Top > Calle eLPop

◆3/10 eLPop Party 長嶺修のかけた曲

2015.04.11

1. おやすみネグリータ Drume Negrita/ジョージ・シアリング・クインテット George Shearing Quintet (1955年 USA)LP『Shearing in Hi Fi』(MGM Records E3293)

1919年イギリス生まれの著名ジャズ・ピアニスト、ジョージ・シアリングは50年代から60年代にかけて、ラテン・リズムを好んで導入した。50年代半ばの本作は、トゥーツ・シールマンスやカル・ジェイダーらとのクインテットによる、ラテンのリズム・セクションをクレジットに欠いた録音だが、エルネスト・グレネー作のキューバ名曲「おやすみネグリータ」で、後にサンタナでも活躍するキューバ人名パーカッショニスト、アルマンド・ペラーサをしっかりフィーチャーしている。

2. キャラバン Caravan / カンディド Candido(1960年 USA)LP『In Indigo』(ABC-Paramount ABCS-236)

ジャズとアフロ・キューバンを結びつける橋渡し役の一人となった、モンゴ・サンタマリアやアルマンド・ペラーサらと同世代のキューバ人パーカッショニスト。70年代にはブルーノートやサルソウルからもリーダー作を発表しているが、これは60年のアルバム。スペインのフレッシュ・サウンド(56年作『Featuring Al Cohn』との2 in 1)などからCD復刻もされている。押し出しの強いパーカッションに、ディック・ハイマンのクレージーなオルガンが相まって“シナジー効果”を発揮する、B級アクション的「キャラバン」。

3. アケージャス・ガビオタス Aquellas Gaviotas / エミリアーノ・サルバドール・イ・ス・グルーポ Emiliano Salvador y su Grupo(1980年代 Cuba)LP『Emiliano Salvador y su Grupo』(Areito/EGREM LD-4240)

セロニアス・モンクやセシル・テイラーに関心を寄せたというピアニストのエミリアーノ・サルバドールは、イラケレの主チューチョ・バルデースと共に、キューバン・ジャズのコンテンポラリー化を先導したパイオニアだ。92年に若くして亡くなっているが、その影響力は現在も変わることなく、チルドレンを生み出している。サックスのホセ・カルロス・アコスタ、ベースのフェリシアーノ・アランゴ、ドラムス/ティンバレスのエミリオ・デル・モンテ、パーカッションのロドルフォ・バルデース・テリーと組んだ自身のグループでの80年代半ば頃と思われる録音から、スピード感あるスリリングな展開のホセ・カルロス・アコスタによるオリジナル。

naggie.jpg
posted by eLPop at 13:35 | Calle eLPop

◆3/10 eLPop Party 石橋純のかけた曲

2015.03.31

1.「俺のタンボレラ」 Mi tamborera/グアコ Guaco(1973年録音、ベネズエラ)LP《GUACO》

ベネズエラ西部スリア地方の民衆音楽ガイタの学生楽団として1960年に結成されたグアコ。60年代末からガイタ革新の道を志す。それはNYのアフロ・キューバン音楽が「サルサ」へと展開する時代と軌を一にしていた。以来半世紀にわたってグアコは、カリブ音楽の最先端/ベネズエラン・サルサを開拓してきた。タンボレラとは、アフロ色の強い伝統音楽ガイタ・デ・タンボーラとサルサを融合した新スタイル。この曲は1980年代初頭までグアコの座付ソングライター兼バンマスだったリカルド・エルナンデスの詩曲。1990年に再録されている。
https://www.youtube.com/watch?v=RGtzg8UgF_0

2. 「バッグパッカー猫」El gato enmochilado/フルヘンシオ・アキノFulgencio Aquino(ハープ)&トゥルピアル・ミランディーノEl Turpial Mirandino(歌、マラカス)(1982年録音、ベネズエラ)LP《Golpe Tuyero Vol.02》


ベネズエラのハープは平原地方のアルパ・ジャネラ(ナイロン32弦)が有名。もう一種のアルパ・トゥジェラ(34弦。上13弦がスチール。他はナイロン)は国外はもちろん、ベネズエラでも広くは知られてはいない。その究極のアンサンブルはアルパ一挺、マラカス兼歌手の2重奏。カラカス近郊のミランダ州からアラグア州にかけて分布するホローポ・トゥジェロを演奏する。首都近郊の田舎だけに、そのイナタさは、平原地方よりものすごい。このアルパ・トゥジェラこそはラ米唯一のアフロ系アルパ音楽だと私は考えている。「黒い」アルパが奏でる粘り腰のスウィングを、多くのリスナーに楽しんでいただきたい。

3. 「つるはしとスコップ」Pico y pala/エビオ・ディ=マルソ&アドレナリーナ・カリベ Evio di Marzo y su Adrenalina Caribe (1982年録音、ベネズエラ)LP《Pico y pala》

鬼才シンガーソングライター、エビオ・ディ=マルソが率いるアーバン・ラテン・フュージョン・バンドがアドレナリーナ・カリベだ。「つるはしとスコップ」は、ブラックユーモアとデスカルガ精神そして反抗のエネルギーに満ち溢れたデビュー・アルバム。以後1990年代録音まで、4枚のアルバムを残した。30年以上たった今聴いても古さを感じさせないのは、その間、世界のどこにもこれと似たバンドが出現しなかったからだろうか。グアコがもっとも影響をうけたアーティストのひとつとしてリスペクトしてやまない存在だった。実際、カルロス・プッチ(bs)、ネストル・ペレス(perc)らは、グアコに引きぬかれ、80年代グアコ・サウンドの要となった。ヴァイオリンは、のちにソロ歌手となるセルヒオ・ペレスが弾いている。
http://sincopa.com/latin_pop/cdinfo_latin/adrenalina_1pico.htm

ishibashi.jpg
posted by eLPop at 01:03 | Calle eLPop

◆3/10 eLPop Party 伊藤嘉章のかけた曲

2015.03.19

今回は「歌」にこだわるプエルトリコに「クール」と「ホット」のキーワードを置いて選曲。

1. ピエル・カネーラ Piel Canela/ティト・ロドリゲス Tito Rodriguez (1955年、プエルトリコ/ニューヨーク) LP "Mambo Maddness"(Tico LP1004)

1923年プエルトリコのサン・ファン 生まれ。30-40年代のボレロの甘さとボヘミアなクールさ、ニューヨークならではのスピード感がティト・ロドリゲスのマンボ時代の人気を決定づけた。ヴェルヴェット・ボイスの彼をお手本とした歌い手は数知れず、彼にあこがれバンド・ボーイとなりチャンスを得たチェオ・フェリシアーノからヒルベルト・サンタ・ロサへと系譜は続く。ボビー・カポ作のヒット曲のチャチャチャはニューヨークらしく、彼ならではの抑制が絶妙。

2. ソブレ・ウナ・トゥンバ・ウナ・ルンバ Sobre Una Tumba Una Rumba/ パキート・グスマン Paquito Guzman (1981年 、プエルトリコ)LP"Gran Senor" (TH 366)

ティト・ロドリゲスより一回り若いパキート・グスマンはサンファン生まれ。ジョー・キハーノやマリオ・オルティス楽団を経て、トミー・オリベンシア、そしてソロ活動も挟みつつ現在もオリベンシア楽団などで活躍している。河村要助さんは「心の湖に小石を投げる紳士」という素晴らしい表現をされているが、聴き手に言いようのない不安感と切迫感の種を生み出す熱情が最大の魅力。

「クール」なプエルトリコの歌い手の魅力の一方、「ホット」さの方には、「歌い切ってしまう」感覚と言うか、身体に迫ってくる圧迫感というか共通したものがあるように思う。アンディ・モンタニェスの強い歌声、マーク・アンソニーのこめかみの血管が切れそうな切迫感とか、ある種”暑苦しさ”でもある。これが哀感を伴うボレロでは決定的な凶器になるのだ。

3. アマダ・ミア Amada Mia /チェオ・フェリシアーノ Chao Feliciano (プエルトリコ/ニューヨーク、1980年) LP"Sentimiento, tu.." (Vaya 0798)

3人目は再び「クール」に。1935年にプエルトリコのポンセに生まれのチェオ。昨年亡くなった時に追悼を書いたので、バイオなどは http://elpop.jp/article/96601941.html をご覧ください。ルベン・ブラデスから最近の若手までチェオは影響を及ぼしている。


◆おまけ:eLPopメンバーが一通りかけ終わってのフリータイムにかけた曲。

4. ペルフメ・デ・ロサ Perfume de Rosa /コルティーホ・イ・ス・コンボ Cortijo y su Combo (プエルトリコ) LP "Bueno, y Que..? (Gema)

プエルトリコの歌い手をかけるなら落とすわけにいかないイスマエル・リベラ。強烈なスィング感。「熱い」が「暑く」はないやわらかさやしなやかさが「ソネロ・マジョール Sonero Mayor」と称されるゆえん。

5. ア・ロス・ムチャチョス・デ・ベレン A los muchachos de Belen /ペジン・ロドリゲス Pellin Rodriguez (1976年、プエルトリコ) (LP “Aventurera” Borinquen ADG

最後にかけたペジン・ロドリゲス は、言うまでもなくエル・グラン・コンボでアンディ・モンタニェスと共にフロントを張った、ボレロを歌わせたら天下一品の歌い手。やはり「歌いきる」ような強力な歌い方。「暑い」方に入れたい。

ティト・ロドリゲスより3つ若いがほぼ同世代。やはりサンファンの生まれで、コンフント・モデルナやモンチョ・ウセラ楽団からノロ・モラレス、ザビア・クガート、ホセ・クルベロの楽団などティトと同様のキャリアを通り、ティト・プエンテ楽団を経てグラン・コンボに。ボレロ集のコンピはいまだに島の定番。

無題3.jpg
posted by eLPop at 00:12 | Calle eLPop

◆3/10 eLPop Party 高橋政資のかけた曲

2015.03.18

1. パチート・エチェ Pachito E'Che - mambo/ベニー・モレー&ペレス・プラード Beny Moré con Pérez Prado y su Orq.(1948〜49年、キューバ。メキシコ録音)10inch "Bonito y Sabroso"(RCA VICTOR MKL-3028)

キューバの永遠のアイドル歌手ベニー・モレーは、トリオ・マタモロスに誘われメキシコに渡り彼らと仕事をしたが、彼らがキューバに帰国するとき、1人メキシコに残った。そこで、やはりキューバから渡ってきていたマンボ王ペレス・プラードと知り合い、20曲以上一緒に録音した。その録音のなかの一つ。モレーの若々しくも色気のある声、プラード楽団の切れ味鋭くハイ・トーンが素晴らしいブラス、そしてプラードのトリッキーで唯一無二なピアノ・ソロ。彼らのアンサンブルの最良のものが聞ける録音だと思う。この曲は、コロンビアのアレクス・トバール作のポロだが、モレーとプラードがマンボに編曲。レコードの形式明記もマンボとなっている。


2. エス・ウナ・ボンバ Es una Bomba - rock/ラ・ルーペ La Lupe con la Orq. F. Dulzaides(1960年前後、キューバ)EP RCA VICTOR 45-116

サルサ・ファンには、ティト・プエンテとの共演盤で有名な、キューバ出身の女性歌手ラ・ルーペ。“Queen of Latin Soul(ラテン・ソウルの女王)”なんていうニックネームで呼ばれていたように、ダイナマイト系のシャウトするヴォーカル・スタイルが特徴。当時のロックンロール、ロックやソウルのスタイルを取り入れたサウンドで本格的な人気が出のはプエルトリコやニューヨークに渡ってからだったが、本録音は数少ないハズのキューバ録音。バックは、キューバでジャズをいち早く演奏した1人フェリペ・ドゥルサイーデ編曲のオーケストラ。曲形式は“ロック”。1960年に、他のキューバ録音12曲と共に『Con El Diablo En El Cuerpo』というアルバムにまとめられ、発売されている。ロック、ソウル歌手として天性のものを持っていたことがよくわかる名演だと思う。


3. ソン・デ・トーニョ Son de Toño - cumbia/ロス・ガイテイロス・デ・サン・ハシント Los Gaiteros de San Jacinto(コロンビア)LP "Hacha, Machete y Garabato"(CBS DCA-841)より

コロンビアの北部、カリブ海に面したボリバール県の少し内陸部にあるサン・ハシントを名に冠したグループ、ロス・ガイテイロス・デ・サン・ハシント。1940年代半ばに結成されたグループで、ガイタと呼ばれる長さ1メートルぐらいの縦笛と太鼓類にコール・アンド・リスポンスのヴォーカルにより構成されるアフロ色濃厚なクンビアの古いスタイルやポロ、プーヤなどを奏でる。2007年にU.S.A.のスミソニアン・フォークウェイズからアルバムを発表し、同年のラテン・グラミーのフォークロリック部門を受賞し注目をされた。最近ではクラブ系からのオファーに答え、ダブなどと合わせた録音も発売されたりしているらしい。本録音収録のアルバムは、たぶん1970~80年代に録音されたものだと思われ、オリジナル特有なヴァイタリティに溢れた演奏が素晴らしい。


4. イ・ジョ・ノ・キエロ Y Yo no Quiero - guaguancó/ファクンド・リベーロ・イ・ス・クアルテート、カンタ:セレステ・メンドーサ Facundo Rivero y su Cuarteto Canta: Celeste Mendoza(1957年?、キューバ)EP RCA VICTOR 51-7284

当日、この曲の前に佐藤編集長が掛けたブラジルの揺れのリズムに対し、キューバのリズムは「タイトさが命」ということで、ルンバ・グアグアンコーのナンバーをご紹介。とはいっても、ムニェキートスなどお馴染みのグループでは能がないので、プレ・フィーリンの隠れた名手ファクンド・リベーロのグループによるものを選曲。ファクンド・リベーロは、ベリサリオ・ロペス(Belisario López)のチャランガ・バンドなどでの活躍後、ロス・リベーロというモダーンなキューバン・コーラス・グループもプロデュースし、フィーリンの先駆けとなるような録音も残しているピアニスト。この録音はたぶんロス・リベーロと名乗る前のもので、後年のロカ・バラードに寄った音楽性ではなく、グアグアンコーにジャズ的なコーラスを掛け合わせた、ファクンド・リベーロ特有のモダーンさが面白い。ヴォーカルは、“ラ・レイナ・デル・グアグアンコー(グアグアンコーの女王)”の異名を持つセレステ・メンドーサ。


5. マリア・カラコーレス Maíra Caracoles/ページョ・エル・アフロカン Pello el Afrokán(196?年、キューバ)LP "Mozambique a Bordo"(EGREM LD-3187)より

キューバのカーニヴァル音楽コンガ〜コンパルサをもとに1963年にページョ・エル・アフロカンが創った新リズム、モサンビーケ。革命後のキューバのお祭り気分、民衆の高揚とマッチし大ヒット。さらにキューバ以外にも伝播し、1965年にはエディ・パルミエリが、このリズムをアルバム『Mambo Con Conga is Mozambique』で取り上げた(音楽的には少し変えて取り入れたらしい)。さらに、大ヒット曲の本「マリア・カラコーレス」は、カルロス・サンタナが1976年のアルバム『Festival』で取り上げている。

無題2.jpg
posted by eLPop at 00:16 | Calle eLPop

◆3/10 eLPop Party 宮田信のかけた曲

2015.03.17

1. エリナー・リグビーEleanor Rigby/エル・チカーノ El Chicano (1970年 ロサンゼルス(USA) LP『VIVA TIRADO』(Kapp 3632)

ロサンゼルスのクレンショー通りと言えば、アフリカン・アメリカンたちによる洒落た商店街が続くちょっとヒップな目抜き通り。地理的には、ダウンタウンから見れば西側の南。そのまま「セイナン」と呼んで多くの日系人たちも戦後この周辺に移り住んできた。若い日系人たちの逸話も沢山残された。そんな若者たちが集まって来たスポットの一つがこのアルバムが録音されたカブキ・スキヤキ・レストラン。当時、The V.I.P.’sと名乗っていたイーストサイド出身のバンドは、ここのオーナーだった日系人の兄弟にいたく気に入られ、頻繁に演奏を行っていたという。そしてこの録音を機会に、名前をエル・チカーノと改名。チカーノ随一の人気バンドとしてその人気を一気に爆発させていった。

2. フレンズ Friends/アルフレッド・リナレス Alfred Linares (1984年、ベネズエラ)(GALLO RECORDS)

ラテン・ジャズの定義って何だろう?そのルーツはNYのキューバップ?それともカル・ジェイダーとモンゴやアルマンドとの邂逅の頃のこと?人によっては、アルゼンチンのガト・バルビエリ辺りにその本流を見るのかもしれない。まだまだその辺りの体系は纏められていないけど、USAで40年代以降に起きていたジャズの熱は当然のようにラテン・アメリカ全体に伝染していった。特にペルーには、ジャズの要素を巧みに摂り入れた極めてクオリティの高い大衆音楽が沢山残されていた。なかでもこのアルフレッドは若い頃から異彩を放ち、数々の名演を残してきた。このアルバムはベネズエラ発の秀英サルサ&ジャズ集団、マンゴーに参加したのち、メンバーの名ヴィブラフォン奏者、フレディ・ロルダンらと一緒に制作したジャズとサルサが混じり合う傑作中の傑作。

3. ラウンド・ミッドナイト Round Midnight/アレックス・コンデ Alex Conde(2015年、USA)

モダン・ジャズの最重要アーティストの一人であるセロニアス・モンクの作品はそれこそジャズのマスターピースだが、それをフラメンコの素養を使って奏でてみようという大胆な企画アルバムから。スペインで生まれ、現在はサンフランシスコで活躍するこのピアニストは、アメリカ西海岸にもあるハイブリッドなフラメンコのシーンで大注目の存在で、本作にも、ジョン・サントスなどが参加するが、伝統のフラメンコのフォーマットから自由に放たれているのか、過度にエモーショナルな表現を優先させるのではなく、クールにセロニアスのユニークな音楽に対峙しているところが感動的だ。特にこの曲の後半の展開は、凡庸なジャズ・ピアニストの表現を遥かに超えている。もう一度大音量で聴いてみて欲しい。
posted by eLPop at 00:04 | Calle eLPop