube.com/watch?v=a8m4fpLE2Hc

そして、リリースに先立つ5月26日に開催された今年の「アメリカン・ミュージック・アウォード」授賞式にも登場、「リズム・イズ・ゴナ・ゲット・ユー」、新譜からの「ラ・ベシナ」そして今年がリリース40周年となる「コンガ」のメドレーを披露した。さすがに若干の老いは隠せないものの、やはりスターの風格だ。(途中、客席最前列にいるJLOとエミリオ・エステファンが一緒に踊るのもなかなか良い)



https://www.youtube.com/watch?v=6O2efiyZc2c

 ここでも歌っていたサルサ・ナンバー「ラ・ベシナ(ケ・ノ・セ・ナ)」は、なんでも知りたがる隣人女性のことを歌ったもので、グロリアの一家がキューバからマイアミへ亡命した後に住んだアパートでの体験を歌にしたものだそう。



https://www.youtube.com/watch?v=-mVCdnME6r4

 サルサとボレロを織り交ぜた選曲で、楽曲はすべて、今年が結婚47年目という夫でプロデューサーのエミリオ・エステファンによるもの。

 この数年、娘でシンガー/パーカッション奏者のエミリー関連でしか出てくることのなかったグロリア・エステファンが、昨年の「ベンバ・コロラ」をきっかけに(?)再び動き出した。これからの動きに期待したい。

 そして、シーラ・Eといえば、昨年の『Bailar』に新曲を追加した『Bailar(Deluxe)』にも注目だ。
 新たに加わったのは、インディアを迎えた「Mi Rumba y Tambor」と、かつての大ヒット「グラマラス・ライフ」のラテン・ヴァージョン「The Glamorous Life (Latin)」である。



https://www.youtube.com/watch?v=o9YHZQl8XyY




https://www.youtube.com/watch?v=nYCNaVRisEA

こちらは昨年4月、マイアミでのライヴの映像でトニー・スッカルが共演!
https://www.youtube.com/watch?v=CbZ8nQSFzgs

 シーラ・Eでいえばさらに! 『Bailar』をインストで再演したシーラ・E&フレンズ名義の『Bailar Instrumentals』も配信されており、これもたまらない! おそらく、『Bailar』のトラックをもとに、歌の代わりにさまざまなソロイストを迎えてインストゥルメンタルにしたもので、単なるカラオケとは違う。チャーリー・セプルベダ、クリス・ボッティ、ピート・エスコベド、ネストル・サンチェスらが参加しているが、なんといっても聞き物は、マーカス・ミラーとカーク・ウェイラムが参加した「The Way That You Do」ではないでしょうか?



https://www.youtube.com/watch?v=RDMLKyOpsf0

 いや〜〜〜! シーラ、グロリア、インディア、ミミ…と熟女パワー(失礼!)炸裂で、ワクワクが止まりません!


posted by eLPop at 01:34 | 岡本郁生のラテン横丁

2024年はこれだ!クマイルス、マーク・アンソニー

2024.12.31

クマイルスを初めて見たのは確か昨年(2023年)の10月ぐらい。「晴れたら空に豆まいて」でBrainstoryのオープニングアクトをつとめたときだったと思うが、そこで完全にノックアウトされてしまい、すっかりハマって、それ以来、自分の担当しているFMの番組では曲をかけまくり、番組イベントにはゲストで呼んで・・・と、ミーハーちっくに(笑)追っかけてきたわけですが、いや〜、先日また晴れ豆でAjate(アジャテ)との対バン・ライブで見て、その破壊力の凄さにまたまたブッ飛んじゃいました!

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演奏が格段にパワーアップしてるのに加えて、女声ボーカルの和泉美紀さんがメチャクチャ上手くなってるのと、なんつってもリーダーのサムット野辺さんの、現地の人(というか何かが?)が憑依したかのような存在感。

歌詞はまったくわからないんですが、モロに迫ってくるその迫力と情感にヤラレました。

YouTubeに公開されている「日本人の婿」


https://www.youtube.com/watch?v=vQSA02hy678


「恋の行方はあなた次第」も、最高!

https://www.youtube.com/watch?v=JDsG5TG33i8

この何ともいえない雰囲気は、まさに日本の60年代のGS(グループサウンズ)感覚でもあり、でもやっぱり21世紀の空気感が漂う、レトロ・フューチャー感(?)が満載。どこにいてもちゃんと現地とつながれるっていう意味で、実にいまっぽいバンドの在り方ともいえるかもしれない。


いやいや・・・クマイルスにすっかりアテられてしまったが、やはりラテンも押しておかなくては!
ということで、もう説明の必要もないマーク・アンソニー。15枚目(サルサとしては14枚目の)のアルバム『ムエベンセ』が素晴らしい。

Marc Anthony - Muevense

https://youtu.be/gruomptSqq0?si=ceIJ02WQKekGlL_e

考えてみれば今年でサルサ・デビュー31年。当時のプロデューサー、セルヒオ・ジョージとの関係を10年前から復活し、マーク、セルヒオ、ともにノリにノッた最高の状態にあることが確認できる快作だ。
プライベートでは(常に)いろいろとお騒がせなマークだが、やはり、根幹の音楽の部分ではまったくブレないマーク・アンソニーの世界を貫いている。最高のアーティストだと思う。


posted by eLPop at 13:01 | 岡本郁生のラテン横丁

サルサの詩人 ルベン・ブラデス

2024.12.06

“詩人”といったときサルサ界ですぐに思いうかぶのはやはり“サルサの詩人”ことルベン・ブラデスだ。

先日発表された「第25回ラテン・グラミー賞」では、ウィリー・コロンとの大ヒット・アルバム『シエンブラ』の45周年を記念してリリースされたライヴ・アルバム『Siembra:
45° Aniversario (En Vivo en el Coliseo de Puerto Rico, 14 de Mayo
2022)』が<ベスト・サルサ・アルバム>を受賞している。

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1948年パナマに生まれた彼は、国立大学の法学部に進むが大学紛争が活発化して大学は封鎖されたためニューヨークへと向かい、人気楽団ピート・ロドリゲス楽団をバックにアルバム『フロム・パナマ・トゥ・ニューヨーク』を製作。その後、大学が再開したためパナマに戻って卒業し弁護士となって国立銀行に就職するが、夢を捨てきれず、再びニューヨークへと向かった。

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ファニア・レコードの郵便係をしながらチャンスを狙っていた75年、まずはレイ・バレット楽団で歌い、その後ウィリー・コロンのアルバム『ザ・グッド、ザ・バッド、ジ・アグリー』に自作曲「エル・カサンゲロ」を提供し、ウィリー・コロン楽団の歌手としてデビューした『メティエンド・マノ』でも4曲を提供。歌手と同時に作家としても一気に注目を集めるようになると78年、エクトル・ラボーの代表曲となった「エル・カンタンテ」を提供。同じ年、アルバム『シエンブラ』がリリースされた。

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ここでは、物質文明を批判した「プラスティコ」、これからの中南米のためにいま種を植えようと呼びかけるタイトル曲、チンピラの死を演劇的に描いた「ペドロ・ナバハ」など、大都会に生きるラティーノの生活を活写し、ラテン世界の連帯を歌い上げた曲が並んでいる。社会的な内容を歌った曲も、あくまでも一貫して庶民の目から、低い目線から歌われていることに注目したい。

名曲は数々あるが、例えば、ボビー・ロドリゲス&ラ・コンパニアに提供した「ヌメロ・6(セイス)」はどうだろう。

Bobby Rodriguez y La Compania - Numero 6

https://www.youtube.com/watch?v=_SjvRvxcfTI

「ヌメロ・6」とはニューヨークの地下鉄「6」系統のことで、マンハッタンのブルックリン・ブリッジ・シティ・ホール駅を基点に、イーストサイドのレキシントン・アヴェニューの下を通り、イースト・ハーレム(エル・バリオ)などを通ってブロンクスのぺラム・ベイ・パーク駅まで続く各駅停車の路線だ。(最近はわからないが、以前は、)乗っていると、ミッドタウンを過ぎたころから黒人やラティーノたちの数が増えてくるのが実感できたものである。

ルベンは、こんな歌詞を作っている。

♪何時間もここで地下鉄6を待っている。だけどまだ来ないんだ

Numero Seis

https://www.youtube.com/watch?v=-BdFmAU1hu8


当時の米国社会の中で、ラティーノたちが置かれた立場を象徴しているようで、やるせない気持ちになってしまうが、のちに、ジェニファー・ロペスは、この地下鉄6をタイトルにしたアルバム『オン・ザ・6』で99年、メジャー・デビューを果たし、ここから頂点へと駆け上っていったのである。



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posted by eLPop at 17:23 | 岡本郁生のラテン横丁