Top > 伊藤嘉章のカリブ熱中症

アンドレア・モティス『Loopholes』ライヴ@Blue Note Tokyo

2023.05.26

昨年日本盤で最新作『Loopholes』がリリースされ、がぜんシーンで注目されたスペインのシンガー&トランペッター、アンドレア・モティス(Andrea Motis)。

img_dc29f29ba6252bf86590b9492c238182198841.jpg

『Loopholes』はそれまでの基本オーソドックスなスタイルをから、ロイ・ハーグローヴのRHファクター、やロバート・グラスパー、グレッチェン・パーラト、エスペランサ・スポルディングなどからの影響も強く感じるサウンド。今回のライヴは前回までの来日と異なりそんな音を初めて日本で披露した。

348383997_179709361708999_6239759757675019176_n.jpg

"I had to write a song for you"からポップにスタート。シティ・ポップ的な音感覚。2曲目"Deixa't Anar"はカタランの歌詞。今回の作品のサウンドの方向性はステファン・コンダード(b)が担当。ネオソウルやファンクなど最近のUS系ジャズの音がベースだが、そこに異なる色それもカスティーリャではない色を付ける曲の一つ。カタランの持つ言葉の響きは、4曲目の"Jungla"も同様でステファンとアンドレアの個性のバランスが響く面白い感覚。ちなみにステファンはオーストリア人でNYで活動するジャズヒップホップなインスト・グループのRuff Packのメンバー。今回の録音盤には同じくUSAで活躍するBIGYUKI(kyd)、グレゴリー・ハッチンソン(ds)が参加している。

2022092921095846043.jpg


カタランに加えて色を付けるのがクリストフ・マリンジャーのマンドリンやヴァイオリン。6曲目に演奏された彼の作品"Espera"はそれら楽器が前に出ていて、US的なサウンドに収まらない色彩を生み出していた。

ライヴ後半はファンク色強い"Heat"に続いてクンビア"El Pescador"。これが会場を盛り上げた。
日本のジャズ系の記事にはUSジャズの話しかほとんど触れられていないが、この作品はコロンビアの作曲家ホセ・バロス(José Barros)の作品だ。バロスはクンビア、ポロ、クルラオ、バジェナート、バンブーコ、パシージョからタンゴ、ボレロまで多くの作品を残している名作曲家。"La piragua", "Navidad negra", "Momposina", "El gallo tuerto"などの曲はコロンビアの歌い手からソノーラ・マタンセーラ、アグスティン・ララなどラテンの様々な歌い手/グループにより歌われている。

josebarros.jpg
José Barros (1915-2007)

"El Pescador"は彼女がチリに演奏旅行に行った時、トト・ラ・モンポシーナのヴァージョンで曲を知り、いつか歌いたいと思いつつも、従来のオーセンティックなジャズでは扱いにくかったのが、このサウンドで可能になったと語っている。

Totó la Momposina - El Pescador

https://youtu.be/w-HYUtqFLmY
https://youtu.be/6_wKnB3DhKA

Andrea Motis - “El pescador”

https://youtu.be/JuXTDdiKQR8

ライヴは最後は会場と歌で一体となって楽しいステージ。アンコールは"Summertime"だった。

音楽や文化は色々な機会、背景で混淆し合って何かを生むことも多い。彼女の本当の面白さは、この混淆の深みがどう出てくるのかにあると思う。これから彼女がどう発展していくのか、彼女やメンバーの中の欧州が何か音に何かをもたらすのか今後が楽しみだ。

そうそう、アンドレアは2人目のベイビー(お父さんはメンバーでパートナーのマリンジャー)が育つ丸いお腹でバリバリ吹くわ歌うわで、そのエネルギーも含めとても楽しいステージだった。


Andrea Motis(vo,tp), Christoph Mallinger (g,vln,mandolin), Arecio Smith(key), Stephan Kondert(b), Miguel Asensio(ds)

→目次に戻る
posted by eLPop at 19:01 | 伊藤嘉章のカリブ熱中症

リッチー・オリアック

2023.04.03


3月のプエルトリコは先月お伝えした『Dia Nacional de la Salsa/サルサ国民の日』『プエルトリコ・ジャズ・フェスティバル』の他にも「Afrodescendencia月間(アフロ系ルーツの子孫月間とでも言おうか)」に合わせた『Dia Nacional de la Bomba/ボンバ国民の日』や『ラファエル・セペーダ・ボンバスクール50周年イベント』『第11回Encuentro de Tambores/タンボール・フェス』などの開催とシーンは忙しかった。



その中でも『第一回アフロ・アンティジャーナ・フェスティバル』は様々なアフロ・カリブの音楽を統合・敷衍する事を目指すようなイベントで今後注目だ。プエルトリコ、ドミニカ共和国、キューバなどからの参加もあった。

337124161_757745972467141_5864173341596007137_n.jpg

今回は第一回目で昨年53歳の若さで亡くなった地元プエルトリコのボンバとプレーナに貢献したパーカッショニスト、ティト・マトスに捧げたものだったが、今日取り上げるのはドミニカ共和国から参加のリッチー・オリアック/Riccie Oriachだ。アフロ・カリビアン・フォルクロリック、ロック、ビートミュージックなどを自然体で取り込んだその個性的な音楽で強い支持を受けている、

338717243_888589909259080_6291298879871395625_n.jpg

Riccie Oriach - Todos los Animales se Drogan

https://youtu.be/TlAsKPDydps

能天気なPVも楽しいが、アフロ・カリビアンとアフロ・ミュージックの共通性が浮き彫りになるような、アフリカとカリブをぐるっと一蹴したようなビート感が秀逸。

リッチーは1989年ドミニカ共和国のサンド・ドミンゴ生まれ。14歳の時パンクやヘビーなロックのバンドを始め、ニュージャージーに1年ほど住んだのちサント・ドミンゴに戻り、ドミニカやカリブの様々な音、リズムを取り入れた音を作ってきている。

2017年コロンビア・ツアーを行い、同年にミニ・アルバムをリリース、活動が一気に広まった。翌2018年にはプエルトリコの元Calle 13のビジタンテとのコラボをスタート。2020年リリースの『Mi Derriengue』はラテン・グラミーのコンテンポラリー/フュージョン・トロピカルにノミネートされた。

Riccie-Oriach-Latin-Grammy-2020-story.png

2021年にビジタンテのプロデュースでアルバム『Maquiné』をリリース。より汎カリブ的な色彩と今の様々な音との地に足の着いたミックスが強まっって魅力的だ。

Riccie Oriach - La Guayaba

https://youtu.be/6Zn7H97v1HM

Maquiné

https://youtu.be/L7zNKY0-6pI

表層的でない今の息吹とカリブ、ドミニカ独自のものとのバランスがとてもユニーク。これからも注目して行きたい。


「2月はこれだ」目次に戻る
http://elpop.jp/article/190261244.html
posted by eLPop at 13:17 | 伊藤嘉章のカリブ熱中症

バコソ/アフロビーツ・オブ・キューバ

2022.12.28

自分を含め5人のDJクルー(Miya, Llumi, Amii, Shochang, mofongo)でカリブとアフリカの音を楽しむイベント『カリバフリカ(Caribafrica)』というのをやっています。

そのスピンアウトでカリブやアフリカのまだ日本に紹介されていない音楽映画に字幕を付けて上映しようという『Caribafrica Film & Music Collection』という企画をDJ miyaが立てたのが今年の春。そしてまずカリブから4作品を選び、契約をし、字幕翻訳を完成させ、9月から4か月かけ上映を行ってきました。ラインナップはこんな感じです。いずれも音楽ドキュメンタリー。

1.『ストレイト・アウッタ・プエルトリコ』(2007)プエルトリコでのレゲトンの誕生を追った作品
2.『ディープ・ルーツ・ミュージック』(2007) レゲエ史を掘り下げる6部構成の作品のVol.1&2
3.『エル・メディコ/ザ・クバトン・ストーリー』(2007) キューバのレゲトン・アーティスト、エル・メディコのストーリー
4.『バコソ/アフロビーツ・オブ・キューバ』(2019) サンチアゴ・デ・キューバでの今のアフロルーツの音を描く作品

AAAaAAAA.jpg

筆者も1.『ストレイト・アウッタ・プエルトリコ』では字幕翻訳(英・西)と1, 3では解説のトークを担当し、3では監督及び出演のミュージシャンをオンラインでつないでのインタビューも行いました。キューバのミュージシャン、エル・メディコとの対話で出てきた生の声はキューバの現状をストレートに語ったものでとても印象的。

4.の『バコソ/アフロビーツ・オブ・キューバ』は12/11の上映会の後、再上映を希望して下さる声も多く、2023年の1/14(土)に銀座のLas Risasで上映会&トークを行うこととなりました。監督のイーライ&主演のDJ Jigue(ヒグェ)とのオンライン・インタビューも現在調整中。うまく行けばこの映画でも監督(米国)、主演(キューバ)と直接話が出来るかもしれません。解説トークと進行は伊藤が担当。

詳しくはこちら↓↓↓(画像をクリック)
322479932_1150645652235104_3356471353625786433_n.jpg
https://fb.me/e/39KhmwrLh

さて、この機会に少し映画の予告編的に内容をご紹介したいと思います。背景や状況の前知識が少しあった方がより楽しめるかと思いますので。

映画はサンティアゴ生まれで、ヨーロッパでDJ活動の後ハバナで長く活躍するDJ Jigueがサンティアゴのアフロ性を「発見」して音を作る過程が描かれる物語。

Jigue1.jpg
DJ Jigue(ヒグゥエ)

サンティアゴの「アフロ」性と聞くとキューバ音楽を知ってる人であればトゥンバ・フランセサやカーニバルでのコンガなどが浮かぶかもしれません。実際コンガの老舗グループ、ロス・オヨスのリーダー、ラサロ・バンデラを含めたチームと共に音を作るシーンも登場します。

Conga Los Hoyos in "La Casa del Caribe"


しかしそれに加えて1960年以降アフリカとのダイレクトな交流が始まり、特に近年2000年以降のアフリカの状況の変化に対応した「今のアフロの音」がキューバに影響していることがこの映画のポイント。

それに先立つ70年代はアンゴラ内戦があり当時のソ連と共にMPLAを支援したキューバは75年から88年の間に35万人の兵隊を送り込みました。同時にアンゴラからキューバに留学生も受け入れましたが、70年代はキューバがアンゴラに限らず途上国の留学生の受け入れを開始した時代です。

DNVYJAHX4AAciXW.jpg

特に医療関係が多く現在でもラテンアメリカ医学大学(La Escuela Latinoamericana de Medicina (ELAM) )の2022年の留学生卒業生は799人で、内コンゴ民主共和国605人、アンゴラ103人、ナンビア51人などアフリカ勢が多くを占めています。その中でアフリカからの留学生たちから、又は彼らが結成した互助団体(アフリカ留学生ユニオン)のイベントなどを通して「アフリカの音」がキューバに直接入って来るようになります。

wwww.jpg

さて、「アフリカの音」と言ってもアフリカは広大。下の地図の通りアフリカは米国、中国、欧州、インド、日本をすべて飲み込む大きさなのです。

main-qimg-c585c7e4bb979d938e553f4f3c15a74b-lq.jfif

なのでこれら各地の音が全ての時代にわたって入って来たのではありません。例えば映画の中で言及されている、ブラジルのサンバの語源となったアンゴラの「センバ」は内戦の70年代に広まり発展していった音楽ですが、この映画で強く取り上げられているのはそういう音の事ではなく、2000年代以降のアフリカの音のこと。

副題にある「アフロビーツ」は60年代後半以降のナイジェリアのフェラ・クティの「アフロビート」の事を思い浮かべるかもしれません。でもそれの事でもなく、2010年代のダンスホール、ダブ、ヒップホップ、ハウス、EDMにアフリカの要素の加わった強いビートのアフリカの音楽の総称してここでは「アフロビーツ」と呼んでいます。

映画の中では最近のアンゴラ/ポルトガルのクドゥロやガーナのアゾント、南アのパンツーラなどが挙がっていましたが、2010年代のアフリカは経済の相対的な成長・安定があり、一方で安価で高性能な音楽制作ソフト&映像ソフトやPCと周辺機器の普及、ネット回線の普及などで、アフリカの音楽が大きく動いた時期です。つまりここ10年大きく広がって来たアフリカの音の話なのです。

これらの音楽は現地で、また移民が数世代にわたって生活しているヨーロッパの旧宗主国で、またその間の行き来で様々な新しい音を生みました。ダンス・ミュージックだけでなく、例えば近年のUKジャズやフランスのポピュラー音楽などの動きとかで、昔の「ワールドミュージック」の時代と厚みの違うミックスが起こっていると言えるでしょう。

"Joro" Wizkid: ナイジェリア出身のシンガー。UK/ナイジェリアのアフロビーツのシーンのスター

https://youtu.be/FCUk7rIBBAE

"Cara Que Engana feat. Julinho KSD" Deejay Telio: アンゴラ出身。アンゴラ/ポルトガルのヒップホップのスター


この映画の音"BAKOSO"がマーク・アンソニー/ウィル・スミス/バッド・バニーの共作<エスタ・リコ>やジャネット・ジャクソンとダディ・ヤンキーの<メイド・フォー・ナウ>に取り入れられたりしているのは、メジャーでの音楽が常にそんなシーンに目配りしている証拠といえます。そういう意味では国外からダイレクトにピックアップされたBAKOSOを遅まきながらハバナのDJが「発見」するという状況は、なんともキューバの現状を表しているともいえるかもしれません。

Marc Anthony, Will Smith, Bad Bunny - Está Rico

https://youtu.be/--BHuKeveg4

「Bakoso」という言葉は、元々Oba Kosso/Obakosso/Obakosoの形の言葉で、Changóの尊称の一つ。「Kosoの王」の意味をもち、それは”The King does not hang”の意味を持つとも言われています。

f8d4d9b213afaa3573ac75afafe31c4b.jpg

ナイジェリアの劇作家デュロ・ラディポが1963年にナイジェリアのオソグボで初演した演劇『Oba Kò So』はShangoが主人公でObakosoがなぜ”The King does not hang”なのかも含め描かれていたりするのを知るとBakosoという名前で出て来た音楽がヨルバの長い歴史と繋がっている事に改めて感銘します。

Duro Ladipo's OBA KO SO

https://youtu.be/kDZunDercWA

Obakoso/Bakosoと言う名前を何故映画の中のOzkaroが選んだのかはわかりませんが、彼自身が、その音楽が、そしてサンティアゴという街がサンテリアも含めた歴史側からと、ヴィヴィッドな現在からとの両方でアフリカと強く結ばれている事を知ることが出来る作品となっています。このようなムーヴメントがハバナ主導ではなく、サンティアゴから発生している事はとても力強く、今後もその動きに注目して行きたいと思います。


タグ:バコソ
posted by eLPop at 19:02 | 伊藤嘉章のカリブ熱中症

映画『カリプソ・ローズ/Calypso Rose』

2021.04.26

先週末からスタートした映画バラカリプソ・ローズ」。カリブ海のトリニダード・トバゴで生まれた音楽「カリプソ」の第一人者である彼女のドキュメンタリー映画だが、とても面白い。楽しんで、感じて、考えさせられることが満載だ。。

176069182_184573433485137_177756658472733217_n.jpg

一つは、彼女がマチズモ(男性優位、男尊女卑)の社会やそれを反映した当時のカリプソの世界で、「自分であること」を貫き道を開いてきた軌跡に打たれる点だ。決して平坦なでない人生。里子、故郷や家族との別れ、男性社会での困難、性的暴行、病気と言った苦難の連続。しかし“何も私を止めることはできない”、“生きているうちにやりたいことはやる”と強いエネルギーを歌に託し女性カリプソニアンとしてのフロントを走って来た。その生きざまは、閉塞感のある今こそ大きく響く。

映画を楽しむもう一つの軸は彼女の人生を通して、歴史や社会、文化や宗教、差別や搾取の現実、移民やディアスポラ、女性蔑視や性的暴行と一生続く影響…と言ったものがリアルに浮かび上がる点だ。

彼女の曽祖母の故郷であるアフリカを訪ねるシーンは、奴隷に売られるという事とは、その歴史があって自分がいるという事とは、と自分だったら一体どうだろうかと心が動く。NYに住む甥っ子とのシーンも移民・ディアスポラや文化混淆とアイデンティティの事を自分に引き付けで具体的に考えさせられる。

カリブの話ではなく、自身が過去や未来へつながっていて、、彼女と同じくこの「世界」にいる事を改めてビビッドに感じさせる。

そしてもちろん音楽の素晴らしさやカリプソの魅力は映画の一番の見どころだ。
その素晴らしさは劇場で購入できるパンフレットのバイオやWada Mamboさんの解説にも詳しいが、ちょっとハイライトをさらってみよう。

ローズは1953年に第一回のカリプソ・モナークとなったマイティ・スポイラーにヤング・ブリゲード・テントのオーディションで見いだされ、ロード・キチナーとマイティ・スパロウのテントで相次いで活躍し、どんどん人気を上げてきた。つまり第二次大戦後のシーンの2大巨頭直系バリバリのカリプソニアンとしてのピカイチの実力の経歴を持っている。

R-6922847-1429584624-4643.jpeg.jpg

1967年には「FIRE IN MEH WIRE」の大ヒットで68年のロード・マーチ(カーニバル・シーズンの最人気曲)を受賞するが、なんと女性を理由に賞を取り上げられてしまう。しかしその10年後の1977年に「TEMPO」で、翌1978年には「SOCA JAM」でロード・マーチを2年連続獲得で見事に男どもをぶっ飛ばす。

20130829_5343b9.jpg

このロード・マーチ、1962年にロード・キチナーがイギリスから帰国して以来、(1974年のマイティ・シャドウの受賞以外)ずっとマイティ・スパロウかロード・キチナーが15年間ほぼ独占していたタイトル。それを2年連続ぶっ飛ばしたのがローズだった。その1978年にはその年のカリプソのトップに送られる「カリプソ・モナーク」も獲得するという快挙。そんな彼女の音の魅力とその人生を同時に楽しめる映画だ。

ステージのシーンも多く挟み込まれて楽しい。またアフリカ/ベナンでの、オルケストル・ポリ=リトゥモ・ド・コトヌーとの共演シーンとそのリズムも見逃せない。などなど音の見どころ聴き所が一杯だ。

色々書ききれないがカリプソ・ファンや英語圏カリブのファン以外にも、スペイン語圏カリブ、フレンチカリブ・ファンやブラック・ミュージック・ファンにはぜひ見て頂きたい映画だ。

緊急事態宣言でアップリンク吉祥寺はクローズというアクシデント…。しかし東京は渋谷のユーロスペース
で見られます。

4月25日(日)〜5月7日(金) 18:25-20:00 (18:35から上映)
※5月8日(土)以降も続映、上映時間未定。
との事!
急いでぜひ!


(追伸)
トバゴの青い海、トリニダードの首都ポート・オブ・スペインの中央銀行の双子ビル、高台からの(Laventille?)の景色とかトリニダードに数十回訪問してる自分には個人的泣けるシーンも続出。ローズが初めての楽器としてクアトロを弾いたというのもツボ。

クアトロはパラン(Parang/トリニダードのスペイン系クリスマス音楽)には必須の弦楽器ベネズエラン・クアトロだろう。パランを通してスペイン語系のメロディやシンコペーションもどこか幼い彼女に影響したかもしれない。

R-8609607-1465062976-7071.jpeg.jpg

上述の67年のヒット「FIRE IN MEH WIRE (FIRE IN YOUR WIRE)」の歌詞にはスペイン語が含まれている。

"Fire Fire Ven aca papito. Da me mucho agua Heat for So"

パランを持ち出すまでもなくトリニダードの南はスペイン語圏のベネズエラ。そしてカリブはスペイン語圏の島も多い。

ローズのインタビューによればこの曲はカリブの3か所で分けて作曲したのだと。
最初のパートは米領ヴァージン諸島のセント・クロイ(St. Croix)、二番目はバルバドス、そして最後のパートはトリニダード。ローズは60年代初頭からガイアナのプロモーターの招きでヴァージン諸島やその他のカリブ海ツアーも行っている。

この時代60年代は同じようにプエルトリコからの、例えばエル・グラン・コンボやトミー・オリベンシアも英語圏やオランダ語圏カリブへのツアーを行いっていた。カリブの中でも色々な音楽が行き来していたのだ。そもそもトリニダードやトバゴもスペイン、フランス、イギリスの領土として色々なものが混じって来たところだ。ローズの音楽にはそんな汎カリブ性や汎アフロ性が宿っているのは当たり前なのだろう。




posted by eLPop at 23:19 | 伊藤嘉章のカリブ熱中症

アフロ・アーバニティー配信ライブ/インタビュー

2021.03.04

2月に青山のクロスシアターで収録したアフロ・アーバニティーのライブ、3/5に第一弾のプレミア配信が公開される。

最初にスタジオライブを聴いた時の興奮は今でも覚えている。
個々のミュージシャンが持つ多様なバックグラウンドが組み合わさり、スパークして色彩豊かな音が飛び出し驚いた。エレクトロ、プログレ、アフロキューバン、ジャズ、アフロ・ファンク、と…色々な響きがきらめく。

一昨年秋にリリースされたデビュー・アルバムは期待を超えるカラフルさで、オーセンティックなアフロ・キューバンやラテン感覚が大きく広がるものだった。2020年の活躍が楽しみだ、と思っていたらコロナ禍ですべての音楽は活動が制限されてしまう事態となった。

そんな中でも新曲や配信の活動を続けて来ての今年2月、ホールで配信用の映像を撮るというのでお邪魔した。

1.jpg

NANA Cantarina (vo, vocal effect), 津垣博通 (p, synth), 小泉哲夫 (b), 吉羽一星 (timb, perc), 関弘太 (bata, congas), 加納樹麻 (ds), 阿部道子 (synth, p)のメンバーに今回は松木理三郎(tp)、石井裕太(ts, fl)と石川智久(tb)の管が加わる。

前回、前々回(と言ってももう1年以上前だが)より噛み合いが緊密で大きなグルーヴ。そしてユニットの関係性がより強固に。それがサウンド全体をクリアにさせ、かつリズムの重層性を際立たせる形になっていて驚いた。

大きく体が揺れ、同時に光が広がるような感覚。そんな強いユニットのまとまりが作るグルーヴに巻き込まれるように管3人のアドリブも素晴らしく、また今までと違った色彩を作る。

エレクトロな霞がかかるかと思えば、バタクンベレのような緊密なリズムの上のジャズが響き、ルンバとヒップ・ホップを跨ぐような感覚へと展開し、歌心を揺さぶるメロディーが浮き上がって、と色々な聴き方を刺激する音でスリリング。

収録後、男性メンバーを従えるようなNanaカンタリーナと阿部道子のお二人にお話を聞いた。

――今回はホーンが加わりました

阿部:リズムの上に何か乗せてもらいたいって言う意見が中からも出ていて、そういうのもあって何かホーンとか入れたら楽しいかなって、あとコラボの企画があって

NANA:そうなんです、"Baila Baila"っていうフィットネス・プログラムの楽曲制作に、一曲ラテン・ファンクみたいなブラスが入っているようなアレンジもあって。

阿部:このタイコ隊と渡り合えるくらいのパワーを持った人たちが良いってことで、今回そういう編成になりました。

NANA:ブラス隊もラテンに偏りすぎていない方で広い活動をされている方が良いなってことでいつもと違う人をお願いしました。

NANA:アフロ・アーバニティの世界観が固まったんで、ラテン系っていう枠から外れて、で、また若い人が必要なんじゃないかって


――アレンジ、例えば"Buscando Ache"は?

NANA:元々私が 7 Sonora(ナナ・ソノーラ)の一枚目で作った曲なんですけど、それを阿部ちゃんに投げてアフロ・アーバニティ・アレンジにしよう、っていう話で、全然違うタイプになりました。歌ってる内容は同じなんですけど。



――サウンドでイメージするものはあったんですか?

阿部:シンセが使えるって編成で不思議な世界観をだせたらなって。いろんな風景が分かるような歌詞がいろいろ出てきたのでそこに引きこまれるような語り部とバックバンド、みたいなところからサルサ調に行けたらなっていうコンセプトで。だから映画の1シーンのような不思議なコード進行から始まっているという。

NANA:この歌詞の内容は実際に会ったババラオが語る話を淡々と書き上げて行ってそのまんま歌詞に。


――キューバで見てもらって

NANA:君はオバタラだって言われて、だからオバタラが出てくるんですけど。そんな内容が面白かったんで思わず歌詞になっちゃった。

――聴いてて風景が浮かぶようでした

NANA:本番はうまく行ったね(笑)

阿部:結構あの曲解釈が難しくて。

NANA:持って行き方とかね、曲の進行とかがちょっと変わっているから。



2.jpg

――Transportationはどうですか

NANA:"Transportation"は(津垣)師匠のオリジナル曲です。

――アレンジも師匠が

NANA:ええ全部。

阿部:コンガとバタとピアノ二台の企画を別の場所でやったとき、曲をお持ちになって、ベーシストもいないライブでそれをやるっていう、結構大変だったんですけど、おもしろい!って感じで。その原曲の良さをここ(アフロ・アーバニティ)なら生かせる!と思って。それで、津垣さんにこの配信の最後に全員で演奏できるようなアレンジをお願いしたんです。


――ゴツくて良かったです

NANA:ゴツかったですね(笑)どうせならガン!とやっちゃおう、ってことで。

――管の皆さんも、おお!こう来るかみたいな

NANA・阿部:そう面白かったです!ほんと管の人たちすごかった。

阿部:昨日のリハでは知らなかった顔ですよね。

NANA:そうだね、昨日あそこまで出なかった。隠してましたよね、彼ら実は(笑)

阿部:色々お持ちの方なので(笑)

NANA:だって松木さんもウホウホ・ニタニタしてる、石井さんと石川さんのお二人の事(笑)おまえら、やるなあ見たいな

阿部:このバンドってそういうものを求めてたりするので、化学反応っていうか、なんか音でやりあえるような、Sayakaさんの時もそうだったんですけど、一人はいると結構反応が返ってくるような、エッジのある方が入ればって感じで、ほんと良かったです。

NANA:やっぱり一発勝負ものっていうか、ライブな集中力が緩むとだめなんですね。でもこのバンドは、なんていうか本番一発の時の爆発力っていうか、アンテナ具合がすごいんで、できるだけ一発取りで、おんなじことは多分出来ないっていう。


NSCD-1209 (1).jpg

――1枚目の後、コロナで間が空き、ディスタンスなコラボや合宿やったりして、ようやく今日のライブ収録ですけど、前回のライブとは同じ曲でも違った感じを受けました。演っていて何か変化を感じましたか。

阿部:全体に対して感じたのは、コロナ禍で会えなかった期間は、みんなでわっと集まれなくても、一人一人スタジオに入って、デモ制作からシングル・リリースっていう配信の事をやってきました。そんな中で絆が深くなり、打ち解け感が出るようになったと思います。

一番最初の頃は、ちょっと雇われてきました(笑)みたいな遠慮がする感じあって、言いたいことを言わずに、やり過ごしたみたいな空気がちょっとあったんですけど、コロナ禍のなかで、会えない中でも会う機会があり、あー、会いたかったね、という感じで絆が強くなった気がします。


――そんな中でより音が噛み合ったりする

阿部:しますね。アレンジに関しても今まで私がやってきたものをこれです、って出してやる感じだったんですけど、メンバーとのやりとりで変更が色々出てきました。

――いい意味でくっきりとした気もしたのですが。多様な要素がここぞというときにすごく響いたというか

阿部:うまくお互いの音を聴けるというか、信頼が深まったというせいじゃないかと。
どうしても「埋めなきゃ」みたいになってくるじゃないですか、相手に付けたり。

NANA:そうね、だれかが何かをしなければいけないみたいな。

NANA:そうそう、グルーヴが悪いと、自分が出さなきゃみたいな。そういうのが無くなってきたんだと思います。その時誰に付ければうまく(グルーヴが)まとまって行くみたいなのが分かってきた感覚。


――空間に対して恐れないみたいな

阿部:結構私はそれを感じてました。ライブ配信する前に(音源の音の)調整をするんですが、ちゃんとかみ合っているので、ほとんどすることがないっていうか、EQ処理でかぶりの処理くらいであとは何もしていない。演奏したいっていう事が前提にあるので一回のなかの、っていうより、その一回にその気持ち持ってきているっていうか

NANA:みんなでアンサンブルするってことの重要性をすごく求めるようになったというか。コロナ禍でどうしても一人一人単独でやることが多くて、全然生でアンサンブルすることが出来ないから飢えているような状態ですね。だから逆になんかすごい集中力ある。昨日今日でアー満足したみたいな(笑)

阿部:コロナの状況は不幸なことではあるんですけど、バンドにとっては良いことだったかも。

NANA:そうかも。間を出来るだけ空けないようにシングルをリリースをしようとか、色々工夫をしてずっと継続してやってよかったです。


                   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

配信は3/5(金)(アーカイブの視聴可)、そして4月上旬との事。
コロナ禍が一段落したところでの普通のライブが待ち遠しい。


posted by eLPop at 22:57 | 伊藤嘉章のカリブ熱中症