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『2025年はこれだった:ライヴ&アルバム』(高橋政資)

2026.01.01

<ライヴ>
2025年中に体験したライヴから、印象深かったパフォーマンスを選んでみた。

大丸1️ Son Jarocho ソン・ハローチョのバンド(7月2日、メキシコのオアハカのお祭り、Guelaguetza ゲラゲッツァにて)
 夏に行ったオアハカ(メキシコの州)旅行の目的の一つが、メキシコ最大のお祭りと言われるゲラゲッツァ(Guelaguetza)だった。そこでは、多くのこの地域特有の音楽を聞くことができた。
逕サ蜒・Son Jarocho.jpg

中でもサン・アントニーノ村のゲラゲッツァでみたソン・ハローチョのバンドは、フレッシュでパンキッシュな演奏で、現在進行形のシーンを垣間みた感じがした。ちなみに、ソン・ハローチョは、オアハカの隣の州ベラクルスの音楽ですが、ゲラゲッツァでは近隣州の芸能〜音楽も演じられるようだ。

大丸1️ 中西レモン、ドーナツ・ディスコ・デラックス(7月31日、すみだ錦糸町河内音頭大盆踊りにて)
https://youtu.be/9G-dylmpJvU?si=QZScpBO7aDTmwYMQ
 江州音頭にラップ・ユニットをぶつけるという、とんがったサウンドを聴かせてくれたが、盆踊りのゆったりしたグルーヴは損なうことなく、踊り子さんを踊らせていたのが素晴らしかった。

大丸1️ Mahotella Queens マホテラ・クイーンズ(8月14日、六本木Schoolにて)
 南アフリカのンバクァンガの女性コーラス・グループ。
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1990年代には、日本のパルコのCMにも抜擢され来日もした、ワールド・ミュージックを代表する存在。「はこだて国際民俗芸術祭」参加に伴った東京公演は、直前に発表され驚いた。
逕サ蜒・Mahotella Queens_2.jpg

18年ぶりの新譜発売もグッド・タイミング。オリジナル・メンバー、ヒルダ・トゥバトラ(83歳)はまだ現役ということで、2度驚いた。当日、2人の若手のうちの1人が体調不良で参加できなくなるというアクシデントがあったが、心配をよそに2人でも申し分ないパフォーマンスを楽しませてくれた。

大丸1️ Lindigo Family ランディゴ・ファミリー(8月28日、Suykiyaki Itabashiにおけるパフォーマンス)
 フランスの海外県、レユニオン島のアフリカ、インド系の奴隷に起源を保つ伝統音楽マロヤを演奏するグループ、ランディゴのファミリー・バンド。ハチロクとコール・アンド・リスポンス、そしてダンスが一体化した、エキサイティングなパフォーマンスを披露してくれた。
逕サ蜒・Lindigo  Family.jpg

逕サ蜒・Lindigo  Family_2.jpg


大丸1️ Kelvis Ochoa ケルビス・オチョア(12月19日、ハバナのYarini Habanaにて)

 コロナを挟み8年ぶりに訪れたキューバのハバナ。以前と変わらないなと思うことも多かったが、想像以上にIT化が進んでいて、配車アプリLa Naveの便利さには驚いた。通信もWhatsAppを使えば、現地の人ともスマホから簡単に連絡が取れる。ライヴ・スポットも、個人が立ち上げたところが多くあり、多くがインスタグラムなどで予定が告知されるので、ライヴの予定も立てやすかった。

 そんな中、以前から生で聞いてみたいと思っていた、ケルビス・オチョアのライヴを体験することが出来た。
逕サ蜒・Kelvis Ochoa.jpg

ケルビスは、アーバンな曲作りが特徴的なSSWで、ソ連崩壊後のPeríodo especial(特別期間)真っ最中の1995年に、スペインのNubenegraレーベルから発売された新世代ヌエバ・トローバのオムニバズに参加したミュージシャン。多分今は、海外を拠点にしていると思われるので、とてもラッキーだった。オーディエンスは、ほぼキューバ人で、ヒット曲は皆で合唱。人気のほども感じることが出来た。

大丸1️ Yarima Blanco ヤリマ・ブランコ(12月22日、Cesar Jazz Clubにて)
 今回のキューバ旅行の目的の一つが、新しく開店したCésar Jazz Clubを訪れることだった。ここの女将Seikoは古くからの知り合いで、店を切り盛りする姿が頼もしい。店名にある通り、ジャズを主軸とするラインナップですが、ソンやボレロ、キューバン・サルサ系のブッキングもあり、キューバ旅行の折にはインスタグラムでチャックしていただきたいお店だ。

 ここでちょうどブッキングされていたのが、今ハバナのソン・シーンを引っ張ってるともいえる女性トレス奏者、ヤリマ・ブランコだった。
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彼女も今回の旅行で生をいてみたいと思っていた1人。近年キューバで定番化した「Chan Chan」なども演奏したが、なんといっても新旧ソンやパン・カリブ的な感覚を取り入れた、多彩なオリジナル曲が聴きのもだった。
逕サ蜒・Yarima Blanco_2.jpg

 ちなみに、ライヴ開始時間が大幅に遅れがちなキューバにあって、ほぼオンタイムで始まるこのお店は、旅行者にとって嬉しいし、他ではあまり見かけないラムも置いてあったり、食事もガッツリから軽いものまで美味しい。

<アルバム>
大丸1️ Omara Portuondo / Eternamente

OMARA PORTUONDO - Por eso yo soy cubana

https://youtu.be/vhP4zuxmvk8?si=RnhyFuWDThldY-gg


OMARA PORTUONDO, SILVIO RODRÍGUEZ - Demasiado


https://youtu.be/XTMIHX9jvTo?si=cijsJ-A4DZD3qkMS

 ステージ活動は引退表明した、キューバのオマーラ・ポルトゥポンド(95歳)ですが、2024年に録音したアルバムが、全く衰えを感じさせない歌声で驚愕してしまう。アルバム・プロデュースは、ロベルト・フォンセカで、シルビオ・ロドリーゲスやアンジェリック・キジョー、パブロ・ロペスなどゲストとデュエットしている曲も収録されている。


大丸1️ 大工哲弘 / タノール 時の声 謡の和(ディスクアカバナー ascd-2014)

やぐじゃーま節 / 大工哲弘

https://youtu.be/TBSwPzvo7LA?si=VO0pX7U6nvyfEvst
 沖縄石垣島出身の八重山民謡の唄者による、久々のアルバム。これまで以上に自然体の歌が、聞き手の耳にも心地よく、すぅーと入ってくる。

大丸1️ Kalahari ~ Dengu / BOOK & FIELD RECORDINGS CD by Naotaka Doi(Naotaka Doi KALAHARI-02)

Kalahari - Dengu

https://youtu.be/jqGj--QVs5s?si=HLNLHCMoQZA-_hpr

 土肥直隆氏が、1993年に、アフリカ南部のボツワナ共和国のカラハリ砂漠に古くから暮らしてきた狩猟採取民、ブッシュマンの音楽や生活をフィールド・レコーディングしたCDを付属した研究書、三部作の中の第2編「インストゥルメンタル編」。親指ピアノ「デング」を中心に臨場感たっぷりなすばらしい音質。

大丸1️ Banda Misteriosa / Las Oaxaqueños(2024年11月発売)

POPURRI OAXAQUEÑO - BANDA MISTERIOSA


https://youtu.be/BkncGQ8nF54?si=Ii6Y9Y9SI0vkjOTl

LA LLORONA - BANDA MISTERIOSA

https://youtu.be/JPlWQ7cfE1Q?si=pOjPfQt2-JnKZHoz

 夏のオアハカ(メキシコ)旅行のゲラゲッチャで体験したバンダ(ブラス・バンド)の音源を色々探していて、見つけたグループ。伝統的なメキシコのバンダが元々持っているアヴァンギャルドな面をより拡大し、突き抜けたサウンドを聴かせてくれる。

<その他>
今年から本格導入した、ハイレゾにも対応した音の良さで定評の配信サーヴィス、qobuz(コバズ)。そして、音源管理のRoon(ルーン)。この二つの組み合わせで、デジタル化したSP盤(78rpm)やシングル盤(45rpm)と配信音源がシームレスに楽しめるようになった。アナログを自身でデジタル化して楽しむユーザーには、とても便利、音楽の聴き方の幅を広げてくれた。

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https://www.qobuz.com/jp-ja/discover

スクリーンショット 2025-12-31 162337.png
https://roon.app/ja/

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posted by eLPop at 12:46 | 高橋政資のハッピー通信

オルランド・マラカ・バジェ、オルケスタ・アラゴン、ビルヒニア・グアンタナメラ他

2025.06.14

 今まで音質の悪さが気になって、サブスクの音楽配信は利用してこなかった。というのも、音質によって音楽の印象が変わってしまい、音楽制作者の意図が伝わってこない可能性が高いと思っていたからだ。それに、音が悪いと聞くのが疲れてしまう。そんなところ、ハイレゾまでカヴァーする音質にこだわった配信サーヴィスのQobuz(コバズ)が日本に正式上陸したので早速聴いてみると、CD音質もしくはそれ以上だったので、利用することにした。

 Qobuzは、ラテン〜ワールド系の音源も豊富で、日本のハイレゾ配信の先駆けe-onkyo musicを丸ごと受け継いでいる(e-onkyo musicは、昨年10月にサーヴィス終了)ので、e-onkyo musicが契約し配信していた、キューバ最大の音楽レーベルEGREM(エグレム)の音源も豊富なのも、今回Qobuzでサブスク配信を始めるきっかけとなった。

 長年CDの輸入、配給、製作、販売を生業としてきた身としては、最近CDで発売される音源が極端に減り、新作や復刻アナログ(LP、EP)の発売数が右肩上がりに増えていると、ひしひし感じる。それに、新発売されるLPは1枚もので5,000円以上。われわれの世代には、なんでその値段?と感じる価格。しかも、デジタルの原盤音源をアナログに刻むのは、音質的に意味があるの? アナログの音の良さを出すには、かなりマスタリング(音像全体の調整)に力を注ぎ込まないと無理なんじゃないかな? などと思ったりしてしまうのだ。

 新作CDが出回らない、新譜アナログも上記のような状況ということであれば、音質がよければアブスクも致し方ないと、いうわけである。まあ、サブスクによるミュージシャン、著作権者、レーベルなどの音源制作者への利益分配が極端に少ないという、プラットフォーマーによる新たな搾取構造は、今後も残り続けるという問題はあるわけだが…。

 今回は、初サブスク配信で知った、「こんなアルバム、音源が出ていたのね」というものを紹介したい。

*Qobuzで知ったものを紹介しますが、会員でなくても聞けるYouTubeのリンクを貼っておきます。気に入ったら、ぜひ音質の良い配信サーヴィスで聴いてみていただきたい。

まずは、キューバものから

Orlando "Maraca" Valle, Big Band / Mambisimo
アルバム『Flautas Gigantes』から



" target="_blank">https://youtu.be/r6xBuAZ95tw?si=fU6yMNvnElp-29jR

 日本でもお馴染み、イラケレに在籍していたこともあり、日本在住のペドロ&ルイス・バジェの兄弟、フルート奏者、マラカの2023年作。ビッグ・バンド・サウンドをフィーチャリングしたアルバムから。

Orlando "Maraca" Valle, Orquesta Aragón / Sabrosona
アルバム『Los 80: Homenaje a la Orquesta Aragón (En Vivo)』より



https://youtu.be/T6ABpXNT8Js?si=6j8Hz4X1_E5a9M9J

 同じくマラカが、名門オルケスタ・アラゴンの結成80周年を記念して企画したコンサートを納めた2000年のアルバム。この曲では、お兄さんのユムリもヴァーカルをとっている。


Orquesta Aragón / Con Un Besito Mi Amor (Audio Oficial)
アルバム『85 Años de la Orquesta Aragón』より



https://youtu.be/nkKeezlvzJs?si=Xt8SEmGRL_xE3Ubc

こちらは、オルケスタ・アラゴンの2024年作。このアルバム発表の少し前に、3代目ラファエル・ライ(Rafael Felipe Lay Bravo)が父親からリーダーを引き継ぎ、結成85周年にして新生アラゴンとしてスタートたばかり。アラゴン節はそのままに、やはりフレッシュなサウンドを聴かせている。


Virginia Guantanamera / A Guantánamo
アルバム『 A mi gusto y a mi aire』より



https://youtu.be/D0usH59rHtE?si=3c_adEowqqMhaXX2

キューバン・サルサ(コンテンポラリー・ソン)系では、女性歌手、ビルヒニア・グアンタナメラの2023年作に注目していただきたい。コンテンポラリー・ソン、ティンバ、トラディショナル系サウンドのミックス・バランスが素晴らしい。やはり近年のキューバの女性ミュージシャンの活躍には、目を離せない。


トラディショナル系ソンのグループもここ2年のうちに新作を発表している。ここでは、リンクしないが、検索して聴いていただきたい。

Septeto Naciónal Ignacio PIñeiro(セプテート・ナシオナル・イグナシオ・ピニャイロ)、Los Guanches(ロス・グアンチェス)、Septeto Sones De Oriente(セプテート・ソネス・デ・オリエンテ)、Pancho Amato(パンチョ・アマート)、Cotó y Ecos del Caribe(コト・イ・エコス・デル・カリベ)、El Nene(エル・ネネ)


Grupo Ashé / Dance Hall para Eshu
アルバム『Los Orishas en el Caribe』より



https://youtu.be/HHmZRCT2BJE?si=7lEOghuywJiQVo00

 今年になってアルバム・デビューした、若手アフロ・キューバン・ミクスチャー・グループ。経歴等は、まだ把握していないが、サンテリーアの音楽をレゲトン、クバトン、レゲエ、ダンスホール、アフロ・ビートなどに落とし込んでいくサウンド。いかにも現代っぽいアプローチだが、サンテリーア・サイドからクバトンのミュージシャン・サイドへの回答的な硬派なサウンドが面白い。1980年代のグルーポ・シンテシスの現代版ともいえそう。

 まだ、練りきれていない面もあるが、このアルバムの直前にも『Ires Iwaju』というアルバムを発表していて、かなり精力的、今後に期待したい。


キューバ以外も少しご紹介しよう。

Carmina Cannavino / Así de pronto se va
アルバム『Chabuca Íntima』より



https://youtu.be/-SWqQ8XFRN4?si=I5_SP4a6PEi4MAqb

 ペルーのチャブーカ・グランダのトリビュート・アルバム・シリーズの大3弾が、2023年に発売されていた。

 この曲を歌っているのは、ペルーのヌエバ・カンシオーンを代表する女性歌手で、音楽研究者、カルミーナ・カンナビーノ。若くからメキシコを拠点に活動。アルバムの発表の前年、チャブーカ・グランダの誕生100年祝うコンサートに出演したが、同年亡くなってしまった。


Natalia Lafourcade / Como Quisiera Quererte
アルバム『Cancionera』より



https://youtu.be/zQy0VM-tdUg?si=2T2vV8lLRPOGJ4hk

 そしてこちらは、メキシコの新伝統派ナタリア・ラフォルカデ最新作。取り上げた曲は、メキシコのS.S.W.エル・ダビ・アギラールとのデュエット。

 音質は、やはりQobuzの方が比べ物にならないほどいいが、YouTubeの方は全曲、物語仕立の映画クオリティの映像つきで、こちらもまた違った楽しみ方が出来る。しかし、ナタリア・ラフォルカデ絶好調ですね。

posted by eLPop at 01:32 | 高橋政資のハッピー通信

2024年はこれだった!サラ・ゴメス、革命する大地、La Banda El Recodo、NAKIBEMBE、JOE BATAAN

2024.12.31

 1月下旬に見た2本のキューバ映画『サンティアゴへ行こう』と『ある方法で』が、強く印象に残り、恥ずかしながらその時に初めて知った映画監督、サラ・ゴメス(Sara Gómez)のことを調べたり、彼女の他の作品を見たり、また、イヴェント『のりことドスリブのライブ&トーク』では彼女のことを紹介したりしてきた。もちろん彼女の作品群は、今年(2024年)発表されたものではないが、個人的に今年最も印象に残ったキューバ関連の作品ということで、ご紹介したいと思う。

Sara Gomez_1920x847.jpg

 サラ・ゴメスは、1942年11月7日ハバナ、グアナバコアに生まれ1974年6月2日ハバナで没した、夭折の女性映画監督。ジャーナリストとして働いた後、1961年8月に、ICAIC(Instituto Cubano del Arte e Industria Cinematográficos1959年3月にキューバ政府によって設立)で働き始め、助監督を経てドキュメンタリー映画制作のキャリアをスタートさせた。キューバ初の女性映画監督だそうだ。

 1974年の映画『ある方法で』は、サラ・ゴメス初の長編フィクションにして遺作となってしまった作品。

Cuban Movie: De Cierta Manera

https://youtu.be/EBuy6iaIANU?si=BF-FDI1XLW5wkX_h

ドキュメンタリーとドラマを組み合わせた構成で製作され、当時の人たちが革命による社会変化に、一喜一憂しながら生活する姿がより鮮明に描かれている。また、後に革命政府が修正することになる問題(差別問題や宗教問題など)なども先取りして描いていて、監督の洞察力も素晴らしい。また、キューバ音楽ファンなら、ニャーニィゴ(アバクア)の儀式シーンとその歴史的な話やサンテリーアのシーンなど、見逃せないシーンも多い。

 『サンティアゴへ行こう』は、1964年に制作された彼女の初めてのドキュメンタリー。

Iré a Santiago

https://youtu.be/zLwrb1IGiQs?si=aduaBF5qCoVSiECf

サンティアーゴ・デ・クーバの観光アピールのために作られたのだが、トゥンバ・フランセサやハイチ起源のガガー(ハイチではララー)など、やはりキューバ音楽ファンには、嬉しいシーンが多い。

 サラ・ゴメスの映画には、音楽のシーンが必ずと入っていいほど使われている。それもそのはずで、ハバナ音楽院で6年間音楽を学んだということだ。そんな彼女が、キューバ音楽を真正面から紹介したのが、1967年に制作された『...Y tenemos sabor』だ。

Y Tenemos Sabor

https://www.youtube.com/watch?v=Of9mwzLhB8o

(最後の5分は、サラ・ゴメスとは関係ない他のドキュメンタリーが収録されているので了承ください)
ミュージシャンで研究者のアルベルト・サヤス(Alberto Zayas)がナビゲーターとなって、様々なキューバ音楽を紹介していく。

トロバドールたちの演奏、初期形態のボンゴの説明、チャングイのグループの演奏、コンフント・ティピコ・アバネールによるマリンブラ、ボティーハ、キハーダを使ったソンの演奏、コンフント・エストレージャス・クバーナスのチャランガ演奏、ルンバ・グループ、コンフント・クラベ・イ・グアグアンコーの演奏、サンティアーゴ・デ・クーバのコンガ・グループの演奏、そしてラストには、チューチョ・バルデースのグループをバックに歌うグアパチャのかっこいいスキャット・ヴォーカルまで収録されている。

 サラ・ゴメスへの評価の遍歴や研究などは、ネットで多く見受けられる。キューバ政府や社会の変遷と合わせて考えてみると、興味深い。興味ある方は、調べてみることをお勧めする。


 映画では、3月に見たペルーのゴンサロ・ベナべンテ・セコ監督に『革命する大地』が、素晴らしかった。

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1968年に無血クーデターで政権を握ったフアン・ベラスコ・アルバラード大統領率いる、いわゆる軍部革命政権によって1969年に公布された、農地改革法。ペルー国内でも賛否が分かれるこの大統領の政策を、当時の映像を使って再考する。農地改革という、中南米カリブの永遠の問題を再認識してくれる映画。


 ライヴも多く体験したが、下記3つが強く印象に残った。

「La Banda El Recodo」

https://youtu.be/3zOz8A0sst0?si=hFP958YWqdE0kdVH

5月に開催された「ラテンアメリカへの道 フェスティバル」@お台場で、まさかのメキシコのバンダ体験。しかも、今年結成86年というメキシコ随一のバンダが、見られるとは。

「NAKIBEMBE」

NAKIBEMBE.jpg

8月に代官山UNITで見た、ウガンダの巨大木琴エンバイレを6人で演奏するグループ、ナキベンベ。ポリリズムと重低音の響きに圧倒。こんな知らない音世界があったことと、現地に行っても簡単には体験することができないであろうパフォーマンスを、日本で見られたことにも感謝。2025年にも再来日が予定されているようだ。

「JOE BATAAN」

JOE BATAAN.jpg

9月に、代官山晴豆で見たジョー・バターン。82歳とは思えないステージだったが、そんな歳とかは関係なく、聞くもの全てが納得してしまう楽しさを醸し出していて、その場にいるだけで多幸感に包まれるコンサートだった。一昨年のシマファンクも、同じような感覚になったことも思い出した。

posted by eLPop at 13:01 | 高橋政資のハッピー通信

キューバの吟遊詩人:シンガー・ソングライターの系譜=トローバとデシマ

2024.12.12

 個人的にまず思い浮かぶ吟遊詩人のイメージというと、中世ヨーロッパで詩曲をつくり各地に歌い伝えた人たちだろう。さらには、中近東やアジアにも同様な人たちがいたし、現代ではラッパーだけでなくポピュラー音楽の歌手たちも、その時代の民衆の声を代弁しているとすると、吟遊詩人だと言えるかもしれない。しかしそう考えてくと、対象があまりにも広範囲になってしまう。なので今回は、人が実際に移動し、“うた”を伝えたキューバの人たちに絞ってご紹介しようと思う。

Quinteto de Trovadores Santiagueros.jpg
(Quinteto de Trovadores Santiagueros)

 キューバには、19世紀半ばぐらいから「トローバ Trova」という音楽ジャンルがあり、そのミュージシャンたちを「トロバドール(ラ)Trovador(a)」と呼んでいる。フランス、イタリア、スペインなどで、吟遊詩人を示す言葉のスペイン語版がそのまま使われているわけだが、この呼称は1970年代につけられたものである。この辺りのことは、後ほど説明するこにとして、まずは成り立ちをご説明しよう。

 キューバは1902年、U.S.A.の保護国という条件付きながら、スペインからの独立を果たした。そして、独立国として常設軍を設立し、それに伴って兵士や物資の移動などに関わる人たちが、大幅に増えることになった。アフリカ系の人たちも1886年の奴隷制廃止により、職を求めて移動する人が増えた。もっとも奴隷制廃止以前から、自由黒人となったひとたちがかなりいたらしいが。

 カリブ海は音楽が盛んな地域だが、キューバも東部のサンティアーゴ・デ・クーバや中部のサンクティ・スピリトゥス、西部のピナール・デル・リオなどの地方都市や山岳部には、アマチュアとして作詞作曲をし、主にギターを演奏し歌う人たちが大勢いて、サロンや集会所などで音楽を楽しみ、才能ある人は、集まりの指導的役割を担っていた。そんな中から主に、経済発展目覚ましい首都ハバナにやってきて音楽を生業にしようとする人たちが現れた。彼らが、後に「トロバドール(ラ)」と呼ばれるようになった人たちだった。

Sindo Garay.jpg
(Sindo Garay)

 中でも、サンティアーゴ・デ・クーバ出身のシンド・ガライは、ハバナにあったサロン、特に「カフェ・ビスタ・アレグレ Café Vista Alegre 」に出入りし、そこにたむろしていた文化人やブルジョアたちの前で演奏、ギャラをもらい生活していた。アマチュアだったトロバドールで最初にプロになった人だと言われている。地方で育んできた詩曲を他の都市に持ち込み、門付芸的に披露して生計を立てる。まさに吟遊詩人といえるだろう。

シンド・ガライは多くの曲を残したが、放浪癖があったのか、サーカス団に参加してカリブや中南米を回ったり、長期の音楽一座の巡業に加わったりヨーロッパなどを回ったりしていたため、その作品数(600曲以上とも言われている)に比べて録音数は少なく、今でも聴ける音源はあまりない。しかし、多くのミュージシャンが彼の作品を取り上げた。

 まずは、マタンサス出身のトロバドールであるマヌエル・ルナとホセ・カスティージョのデュオの演奏を聴いていただきたい。

Yo soy Liborio / José Castillo ; Manuel Luna


 続いて、フアン・デ・ラ・クルースとビエンベニード・レオンという、やはりトロバドールたちのデュオの演奏をどうぞ。
ちなみに、原盤のSP盤は縦振動のエディソン・ディスクなので、一般的な横振動盤に比べ収録時間が長く4分前後ある。

Retorna vida mía / Juan De la Cruz ; Bienvenido León
https://adp.library.ucsb.edu/index.php/matrix/detail/2000156735/9753-Retorna_vida_ma

さらに、フローロ・イ・クルースによる演奏

Tristes recuerdos / Floro y Cruz


 これらの演奏者は、皆トロバドールの範疇に入る人たちで、マヌエル・ルナは、やはりカフェ・ビスタ・アレグレに出入りしていたし、「エル・マニセーロ(南京豆売り)」の歌唱でルンバ・ブールを巻き越したアントニオ・マチンらとグループを組んだりしていた人。フアン・デ・ラ・クルースとビエンベニード・レオンは共に、後に、ソンの形式を完成させたセプテート・ナシオナルのオリジナル・メンバーになった。フローロ(Floro Zorrilla)・イ・クルース(Juan Cruz)は、130曲以上の録音を残した、人気デュオだった。

 このように、トロバドールたちからは、のちにキューバを代表する音楽ジャンルとなった“ソン”や“ルンバ”の成立に関わった人たちが多く輩出した。

 また同じ時期に、「アルハンブラ劇場 Teatro Alhambra」を代表とするヴァナキュラー劇場で活躍したミュージシャンたちにも、作品を取り上げられている。

「アルハンブラ劇場」を代表する俳優兼歌手、アドルフォ・コロンボ Adolfo Colomboとレヒーナ・ロペス Regino Lópezのデュオ。

幕間のちょっとした掛け合いから録音されている。ここでのギター演奏は、シンド・ガライだと思われる。
取り上げられた曲は、シンド・ガライの代表曲である。

La Guarina / Regino y Colombo


 シンドだけでなく、トロバドール(ラ)の多くは、楽譜の読み書きができなかったので、多くの作品が記録されないまま忘れ去られたが、「アルハンブラ劇場」の音楽ディレクター、ホルヘ・アンケルマン Jorge Anckermannをはじめ、ヴァナキュラー劇場の音楽家たちが楽譜にしたり、作品を取り上げ、また場合によっては優れたギタリストを伴奏に抜擢したりし、作品を後世に残す手助けをした。アマチュア・ミュージシャンとクラシックを正式に勉強したプロのミュージシャンとの交流が、旧大陸やアフリカとは違ったキューバ独自の音楽を育むことになったとも言えるだろう。

 歌われた内容は、当時の世相や社会批判も当然多かったが、キューバ独立に関わる内容を歌ったものがあったので、聴いていただきたい。

 先に紹介した、フアン・デ・ラ・クルースとビエンベニード・レオンのデュオのエディソン・ディスクのA面に収録されている。

Maceo y Martí / Juan De la Cruz ; Bienvenido León
https://adp.library.ucsb.edu/index.php/matrix/detail/2000156732/9750-Maceo_y_Mart

第一次キューバ独立戦争の英雄で、アフリカ系のアントニオ・マセオ将軍とキュー独立の革命家で文筆家で独立の父と言われるホセ・マルティを歌ったもの。作者のフリオ・サビン Julio Savinについては、残念ながら何もわからなかった。

 おまけで、1960年前後にロランド・ラセリエ Rolando La'serie が録音した、フィデル・カストロを称えた曲をピック・アップしておこうう。

FIDEL YA LLEGÓ - Rolando La Serie

https://youtu.be/kjkEHK6OL08?si=vpU5ITQRUnmTE_I1

ただし、ロランド・ラセリエは、その後キューバを離れ、メキシコ、U.S.A.に移り住んで活動した。


 先に述べたように、彼らが活躍した時代にはトローバ、トロバドール(ラ)という名称は無かった。そう呼ばれるようになったのは、1970年前後に興った「ヌエバ・トローバ Nueva Trova」のムーブメントからだった。ヌエバ・トローバ とは、文字通り“新しいうた”の運動で、キューバ革命から13年が経ち、その革命で変革した社会を功罪含め歌い、また同時期アルゼンチンやチリなどを中心に中南米カリブで起こった社会派シンガーソングライターのムーヴメント「ヌエバ・カンシオン Nueva Canción」とも連帯をしながら活動をした。

 シルビオ・ロドリーゲス、パブロ・ミラネース、サラ・ゴンサーレス、ノエル・ニコラらのスターが活躍した。そんな彼らが、精神的支柱としたのが、19世紀半ばから1930年代ごろまで活躍した、マチュアのシンガー・ソングライターたちで、彼らのことを吟遊詩人に掛け合わせトロバドール(ラ)と呼び、その音楽をトローバといい、自分たちの音楽を「新しいトローバ」と呼んだのだった。自分たちこそが、キューバのシンガー・ソングライターの系譜につながるのだと主張したわけである。

 YouTubeに、1968年に101歳で亡くなったシンド・ガライに捧げた映像が挙がっていたので、リンクを貼っておこう。制作は、ICAIC。

 後半に、若きシルビオ・ロドリゲスが弾き語っている。
Muerte de Sindo Garay. Tributo. Imágenes de Sindo. Noticiero ICAIC No. 416 Año 1968


https://youtu.be/BD1lOcDEKWo?si=ScxULnc0TlRQH1Im

 そのシルビオ・ロドリーゲスと並ぶヌエバ・トローバの巨匠パブロ・ミラネースは、キューバでも盛んな“ラップ”を、その批判精神を、ヌエバ・トローバのそれと同質なものとして評価していたらしい。その後の“レゲトン”や“クバトン”なども含め、キューバのシンガー・ソングライターの系譜の新しい形と捉えているということだろう。キューバの“ラップ”〜“クバトン”にも注目しなくては!

 最後に、トローバ、ヌエバ・トローバ、キューバン・ラップ、レゲトン〜クバトンにも貫かれている、韻について少しだけ。

 キューバでは、「クアルテタ Cuarteta =4行詩」が盛んで上記のジャンルなどでも盛んに使われているようだ。形式は、ABAB。ただ、キューバをはじめ、中南米カリブで伝統的に楽しまれているのは、やはり「デシマ Decima=10行詩」だろう。ABBAACCDDCというなんとも複雑な詩形だが、これを盛り込んで即興で歌い上げるという、なんともすごいものだ。

キューバでは、「プント Punto(クバーノ)」という農村地区の主に白人の小作人の人々が演奏、楽しんできた。もともとは、スペインのアンダルシア地方から、西サハラ〜モロッコの大西洋沖に浮かぶスペイン領であるカナリア諸島に移り住んだ人々が発展させたものらしい。そして、時のスペイン政府が新大陸を開拓させるために貧しい小作人を送り込む事業で、多くのカナリア諸島に定住していた農民が新大陸に移住、デシマも新天地でさらに発展した。ちなみに、クアルテタもデシマも基本は、1行8音節。

 デシマはもともと、スペイン本国で16~17世紀に活躍した詩人で音楽家のビセンテ・エスピネル Vicente Espinelが創ったものらしいが、その複雑さからかスペイン国内では廃れてしまったようだ。それを、貧しい農民たちが発展させ、新大陸まで伝えたということだ。キューバの“ プント”には、大きく分け「プント・リブレ Punto Libre」と「プント・フィホ Punto Fijo」があり、さらにトナーダ Tonada、セギディージャ Seguidillaなどがあるが、なんといっても特徴的なのは、コントロベルシア Controversiaだろう。2人の歌手が、デシマで韻を踏みながら即興で対決するというもの。その最大のスターが、フスト・ベガ Justo Vegaとアドルフォ・アルフォンソ Adolfo Alfonsoだ。

CONTROVERSIA CAMPESINA ENTRE JUSTO VEGA Y ADOLFO ALFONSO

https://youtu.be/HzKUsFk6gI8?si=leX3NI9aEAjpQJ4m
まさに、ラップ・バトルと同じだ。

 1962年10月から始まった、キューバの人気テレビ番組「パルマス・イ・カニャス Palmas y Cañas」(毎週日曜日の夜7時から8時に放送)によってプント・クバーノは、全国で楽しまれるようになった。上記の映像もこの番組から採られたものだろう。そして、2017 年には、ユネスコの世界文化遺産に選出された。


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http://elpop.jp/article/191144018.html


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ハイチ革命の世界史〜奴隷たちがきりひらいた近代〜

2024.02.27

ハイチ革命の世界史〜奴隷たちがきりひらいた近代〜
浜 忠雄 著 岩波新書 2023/8/18 刊

ハイチ革命の世界史.jpg

 最近、音楽好きの間でハイチへの関心が高まっているようだ。古くからカリブ音楽やワールド・ミュージックを聞いてきた日本のリスナーには、コンパやララー、トゥオバドゥなどのハイチ音楽は、定番の一つだった。しかし独特なグルーヴを出すのが難しく、ハイチ音楽を演奏するグループは、これまではほぼいなかった。それが最近、それらを演奏するアマチュア・グループも複数出現し、より幅広くハイチ音楽が親しまれるようになって来た。また、キューバ音楽やジャズなどの成立に、ハイチが深く関わりがあることは、この辺りの音楽ファンにはもう周知されているので、そこからハイチに興味を持つ方も増えているように思われる。

 そんな折、ハイチの辿ってきた歴史と現状に多角的にスポットを当てた書籍が、昨年発売された。歴史学者である筆者の浜 忠雄氏は、フランス革命を研究する過程でハイチ革命(1791〜1804)との関連や、その後のフランス史に及ぼす影響をなどを調べ、徐々にフランス史からハイチ(革命)史に研究対象をシフトしていったという。それが、1970年代半ばだそうだ。当時、世界史の研究において「忘れられた革命」とされ、ほとんど触れられることがなかったハイチ革命の重要性が取り上げられるようになったのは、ここ20年ほど前からだという。そんな筆者のハイチ革命への眼差しから、世界史を見直してみようというのが、本書だ。学者の書いた研究書という面はあるが、我々のような一般人でもとても読みやすいので、是非皆さん手に取っていただきたい。

 フランス革命の英雄、ナポレオンがハイチへ出兵し、奴隷解放を取下げたりしたことはご存知の方も多いと思うが、世界初の黒人共和国を承認するためにとったフランスの非道な政策が今でも両国で争われていること、フランスの後に行われた“いつもながら”のU.S.A.の侵略が、オバマ政権時にハイチ地震の支援という形をかりて近年まで続いていること、さらにハイチ革命と同時代に英雄と言われた人たち、(U.S.A.で奴隷制を廃止した)リンカーンや(南米の独立を推進した)シモン・ボリバルなどが、ハイチ革命に対して示した態度など、私にとっては「そうだったのか」という初めて知る真実も多く、とても勉強になった。そこから、さらにヨーロッパやU.S.A.の哲学史や歴史まで考察して、まさに副題の「奴隷たちがきりひらいた近代」を提示してくれる。


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