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プエルトリコ vs キューバ 選曲6番勝負、前半戦

2014.04.09

「radiko.jp」で全国どこからでも聞ける「RN2」ラジオ! 毎週水曜日21時(午後9時)〜は、eLPop執筆者にして幹事長の岡本郁生がホストの『エル・バテイ / El Batey』を放送中!
 4/2、4/9は、eLPopメンバーの伊藤嘉章氏と私、高橋政資がプエルトリコとキューバの音をご紹介します(した)。ワールド・ベースボール・クラシックの如く、プエルトリコ(伊藤)とキューバ(高橋)が順に繰り出す音源を肴に語り倒します(した)。主審の岡本もたじたじ?
 ここでは、4月2日オンエアー内で、言ったことや言い切れなかったことをまとめてみました。
 4/9オンエアーもお楽しみに!

<エル・バテイ / El Batey> 2014年4月2日 OA
オープニング曲:
La Salsa Que Traigo / Orquesta SCC (Salsa Con Conciencia)

★1回戦!
先攻:A Bayamo En Coche / SON 14 <Cuba>
後攻:Perfume De Rosas /Cortijo y su Combo <Puerto Rico>

★2回戦!
先攻:Mi Gallo Camagüey / Chuito (El de Bayamon) <Puerto Rico> 
後攻:Adios Compay Gato / Nico Saquito <Cuba>

★3回戦!
先攻:Los Carnavales de Oriente / Abelardo Barroso <Cuba>
後攻:La Mareja de Los Muertos / Viento de Agua  <Puerto Rico>


●1回戦先攻:A Bayamo En Coche / SON 14(ア・バヤモ・エン・コーチェ/ソン・カトルセ)

 最初の勝負曲(?)は、ラテン・アメリカの多くのサルサ・ミュージシャンたちがその作品を取り上げているアダルベルト・アルバレスの出発点ともいうべきグループ、ソン14が、1979年に発表したファースト・アルバムから、アルバム・タイトルにもなっている名曲を選曲した。ソン14は、キューバ東部の古都、サンティアーゴ・デ・クーバを代表するグループだが、リーダーだったアダルベルト・アルバレスは、キューバ中央部やや東よりのカマグエイ出身。1970年代にソンの復権と現代化を目指したアダルベルト・アルバレスが、ソンの揺籃の地、サンティアーゴ・デ・クーバ出身者達を交えてソンを発展させたのは面白いところ。逆にいえばサンティアーゴ・デ・クーバ人だけでは、多分このサウンドは生まれなかっただろう。
 曲名にあるバヤモ(Bayamo)とは、サンティアーゴ・デ・クーバの隣の州グランマの州都だ。19世紀の10年戦争(スペインからの独立戦争)でキューバ側の拠点となった都市で、スペインに占拠されそうになったとき都市機能を残さないため住民たちが自ら町に火を放ち、馬車(Coche)で逃げたという歴史がある。キューバ人特に東部の人間にとってバヤモは特別な場所なのだ。
 ゴツゴツとつんのめるようなベースと、サンティアーゴ・デ・クーバいちのソネーロ、ティブロン・モラレスの無骨な歌が、キューバのコンテンポラリー・ソン(サルサではない)を象徴する名演だ。
 この曲に対して伊藤さんが選ばれた、プエルトリコ音楽の象徴コルティーホ楽団のこれまた名演との対比を感じていただけただろうか。


●2回戦先攻:Adios Compay Gato / Ñico Saquito(アディオス・コンパイ・ガト/ニコ・サキート)

 第2回戦で私が選んだのは、グアラーチャの名手ニコ・サキート自作自演で、キューバ人なら誰でも知っている名曲だ。先攻の伊藤さんのチュイート・エル・デ・バヤモンを受け選曲。チュイートは、ヒバロ(プエルトリコの白人農民)音楽を代表する音楽家で、自身のラジオ番組で時事ネタを歌い込み人気を得た人。多分そこには、批判精神なども盛り込まれていたのだろうということで、同じように革命前のキューバで風刺の聞いた歌で人気を得たニコ・サキートをぶつけたわけだ。
 また、チュイートの曲名に鶏(Gallo)を含んでいたので、こちらは猫(Gato)含みの曲名を選んだ。韻も踏んでいるしね。
 なお、グアラーチャは、サルサなどでも人気のリズム〜スタイルだが、もともとは演劇などの幕間で披露された歌入りの短い漫談のようなもので、風刺が重要な要素だったらしい。それが、小気味よいリズムが特徴的な音楽として独立し、いつしかサルサなどのダンス音楽の重要なジャンルになった。ニコ・サキートは、そのルーツをしっかり受け継いだミュージシャンだった。


●3回戦先攻:Los Carnavales de Oriente / Abelardo Barroso(ロス・カルナバレス・デ・オリエンテ/アベラルド・バローソ)

 4月2日オンエアーで最後に選んだ曲は、キューバのカーニヴァルの音楽コンガ(コンパルサ)をモチーフにした曲。歌うのは、ソン創生期から1970年代初頭まで活躍した名歌手アベラルド・バローソ。アバネーロ、ボローニャ、ナシオナルというソンの歴史的3バンドの絶頂期に参加し歌ったという、まさにソンのレジェンド。バック・バンドはチャランガ編成のオルケスタ・センサシオーン。
 曲名にあるオリエンテ(Oriente)とは、サンティアーゴ・デ・クーバ州の旧称。すなわちカーニヴァルでもサンティアーゴ・デ・クーバのものを強く打ち出した曲調が特徴だ。アベラルド・バローソのコクありまくりの歌唱もさることなが、バックで一際目立っているのがチャルメラの音色だろう。このチェルメラを使うのがサンティアーゴ・デ・クーバのコンガの一番の特色で、起源はもちろん中国。サンティアーゴ・デ・クーバは、現在の首都ハバナより古くから栄えたゆえに大農園も多く、奴隷解放が行われると、労働力を補うために多くのクーリー(苦力)が導入されたが中でも中国人が多く、炎天下の過酷な労働で多くの人が亡くなったといわれている。そんな中国人が持ち込んだ楽器チャルメラがカーニヴァルの音楽に取り入れられたというわけだ。チャルメラは音階的に西洋のものとは異なるため、西洋音階で書かれた曲はそのまま演奏は出来ないが、コンガでは、どんな曲でも例えばポピュラーのヒット曲でも強引に音階を省略して奏でてしまうのが、いかにもキューバ的で面白い。
 ラテンの文化はスペインとアフリカ(および場所によっては先住民)の混血から生まれたものだという認識が一般的であるが、キューバのこんな例を見てもわかるように、アジア系やアラブ系、東欧系などなど多様な移民の持ち込んだ文化も大いに影響を与えている。そんな歴史をちょっと認識するだけで、面白さが倍増するもの、またラテン音楽なのだ。

posted by eLPop at 13:32 | 高橋政資のハッピー通信