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世紀の大傑作小説「2666」の著者、ロベルト・ボラーニョと音楽(1)

2014.02.28

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 チリ出身の詩人/小説家、ロベルト・ボラーニョは2003年7月15日に亡くなった。享年50。その遺作が「2666」だ。出版は死後の2004年。そして、邦訳が出たのが2012年。日本版は上下二段組880ページ。価格も税抜で6,930円。本の重さも値段の高さもどちらもずっしりくる。だが、これは100年に1冊の傑作なのだ。故・米原万里氏の著作のタイトルを借りるなら「打ちのめされるようなすごい本」(この本もすごく面白い)だ。本読みならば読まずには死ねない。
 「2666」は、批評家たちの部、アマルフィターノの部、フェイトの部、犯罪の部、アルチンボルディの部の5つのパートに分かれている。いずれの部も、多くの女性が殺害されているメキシコのシウダ・フアレスを想起させるソノーラ州サンタ・テレサという街となんらかの関わりを持つ。そこに、ノーベル賞候補といわれながらもその所在すら不明なドイツ人の小説家アルチンボルディを研究している4人の文芸批評家、サンタ・テレサの大学教授、米国の新聞記者、プロイセン生まれの軍人などが登場する。壮大で遠大でありながら細かく枝分かれする「2666」に対する正しい対処法は、物語を追うよりも「ひたすら読む」こと。まずは最後まで読み続けることだ。

 ボラーニョは、文学だけでなく、映画、音楽にもとてつもない知識を持っていた。故にその作品を読むときに読者は彼からの挑戦を受ける。一般的なものからマニアックなものまでの、書かれている物や人や題名や出来事を知っているかどうか。その挑戦に自分がどこまで答えられるか、「これは知っている」と思ったときにそれは甘美な喜びになる。
 そんな人なので、執筆の際にはヘッドフォンで音楽を聞きながら書いていたという。じゃあ、彼が聞いていた音楽はどんなジャンルだったのか、知りたくなるのは当然。調べてみると、バルセロナのCCCB(バルセロナ現代文化センター)のブログにその一部がうかがえる記事があった。曰く、ビオレータ・パラ、ルー・リード、ジミ・ヘンドリクス、ボブ・ディラン、ジョルジュ・ムスタキ、AC/DC等々。1953年生まれの人らしく、彼が最も好んだのはロックだと言われている。ここで紹介されている故郷の音楽はビオレータ・パラだけ。この記事は2013年の4月にボラーニョの生誕60周年(生きていたら、去年60歳だったのだ)を記念して、企画されたイベントの一部で、彼が遺した膨大な予定表から聞いていたであろう音楽のコンピレーションも作られている。そこには前述のミュージシャンに加え、ゲッコ・ターナー、レナード・コーエン、メルセデス・ソーサ、マーク・ボラン、バーニー・ケッセル、チック・コリアなどの作品が並んでいる。

 では、彼の作品の中にはどんな音楽が流れているのだろうか。そんなことが可能かどうか不安もあるが、具体的な記述がなくても、その場所と時代で想像してみたい。
posted by eLPop at 18:12 | 高橋めぐみのSOY PECADORA