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2026年前半はこれだ!バッドバニーが動かすもの

2026.07.15

昨年の1月のバッド・バニーの『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』はSpotify, Apple Musicのストリーミング記録塗り替え、グラミー最優秀賞を獲得し、そしてNFLハーフタイムショウで衝撃的反響を引き起こした。

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https://note.com/elpopjp/n/n7bfcfcd1c0ab

特にNFL直後から、ラテンアメリカそして旧来の大国の前に翻弄されてきた人たちに戦略的なインスピレーションを与えた事が多くのSNSや記事で語られた。その影響は今後どんな形で芽を吹いてくるのだろうか?、また昨今超大国アメリカがイランを扱いきれず、大国ロシアがウクライナにパンチを食らっている、情勢などをみながら、なにか従来と違う動き方がでてこないだろうかとNFLのお祭りの後、頭を巡らせていた。


ラテン・アメリカに関して言えば、バッド・バニーが徹底的にアイデンティティにこだわったような事は、従来なら「周縁」「マイナー」「カウンターカルチャー」的な反応で終わる事が多かった印象だ。

だが、現代の瞬時の情報の共有化・一般化は、特にマジョリティの陳腐化を引き起こし、一方周縁の真似のできなさは予想外に大きな強みを持つことが起きた感がある。NFLからまだ半年経たないが、従来からルーツを大切にしてきた人たちも含め、新たな目でルーツを見直し新しい方法で提示して行く動きを感じるところだ。

プエルトリコのラウ・アレハンドロは『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』の衝撃以後のタイミングでプエルトリカン・ルーツに大きく寄った『Cosa Nuestra: Capitulo 0』を2025年9月にリリース。ボンバ・プレーナ、サルサとバッド・バニーとかぶることを厭わずチャレンジしている。

Rauw Alejandro - Carita Linda



4月の世界最大級の音楽フェス、コーチェラ(カリフォルニア)ではカロルGがヘッドライナーで出演。<Latina Foreva>などコロンビアとラテン・アイデンティティ全開のステージングを行った。バッド・バニーのNFLにも参加し、直前のコロンビア公演も含め、バッド・バニーと長く息の合った共演をしてきた彼女もそんなバッド・バニーの感覚を共有しているように感じる。

Karol G - L4TINA FOREV4 “Live” in 2026



5月にはサンタナがメキシコ系のベッキーGとのコラボでをリリース。移民とICEを題材にした。メジャー(ソニー)でのリリースだが、特に忖度もなく、バッド・バニーが作った流れに共感も強いだろう。

Santana, Becky G - Mi Gran Amor



5月にメキシコでは南北アメリカ最大級のラテン音楽フェス『Sueños 2026』の最終日にカリフォルニアのリージョナル・メキシカンのバンドフエルサ・レジダ(Fuerza Regida)が登場。
彼らのスタイルであるアコースティックな楽器(ギターやバホセスト、スーザフォンなど)で爆音のコリード・トゥンバードスを演奏。米墨国境を意識しないというか、トランプが国境を閉めようと、歴史と文化で繋がっている面を素直に表に出し一体化しているムーヴメントを強く感じるものだった。


Fuerza Regida - Cuando No Era Cantante Remix


また年後半、思い切ったトラディションとアーバンのかっこいいバランスから、新たな世界に広がる感覚が生まれてくるか、とても楽しみだ。

⇒特集「2026年前半はこれだ」目次ページにもどる

posted by eLPop at 09:47 | 伊藤嘉章のカリブ熱中症

『2025年はこれだった:バッドバニーから生まれるなにか』(伊藤嘉章)

2026.01.01

【バッドバニーから生まれる何か】
2025年初にリリースされたバッド・バニーの『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』は発売翌日26か国で再生回数10億超えのトップになり、7月から9月にプエルトリコで31回行われた「No Me Quiero Ir de AquíーResidencia」公演は60万人を動員。続く中南米公演を含め計260万のチケットが売れているという、前例のない数字を叩き出している。

Bad bunny dtmf video official

https://youtu.be/v_Tgq5OUrmE?si=5IzkhO1Lgj90R67D

今年3月に行われる、全米で最も視聴率の高いエンタテインメントの「NFL ハーフタイムショウ」への出演と「スペイン語のみでのパフォーマンス」という宣言は、アメリカの白人至上主義方面/トランプ支持者方面から文句を受けているが、NFL側は無視なので、この快挙は今のところ実現しそうだ。

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上はインスタで「バッド・バニーのNFL公演はなんで大事か?!」を発信する例のひとつ。ほんとうに色々な意見が表明されていてアメリカの理解に役立つ。

これらの個別の事も十分快挙なのだが、一連の出来事から色々な事が動き始めている事がより重要かと思う。
プエルトリコの豊かさを見直そう、というアルバムとコンサートのメッセージは今、島と本土のプエルトリカンの意識を揺さぶり、報道やSNSでは色々な動きが生まれている事が分かる。

また、ヒスパニックの人口がアメリカの2割に達し、様々な社会問題のはけ口がヒスパニックを筆頭とする非白人や移民に向かっている。バッドバニーの態度の表明は、憎悪や差別に置き換えようとする動きが今後どうなっていくのかを見るための、一つの事象となっている。2025年は個人的には今年はそんな点からあちらのニュースを追っかけた年だった。具体的にどんなことを追ってたのはこんな感じ。

■プエルトリコ固有の音楽とその歴史の見直し:ボンバ、プレーナ、ヒバロからサルサ、レゲトン(old school)まで、今までに増して若い世代が音を作り始めている。

例えばこのミサエル・ゴンサレスのグループとカルロス・カルデロン率いるカイコのコラボとか、ボンバに限らず他にもたくさんの動きが増えている感がある。
-REPÓRTENSE- Misael González & El Batey Botánico X La Bomba de Caiko

https://youtu.be/docuZAg6b_w?si=MoNE5QkwNbvewSE1

バッド・バニーがアルバム/コンサートでフィーチャーした若手ミュージシャンはと周辺の活動は各々、Tiny Desk出演やまたYoung Mikoのように単独でスタジアム公演を成功させたり、Vogue誌やピッチフォークのアイコニックな記事の対象となったりと、シーンが広がる起爆剤となっている。

Young Miko - Likey Likey

https://youtu.be/8wQBHfpa2K0?si=myJa73giVes0qPwB

チュウィも見逃せない。
"GUERRA" - CHUWI

https://youtu.be/6ca5mpw1QKc?si=-SWvibRhJWZK0wMv

従来トラップやエレクトロ、そして近年サルサを取り上げていたラウ・アレハンドロがボンバまで行きついているのも、近年のストリートのボンバ指向に沿ったものでもあるが、バッド・バーニーの作った空気と無縁ではないだろう。様々な個性がプエルトリコ固有の音にチャレンジしている。

Rauw Alejandro - Carita Linda


https://www.youtube.com/watch?v=WdSGEvDGZAo...

英語ONLYの話者に対して、スペイン語の勉強を強く勧めるSNSに加え、プエルトリコ独特のスペイン語についての解説だけでなく、ラテンアメリカの様々な国から「アメリカ合衆国/世界で誤解されている/意識されていない、ラテンアメリカの歴史や実態」を説明するSNSが激増している。

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上記はプエルトリコ特有の単語や言い回しを解説してくれるSNSの一つ。スペインのスペイン語との比較やアラブ起源、タイノ起源などの言葉の解説があったりで、カリブの混淆を提示することによって、分断のばからしさ、無意味さを感じさせてくれたりする。

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プエルトリコからだけでなく、全てのラテンアメリカから「自身は/自分の国の人たちはどういう人か」というような発信もこの1年本当に増えた。上記はドミニカ共和国から。「自分は「黒人」じゃなく「ドミニカ人」だという意味を語っている。

観光資源の再構築やSNSでの発信も相当増え、プエルトリコでは観光収入が増加している。

■従来諦め半分・現状追認的だった「未だに植民地」のプエルトリコの制度・法律の修正要求の機運が高まっている。

などだ。この傾向値が今後どんな風に動いて行くのか、音楽にどう影響するのか、日本の様々な出来事とどう重ねて考えていくのか、ちょっと楽しみです。


【2025年の訃報の一部】2025年、様々なラテンの素晴らしい音楽家たちが空へ。
いずれもただその音楽に感謝するばかり…

■ルビー・ペレス(4/8, 69):メレンゲ歌手。ライブ会場の天井崩落で逝去
■フラコ・ヒメネス(7/31, 86):テハノ・ミュージックの巨星、アコーディオン奏者・歌手
■エディ・パルミエリ(8/6, 88):ラテンジャズ〜サルサの巨星、ピアニスト、作品曲家、バンドリーダー
■エルメート・パスコアル(9/13,89):プラジル音楽の巨人。
■ラファエル・イティエール(12/6,99):コルティーホ・バンド出身、エル・グランコンボのリーダー、ピアニスト
■パポ・ロサリオ(12/12, 78):エル・グラン・コンボを近年まで支えた素晴らしい歌手の一人。


【本】最後に、エルポップ・メンバーが関わった2025年の本の事を

●『都市のリズム』石橋純、伊藤嘉章 編著(鹿島出版会)2025.10.15
世界の都市とその街に関係する音楽についての18のエッセイ+2つのインタビューやコラムで構成した本。

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石橋純さんと共に編著者として作り、eLPopメンバーの水口良樹、高橋めぐみにも寄稿頂きました。宮田信へのインタビューも掲載。

石橋さんはNYのワシントン・ハイツの事を、伊藤はパナマ〜プエルトリコのレゲトンの事と、NYのジャズとヒップホップの事を、水口さんはリマとムシカ・クリオーヤの事を、高橋めぐみさんはビーゴとガリシア人の音楽の事を、各々エッセイにしています。

●『ゼロから分かるラテン音楽入門』伊藤嘉章、岡本郁生監修(世界文化社)2025.10.15
15年ぶりくらいのラテン音楽総合入門本。とはいえ、初心者からベテランまで楽しんで頂けることを重視しました。QRコードつけて関連の音が直ぐに聴けるようにしたり、15年間に起こったレゲトンからトラップまでもカバーし、日本とラテン、ジャズとラテン、クラシックとラテンなど色々な視点の章も用意。

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eLPopよりは、岡本&伊藤の執筆に加え、高橋政資(キューバ)、高橋めぐみ(映画)、山口元一(コロンビア)、水口良樹(ペルー)、宮田信(チカーノ)の寄稿も。

幸い、ミュージック・マガジン、Intoxicate、レコードコレクターズ、Jaz.inなどで良い評価を頂きほっとしています。

●『日本から考えるラテンアメリカとフェミニズム』水口良樹、柳原恵、洲崎圭子編(中南米マガジン社)
ラテンアメリカのさまざまなフェミニズムの運動や実践を取り上げた本。伊藤も少し音楽の所で参加しました。
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posted by eLPop at 12:47 | 伊藤嘉章のカリブ熱中症

パレスチナ、そしてトランプ

2025.06.14

音楽はここ半年たくさん良いものに出会ったが、それより怒り心頭なニュースは2つ:
パレスチナとトランプ問題へのラテンの音楽のことを。

■まず、スペインのシンガーソングライターのマルワン(1979年マドリード生まれ、パレスチナ系スペイン人)の曲を。

- Nana Urgente para Palestina(「パレスチナへの緊急の子守唄」)


https://youtu.be/4FzN5MnQyfY?si=sy2ptDwY5l_iNdDv

耐えてきました
誰も耐えないようなことを
誰にも気にされない者の苦しみを
それでも私はまだ立っています

耐えてきました
砲撃のただ中を
保育園の火の中を
それでも私はまだ立っています

(coro)
平和の歌なんて歌えません
自分の体さえ動かせないのに
平和の歌なんて歌えない
自分の体さえ動かせないのに

(ヴァース)
耐えてきました
毛布の中での激しい恐怖を
皆に背を向けられることを
それでも私はまだ立っている

よく覚えておいてください
私を定義する言葉なんてありません
皆が私を「パレスチナ」と呼びます
それでも私はまだ立っている


■2曲目はプエルトリコのレシデンテ。社会問題にずっとコミットしてきている大スター/ラッパーが、パレスティナの歌手アマル・ムルクスと組んだ曲。

Residente, Amal Murkus - Bajo los escombros(「瓦礫の下で」) (Live Session)

https://youtu.be/COgKs7YcRQE?si=L2_338KQ9QWxSOYj

(レシデンテによるスペイン語の部分)
最初からわかってた、血は争えない
俺たちは、あの子の、またその子の、またその子の子供
棒と石だけで戦車に立ち向かってきた
俺たちをここからどかせる者なんていない

大尉も、大将も、軍曹でも無理
生まれつきビザはないが、アクセントはある
そしてここに、風の最後のひと息までも留まる
人々は変わらず立ち続けている

(立ち向かう)正面にいる軍隊全体に
(俺たちは)まるで違う育ち方をしてきた
灼けたコンクリートの上を裸足でサッカーして
橋もなく川を越えてきた

水と風で、電流を生み出す
パンが足りなければ
歯に残ったものだけで生き延びる
傷は新しいタトゥーさ

俺たちは耐え続ける、この想いが届くまで
俺たちは勇気の子どもたち
死海に波が立つその日まで
この風景のために、野生の夕焼けのために命を捧げる

地中海に映る、あの偶然の光のショー
それを、胸と剣で守り抜く、ああ!
顔を覆ったスカーフのままで
侵略者はまるで豚、明白だ

俺が両手を上げても、奴らは撃ってくる
けど、少しの水で俺たちは耐え抜く
オリーブの木のように俺たちは生きている
そして肩には、あらゆる瓦礫を背負っている

その瓦礫の下には、俺たちの祭りが眠ってる
遠くから引き金を引いた奴の
赤いボタンを押した奴の
目を見て俺と向き合うことすらできなかった奴の

その瓦礫の下で書き直された
まだ語られていない物語がある
誰にも読まれなかった本がある
俺たちを爆撃した兵士たちが読まなかった本が


(アマル・ムルクスによるアラビア語の部分)
ガザよ
我が民よ、絶望しないで あなたの声は高く響いている
祖国よ、泣かないで あなたの涙は尊い
ガザよ、わたしの誇りよ、波から生まれた娘よ
ガザよ

海の兵を集め、炎の下で
包囲の中、破壊のただなかで
あなたは「家」だった、いまは「石」となった
ガザよ

我が民よ、絶望しないで あなたの声は高く響いている
祖国よ、泣かないで あなたの涙は尊い
ガザよ、わたしの誇りよ、波から生まれた娘よ
ガザよ

海の兵を集め、炎の下で
包囲の中、破壊のただなかで
ガザよ、ガザよ


■ちなみにガザの今昔(The Gaurdian制作)
Gaza City before and after: footage shows destruction wreaked by war



https://youtu.be/grKsZU2T3Oc?si=HmRb0sKCCSd78Tk_


■最後に、トランプ問題に関する曲を。

アメリカで暮らすベネズエラ人の若者ダビシート、ジュニア・カルデラ、ルクソールマスターの3人が、トランプの移民排斥、国外追放に対しフリースタイル・デンボウなヒップホップで「ドナルトロン」というのをというのをYouTubeでリリース。これがTikTokで大バズり。ダビシートはシカゴのヴェネズエラ移民の音楽シーンでは力のあるラッパーでコンピにも取り上げられている。

DONALTRON - ‪@juniorcalderatm‬ バツ1 ‪@Davicito59‬ バツ1 Luxor ( VIDEO OFICIAL)

https://youtu.be/_Z3Mu38CUb4?si=6jSOX1byDAVMDQ-w

「ドナルド・トランプ、国外追放してほしくない。僕はただ書類が欲しいだけ、パスポートにスタンプを押して欲しいだけなんだ。僕はちゃんと働いて、規定で必要なすべての裁判所に顔を出すと約束する。ここで結婚相手を探してるんだ "という歌詞。しかし2月のリリース後、5月に予想通りウィスコンシン州の郡拘置所に拘留となってしまった…。

ダビシートの本名はクラウディオ・ダビッド・バルカネ、現在26歳。ベネズエラのバレンシアで生まれ、2016年20才前にベネズエラから陸路でコロンビアに移住し、その後2021年に家族を頼ってペルーに移住。そこで一児の父となったが、2023年パナマ/ダリエンのジャングルを抜け、中米全土を北上してメキシコに至る王道のルートで合衆国を目指した。そして2024年4月CBP Oneの申請によって合法的に入国している。

CBP Oneは、米国税関・国境警備局(CBP)が提供していたモバイルアプリで、主にアメリカ合衆国への入国手続きの簡略化と待ち時間の短縮、そして国境手続きの効率化を目的に開発されたもの。ESTAのようなものと言っていい。バイデン政権時代にスタートした。CBP Oneは、特に米国とメキシコの国境を越えて入国を希望する人たちにとって、重要な役割を果していた。

ところがトランプ就任後、2025年1月20日、CBP Oneアプリは、米国大統領令で即座に閉鎖となった。
彼が最も恐れているのは、例のエルサルバドル、グアンタナモ、リビア送りにされる事だ。加えてダビシートはマドゥロ政権に反対の意を表明していることから帰国しても人権は保障されないだろうと考えている。

入国後、彼が初めて移民裁判所に出廷したのは2024年6月(バイデン時代)のことだったがその際判事は亡命申請をするよう勧告し、入国から1年直前のギリギリで申請することになった。彼の勾留はトランプがCBPワンの受益者に即時退去命令を郵送した時期と重なるが、一方で彼の亡命申請はまだリジェクトされておらず、彼は期待をかけている。とはいえ、入国時もそうだったが、彼のタトゥーから犯罪歴があるのではとか当局の偏見による追求など、この先の事は見通せない状況。

ダビシートのようなCBP Oneによる合法的入国ですら全く先の事は分からず、ニュースでご存じの通りLAを発火点として抗議行動は広がり、政府の締め付けが激しくなっている。
ダビシートの幸運を祈るばかりだ。


posted by eLPop at 01:36 | 伊藤嘉章のカリブ熱中症

『ラテンアメリカかのフェミニズムを歌から考える』

2025.04.26

4/25(金)に水口良樹さんと『ラテンアメリカかのフェミニズムを歌から考える』というイベントでトークしました。場所は高円寺の書店、本の長屋。

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昨年早稲田大学で行われた国際シンポジウム「日本から考えるラテンアメリカとフェミニズム」の内容を基にした同名の資料集+コラムのブックレット(編者:水口良樹、柳原恵、洲崎圭子 / 中南米マガジン刊)の拡張イベントです。

数日前に予約で一杯になり満員。ちょっと驚いたのは当日キャンセルが一人も出ずだった事。いらしてくれた皆様ありがとうございました。フェミニズムを男性2名が語るということで両名とも緊張の2時間でしたがいかがでしたでしょうか。

当日レジュメを配布せず曲名リストのご要望がありましたのでここに掲載します。ちょっとメモも加えてありますのでYouTubeのリンクと共にお楽しみください。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

[イントロ] 雑なフェミニズム年表(文責伊藤)

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個々の曲は1950年代のものから2024年のものまでから広くピックアップしました。
「性差別なくすべての人が性別に関わらず平等に生きられることを目指す」フェミニズムの端緒は18世紀のフランス革命の近辺くらいからと人類の歴史からするとけっこう最近

欧米フェミニズムの学問的な段階分類ではの最初の「第一波」「参政権」や「財産権」などから始まります。女性参政権のトップランナーはニュージーランド(1893)、北欧、独・露が続き、米英は1920年代。日本は1946年。ほんのちょっと前ですよね。100年経ってない

「第一波」の「参政権」など法的権利の獲得運動で法律は変われど世の中はすぐに変わらない、現実の世の中での様々な平等の実現や、男女の固定化した役割を可視化して意識を変えていく動きの「第二波」へと動きます(1960年頃〜)。

音楽でも60年代は米公民権運動や欧左翼活動から、ベトナム戦争、ロックの台頭などなど時代を背景とした激動の空気がありましたが、フェミニズムも同じ空気の中で「女性解放運動」「ウーマン・リブ」など連帯した動きや「性」の自己決定⇔性暴力への抗議などのエリアも可視化されて行きます。労働賃金差の話も出てきます。

運動が広がり幅が出て来るに従い「第二波」のアプローチでは不足が出てきたり、より多様な問題、例えば同じ女性でも貧富や階級の違い、少数民族人種などの視点などでの問題提起が深まり、「第二波」の連帯型から多様な個性に基づく「個」に焦点があたって来た「第三波」(1990年代〜)へと進みます。

そして近年の「第四波」と区分けもされる2000年代ですが、多様、多層な意識での問題可視化、提起、解決への動きの時代だと思います。自身が自身らしく生きるという事は当然LGBTやクイアの事も含め考えるようになります。「女らしさ」を言ったり強いたりする事は「男らしさ」側にも生きにくい状況ができる事も言及されます。

iPhone型携帯とネット回線の大増強で2010年代以降の #Ni Una Menos や #MeeToo など多様な問題の可視化や運動の伝播が広く速くなった時代でもあります。


まあ、雑な区分けはおいておいて、このイベントに際して改めて思うのは1960年代に可視化・提起された問題点は「第X波」を越えようと相変わらず続いていることです。

イベントでご紹介する14曲は多様な問題点を全部カバーしきれませんが、これらの音と映像で音楽家が可視化した未だに続く問題を見て、前進はしてるが事はそう簡単に良くならないということ、またいろんな事例を知ってできることをじわじわやって行かねばなあ、という思いを持ちました。そんなことを思い聴いていただけたら幸いです。

では曲をどうぞ!


@ラステシス(LASTESIS)
「あなたの道行くレイプ犯」(Un violador en tu camino)
2019 チリ

シビラ・ソトマヨール・ヴァン・ライセゲム(Sibila Sotomayor Van Rysseghem)、ダフネ・バルデス・バルガス(Daffne Valdés Vargas)、パウラ・コメタ・スタンゲ(Paula Cometa Stange)、レア・カセレス(Lea Cáceres)の4人でスタートしたフェミニスト・コレクティブ。

シルヴィア・フェデリーチ(伊)やリタ・セガート(Arg)(フェミニスト思想家)のテーゼ(反家父長制など)を体現し活動。2019年10月に端を発したチリの騒動/大規模社会運動に際して女性への性暴力/レイプの問題を痛烈に抗議しラテンアメリカのみならず全世界に(含日本)同様の抗議運動が拡大した。
映像はBBCがまとめたもの。


https://youtu.be/B3LBrWNuilQ?si=sVdDFZykXIiIPdOT

チリの騒乱については映画『私の想う国』(Mi Pais Imaginario"(2022)が状況を伝えてくれる。インタビューにはLASTESISのメンバーも登場

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ブックレットをお持ちの方は下記も併せご参照ください。

P102「チリ女子大生が引き起こした「フェミニズムの津波」」柳原恵
P56「第二章 プダウエル(チリ、サンティアゴ)におけるマプーチェ・フェミニズムの出現に関する考察」
カリーナ・アウマーダ・パイラウエケ
P128「チリにおける変革のうねりとフェミニズム運動」三浦航太


Aエル・ハル・クロイ(El Haru Kuroi)
「彼女」(Ella)
2015 (チカーノ)


https://youtu.be/3UbkD_3pVFs?si=TlKVZx7qgCIxuj1u

ロサンゼルスで2004年に結成された3人組のグループ。07年に1stアルバム『サブン』。2016年、2018年に来日公演も行っている。

曲はアメリカ国内で暮らすメキシコ系アメリカ人「チカーノ」のシングルマザーが家政婦として生きる姿を描写する。移民の問題、プロテクトされていない女性労働の問題、シングルマザーの問題などを考えさせられる。

「彼女は自身を犠牲にしている。子供たちをとても大事に思い子供たちのために生きている。毎日電車で高級住宅街の西地区に向かう。8時から6時まで掃除し料理を作り他人の子供の世話をする。すべて必要に迫られてのこと。長い一日が終わると子供たちがじっと待っている家に帰り食事の支度をする。そして宿題を手伝いう。父親はいない。いつか彼女は国に戻り、自分を恋しく思う家族を訪ねたいと思う。彼女は決して思いを失わない。彼女は決して思いを失わない。この歌は彼女のことを忘れないために。彼女のことを忘れないために」

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ブックレットをお持ちの方は下記も併せご参照下さい。

P54「ラテンアメリカの有償家事労働者事情」浅倉寛子
P78「チカーナ・フェミニスト グロリア・アンサルドゥーア」吉原令子




Bビオレッタ・パラ(Violeta Parra)
「何のために結婚するのだろう」(Para Qué Me Casaría)
1957  チリ


https://youtu.be/OpzbmvQLzPw?si=AGM6SdmL_hfP8ckE

社会変革の運動と連動した
ヌエバ・カンシオン(新しい歌)の先駆として活躍し、その社会正義を求める表現の原点・源泉としてフォルクローレ歌い続けた歌手(1917-1967)。「Gracias a la vida」など多くの曲が歌い継がれている。

ビオレタがこの曲を作ったのは、海外公演のさ中に国に残した娘を病気で失い、離婚し貧しさのどん底にいた頃。夫からの暴力、その夫に家庭で従わなければいけない人生って、なんで結婚したんだろうと歌う。1950年代に今でいうDVを可視化して歌う女性はほとんどいなかったのではないだろうか。

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Bパストリータ・ワラシーナ(Pastorita Huaracina)
「酔っ払い」(El Borracho)
1960s ペルー


https://www.youtube.com/watch?v=u7aN0mg1R7Y

パストリータ・ワラシーナ(本名マリア・アルバラド・トルヒーリョ)(1930-2001)は、アンデス出身(ケチュア語エリア)のペルーが誇る大歌手。

曲は彼女が強く感じる人生の苦しさをお酒で紛らわす情景を歌っているもの。1960年代に少数民族差別と女性としての差別の重層的な状況を可視化する歌の先駆と言えます。冒頭の酔っ払いの真似がなかなかの芸でもあるところ。

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Cレベカ・ラネ (Rebeca Lane)
「ニ・ウナ・メノス」(Ni una menos)
2018 グァテマラ



https://www.youtube.com/watch?v=VbQ_yOlzWTs

2015年にアルゼンチンで、14歳の少女が付き合っていた恋人に殴られ殺され埋められた事件をきっかけに女性であることを理由にした殺害(フェミサイド)への大規模な抗議行動が起こり「ニ・ウナ・メノス」(Ni una menos)

これ以上女性への暴力の結果の殺人は一人も起こさせない」というスローガンを掲げたもの。行動はチリ、ペルー、ボリビア、パラグアイ、ウルグアイ、エルサルバトル、グアテマラ、メキシコなどに拡大した。

曲はグアテマラの詩人でラッパーでもあるレベカ・ラネ(Rebeca Eunice Vargas Tamayac)によるもの。
ラテンアメリカへのラップ/ヒップホップの浸透はアメリカから10-15年遅く始まりました。
1970年代後半にNYで生まれたヒップホップですが、その誕生にはアフロアメリカン、ジャマイカ移民と共にプエルトリカンが重要な位置を占めており、ヒップホップには出自からラテンの血が含まれていました。

最初はNY、そしてLAのプエルトリカンやチカーノが英語でそしてスペイン語でと広がって行きます。
ラテンアメリカ圏には80年代後半からラップを行う動きが出て、レゲトンの誕生に繋がったりもします。

元々韻を踏み詩を即興で読む伝統(デシマとか)のあるラテンアメリカですので、ヒップホップのリズム感覚が身体化すれば必然の動きとも言えます。

とはいえラップのリズムも言葉のアクセントが違うので英語圏のラップと微妙に違うのも魅力。そしして何よりトラック・メイキング(演奏の部分)がラテンならではの色彩。ここが音楽的に注目な所ですね。

男性のラッパーがほどんどだったヒップホップの世界にも少しずつ女性のラッパーが出て来て、ラテンアメリカでも90年代に活動がスタートしてます。

大きく表に出たのは2000年代のチリのアナ・ティジュー、そして各国に影響を与えました。レベカ・ラネもその一人です。

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Dフェミガングスタft. オフェリア・フェルナンデス(Femigangsta ft. Ofelia Fernández)
「私は行く」(Voy)
2018 アルゼンチン


https://www.youtube.com/watch?v=Ie8QV8bwHFY

フェミガングスタ(Agnes Simon)アルゼンチンの新世代のロック、R&B、ラップをこなすアーティスト。
フェミニストの闘いを続けていくという強いメッセージの曲。


Eイレ(iLe)
「おまえは恐れる」(Temes)
2019 プエルトリコ


https://www.youtube.com/watch?v=LCQpUnKe97w

プエルトリコの女性歌手(本名:Ileana Mercedes Cabra Joglar)
グラミーも獲得しているプエルトリコ・トップの社会派ヒップホップ・ユニット、カジェ・トレセ (Calle 13)の2人の妹。深みのある歌と社会問題にもコミットする姿勢で大きな支持を得ている。

映像は鮮烈な印象を与える性暴力への抗議を扱うが「あなたはどうして怖がっているの?何を恐れてるの?」とたずねる冷静な表情の凄みある表現がすごい。暴力は何らかの恐れから生まれ、その恐れをコントロールできない、どうしようもないちっちゃいやつが暴力を使うということだと思います。性暴力、フェミサイドへの静かで痛烈な一撃。
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Fマリア・テタとエンプホン・ブルタル(María T-Ta y el EMPUJON BRUTAL)
「だらしない人」 (La Pituchafa)
1987 ペルー


https://www.youtube.com/watch?v=AgK-Kb_m1fA

マリア・テタは本名 Patricia Roncal Zúñiga。80年代後半の数年ペルーで、オルタナ的なロックで活動した当時唯一無二の人。性暴力、ダメな男性のメッセージと性の解放。ライブ映像は聴衆への語りからスタートし演奏は1分10秒くらいから。    

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GカロルG & シャキーラ (Karol G & Shakira)
「TQG」
2023 コロンビア


https://www.youtube.com/watch?v=jZGpkLElSu8

シャキーラは本名 Shakira Isabel Mebarak Ripoll。レバノン系マケドニア人米人の父とカタルーニャ出身の母の元生まれたコロンビアのラテンポップスの大スター。1991年に15歳でデビュー後、95年の "Pies descalzos"のヒットで人気となり、2005年には"La Tortura”ではビルボード総合7位、ビルボード・グローバル200で1位を獲得の超のつくラテン界のスター。

彼女はサッカーのFCバルセロナ所属のスター選手ジェラール・ピケと結ばれ2児を設けたがが、ピケの浮気で2022年破局。カロルGは新生代のレゲトン/トラップのスターだが、彼女も恋人だったプエルトリコのレゲトン歌手Anuel AAの浮気で破局。

この曲は浮気をした男をさっさと見限り、相手から未練あるアプロチーも軽く蹴とばして、いや、あんたみたいな軽い小物は私らみたいな大物にはそもそも不釣り合いだったよねえ、というディスたっぷりの歌。

曲のタイトル「TQG」は Te quedó grandeの頭文字で、「私はあたなには高嶺の花、あなたには不釣り合いだったね」という意味。よく愛のメッセージの最後に「TQM」=Te Quiero Mucho=I Love you so muchと書くのをもじってるところもにくい。

ラテン圏のみならずアメリカでもヒットしたこの曲への支持は、従来型の男の勝手な行動は相変わらずの中、それをガツンとにこやかに音楽でぶったたくのは当然という空気が今であることを表していると感じます。

歌詞の中で、男が未練たらしく最近のインスタにいいねしてきたけど、未練ですか?みたいにコケにされている。マッチョといわれるラテンですが、従来から歌の中では男が浮気して、振られて、後悔しながら好きだったんだよと泣く、というパターンがありけっこうヒット曲も多いのですが、そのような男に、いや22歳の娘が好きなんでしょ、お似合いのその娘とうまくやりゃいいじゃん、こちらはトリプルM(Más buena, más dura, más level=もっと最高でもっとタフでもっとハイクラスの女性)なんでもともと不釣り合いだったねー、みたいな対応の歌詞となっています。

あと本筋とは違うのですが、映像の二人はとてもセクシーな訳ですが、セクシーさ/エロティックさとフェミニズムの同居はコロンビアやベネズエラなどのカリブ海側も含むカリブ圏らしいところです。ブックレットでは英語圏の研究ですが下記が扱っています。

P50 「カリビアン・フェミニズムを繋ぐ「エロティック」」中村達

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Iルスミラ・カルピオ (Luzmila Carpio)
「女性たちに敬意を」(Warmikuna Yupaychasqapuni Kasunchik)
1999 ボリビア


https://www.youtube.com/watch?v=YhHH8BHdivM

Jアルコオリカ・ラ・クリスト&ルスミラ・カルピオ (Alcoholika La Christo & Luzmila Carpio)
「女性たちに敬意を」(Warmikuna Yupaychasqapuni Kasunchik)
2018 ボリビア


https://www.youtube.com/watch?v=m9xbFvqUYzg

IJは同じ曲です。Jは1999年の原曲、Kは2018年のロック版。なかなかユニークなサウンドになっています。先住民の女性の誇り。

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ブックレットをお持ちの方は併せお読みいただければ。

P71「ボリビアの先住民女性の声とフェミニズム」藤田護
P76「マリチュイ – 大統領選に挑戦した先住民女性」柴田修


Kフロール・デ・ラップ (Flor de Rap)
「決してつぶされない」(Inmarchitable)
2019 チリ


https://www.youtube.com/watch?v=dawCDu2lQTg

フロール・デ・ラップ、本名アンジェラ・ルセロ・アレイテ。サンティアゴで生まれ、移り住んだ北部で複雑な幼少期を過ごし、娘を出産後、2015年にサンティアゴに移り住み、2016年に自伝的なデビュー盤『Inmarchitable』をリリース。ラップの技術とサウンドが評判だったが、2021年の『Mariposa』がヒット。チリのヒップホップ〜ポップスのエリアでスターとなった。

曲はそのデビュー盤から。小さい頃に受けた暴力、家族、親戚からの虐待、貧困、出産と若くして多くのつらい体験をした自伝的作品だが、そこには女性が受ける多くの暴力や不当な扱い、貧困から来る様々な問題が描かれている。タイトルは「自分は色あせない、自分を失わない、つぶされない、自分自身であることを続ける」という意味。

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Lビビール・キンターナ/モン・ラフェルテ/エル・パロマール (Vivir Quintana, Mon Laferte, El Palomar)
「恐れのない歌」(Canción sin Miedo)
2020 メキシコ


https://www.youtube.com/watch?v=-UgyLRjz3Oc

メキシコの歌手、作曲家のビビール・キンターナとチリ出身でメキシコ在住、ラテン・グラミー賞にも何度もノミネートモン・ラフェルテが性暴力と女性殺害に対し歌った曲。反フェミサイドの象徴的な歌でもあります。連帯の歌。WEB版資料集には各国バージョンの映像へのリンクがあります。

スクリーンショット 2025-04-26 132121.png

Mアナ・ティジュ(Ana Tijoux)
「反家父長制」(Antipatriarca)
2015  チリ


https://www.youtube.com/watch?v=RoKoj8bFg2E

本名、アナマリア・ティジュー・メリノ。フランス生まれのチリのヒップホップ・ミュージシャン。1990年代後半にヒップホップバンド MakizaのMCとしてラテンアメリカで名を馳せ、2006年、メキシコの歌手フリエタ・ベネガスとノコラボ 「Eres para mí 」のヒットで表舞台に。

セカンドアルバム『1977』、『La bala』(2011年)、『Vengo』(2014年)は何れも高く評価されている。ラテンアメリカの女性ヒップホップ・ミュージシャンの先駆とも言える。この曲は女性に当然あるべき自分である事、自己決定性、家父長制からの解放を歌っている。

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以上14曲でしたが、時間の関係で例えばクイアの事を厚かった曲とかカリブの英語圏やブラジルの曲など紹介しきれていませんし、ほんのイントロダクションです。
ブックレット本誌の最後には資料集WEB版として160曲の曲名・アーチスト名とリンクを貼ったものもありますので、ご参照頂けたらと思います。

ありがとうございました。
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posted by eLPop at 22:39 | 伊藤嘉章のカリブ熱中症

2024年はこれだった!プエルトリコ&ニューヨーク取材の音、UKの音、カリブの音

2025.01.01

【音楽】
■プエルトリコ〜ニューヨークの取材旅行(4−5月)

まずプエルトリコへ。久しぶりの現地で驚いたことがいくつか。
まずボンバ。従来はアフロ系のファミリーが継承する伝統的民族音楽だったものが2010年代頃から若い世代が、クラブやバーなどでクラブ感覚で楽しむようになってきた。従来なら伝統的衣装をまとうところ、新世代はTシャツにジーンズ。今はミュージシャンレベルに浸透し、レゲエ、ヒップホップ、ロック、ジャズなどの担い手が同時にボンバの奏者・踊り手・歌い手としても活動し、そこから新しい感覚の音が生まれていた。

その代表はエル・ラベリント・デル・ココ(El Laberinto del Coco)。2024年は全米の各地のフェスやイギリスでのワールドミュージックの祭典 WOMEXなどへの招待、今旬の音を取り上げる事で定評のあるNPR Tiny Deskへの出演など忙しい年だった。

El Laberinto del Coco: Tiny Desk

https://youtu.be/R2_7ADO2Hlo?si=ZMoWsEh4E__J_rqL

その他に驚いたのは、Amazon.usaなどにないCDが結構出てたこと。配信があるものないもの両方だが、配信があっても日本では情報ないし、Apple MusicやSpotifyのレコメンドにも出てこない。でも全米各地のPRコミュニティを通じてディストリビュートされている。ちょっと見えない音楽の伝播経路。

ニューヨークはジャズ場中心にチェック。ラテンはアルトゥーロ・オファリルもよかったが、キューバンのピアニスト、ファビアン・アルマザンが最高でした。(ジョナサン・ブレイク・クインテット)

Music Network presents Linda May Han Oh & Fabian Almazan

https://youtu.be/cMsgB2Wyld4?si=7Kjh7pRqnzOR0T0B


■UK関連
・年初に企画をもらって久しぶりにUKの音を50年代くらいから総ざらい。
ブルースからロック、プログレ、フォークやトラッド、遡ってケルト、パンク、英領カリブのカリプソからメント、スカ、ロックステディ、ラヴァーズ、レゲエ、ダブ、ガラージ、ジャングル、ダブステップ、グランジ、ベースミュージックいろいろ、英領アフリカ(ナイジェリア、南ア、ガーナ)
これが面白かったです。ヌバイア・ガルシアのダビーな部分とか。

で、ラテンと関係ないんですが、2024年にヴァーヴからデビューのUKのSSW、リアナ・フローレスにはけっこうやられました。父がイギリス人、母がブラジル人で、イギリスでボサノヴァとポップスで育ち、大学でブリティッシュ・トラッド&フォークやアメリカン・フォーク、ジャズに影響を受けた音はメロにブリティッシュ・トラッド感とブラジル感がクロス。

liana flores - Nightvisions

https://youtu.be/fj7BDOmcILo?si=VqSHSONNHQYlFjNJ

そして音は直接関係ないのになにかフローレスと同時代性や不思議なクロス感覚の共通項を感じるのは、ニューヨーク・ブルックリンで活動するメイ・シモネス。

Mei Semones - Wakare No Kotoba

https://youtu.be/4AxId-yl2_Q?si=R-FfvkrqL8DarkQh

父がアメリカ人、母が日本人という、彼女もクロスカルチャーの中で育ち音を作って来た。
二人共、とても軽やかな形でのかつその社会ではマイノリティの文化の組み合わせで育っているのが面白い。

【本】
2冊とも今まで書かれたり研究されたりしてきた歴史や哲学が、白人を軸に構築されて来たことのくびきから離れて「黒人」「カリブ」の視点から事象を見直す試み。かなり面白です。

『黒人理性批判』アシル・ムベンべ(講談社選書メチエ)

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私が諸島である カリブ海思想入門』中村達(書肆侃侃房)

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【ライヴ】
1 “El Laberinto del Coco” @ el Goyco, Puerto Rico, Apr.28,2024
プエルトリコのボンバ系アフロカリビアンビートなユニット。昨年は全米ツアー、UKのWOMEXやNPR Tiny desk招聘と多忙な人気。素晴らしいグルーヴと現代性にやられました。

https://www.facebook.com/1525748014/videos/pcb.10231656709310532/1004219757802262

2 NAKIBEMBE @代官山Unit, Aug.20, 2024
ウガンダのブソガ王国から初来日。21枚の音板の木琴エンバイレを6人で演奏。強烈なダイナミクスとうねり。これまたノックアウト。

https://www.facebook.com/1525748014/videos/pcb.10232542658178700/8145985632125801

3 JOE BATAAN @ハレマメ Sep.22, 2024
とにかく多幸感。こういうものを場から引き出せる人はほんといないと思う。

https://www.facebook.com/1525748014/videos/pcb.10232940908894719/3743410822583399

【インタビュー】
村上春樹さんにインタビューをした。新刊『デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界』という40-50年代のジャズ・レコードのジャケットを描いたイラストレーター、デヴィッド・ストーン・マーティンについて書いた本についてのインタビュー。
村上さんの「自分は小説を何から学んだかと言うと音楽。作品を書いて読み直すときいつもリズムの事を考えリズムが良くなるように書き直してる」と言っていたのが印象的。その他にも色々気づかされる言葉があって、2024年にやったインタビューの中でもかなり面白いものだった。

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https://books.bunshun.jp/ud/book/num/1639180900000000000B>
posted by eLPop at 01:54 | 伊藤嘉章のカリブ熱中症