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パレスチナ、そしてトランプ

2025.06.14

音楽はここ半年たくさん良いものに出会ったが、それより怒り心頭なニュースは2つ:
パレスチナとトランプ問題へのラテンの音楽のことを。

■まず、スペインのシンガーソングライターのマルワン(1979年マドリード生まれ、パレスチナ系スペイン人)の曲を。

- Nana Urgente para Palestina(「パレスチナへの緊急の子守唄」)


https://youtu.be/4FzN5MnQyfY?si=sy2ptDwY5l_iNdDv

耐えてきました
誰も耐えないようなことを
誰にも気にされない者の苦しみを
それでも私はまだ立っています

耐えてきました
砲撃のただ中を
保育園の火の中を
それでも私はまだ立っています

(coro)
平和の歌なんて歌えません
自分の体さえ動かせないのに
平和の歌なんて歌えない
自分の体さえ動かせないのに

(ヴァース)
耐えてきました
毛布の中での激しい恐怖を
皆に背を向けられることを
それでも私はまだ立っている

よく覚えておいてください
私を定義する言葉なんてありません
皆が私を「パレスチナ」と呼びます
それでも私はまだ立っている


■2曲目はプエルトリコのレシデンテ。社会問題にずっとコミットしてきている大スター/ラッパーが、パレスティナの歌手アマル・ムルクスと組んだ曲。

Residente, Amal Murkus - Bajo los escombros(「瓦礫の下で」) (Live Session)

https://youtu.be/COgKs7YcRQE?si=L2_338KQ9QWxSOYj

(レシデンテによるスペイン語の部分)
最初からわかってた、血は争えない
俺たちは、あの子の、またその子の、またその子の子供
棒と石だけで戦車に立ち向かってきた
俺たちをここからどかせる者なんていない

大尉も、大将も、軍曹でも無理
生まれつきビザはないが、アクセントはある
そしてここに、風の最後のひと息までも留まる
人々は変わらず立ち続けている

(立ち向かう)正面にいる軍隊全体に
(俺たちは)まるで違う育ち方をしてきた
灼けたコンクリートの上を裸足でサッカーして
橋もなく川を越えてきた

水と風で、電流を生み出す
パンが足りなければ
歯に残ったものだけで生き延びる
傷は新しいタトゥーさ

俺たちは耐え続ける、この想いが届くまで
俺たちは勇気の子どもたち
死海に波が立つその日まで
この風景のために、野生の夕焼けのために命を捧げる

地中海に映る、あの偶然の光のショー
それを、胸と剣で守り抜く、ああ!
顔を覆ったスカーフのままで
侵略者はまるで豚、明白だ

俺が両手を上げても、奴らは撃ってくる
けど、少しの水で俺たちは耐え抜く
オリーブの木のように俺たちは生きている
そして肩には、あらゆる瓦礫を背負っている

その瓦礫の下には、俺たちの祭りが眠ってる
遠くから引き金を引いた奴の
赤いボタンを押した奴の
目を見て俺と向き合うことすらできなかった奴の

その瓦礫の下で書き直された
まだ語られていない物語がある
誰にも読まれなかった本がある
俺たちを爆撃した兵士たちが読まなかった本が


(アマル・ムルクスによるアラビア語の部分)
ガザよ
我が民よ、絶望しないで あなたの声は高く響いている
祖国よ、泣かないで あなたの涙は尊い
ガザよ、わたしの誇りよ、波から生まれた娘よ
ガザよ

海の兵を集め、炎の下で
包囲の中、破壊のただなかで
あなたは「家」だった、いまは「石」となった
ガザよ

我が民よ、絶望しないで あなたの声は高く響いている
祖国よ、泣かないで あなたの涙は尊い
ガザよ、わたしの誇りよ、波から生まれた娘よ
ガザよ

海の兵を集め、炎の下で
包囲の中、破壊のただなかで
ガザよ、ガザよ


■ちなみにガザの今昔(The Gaurdian制作)
Gaza City before and after: footage shows destruction wreaked by war



https://youtu.be/grKsZU2T3Oc?si=HmRb0sKCCSd78Tk_


■最後に、トランプ問題に関する曲を。

アメリカで暮らすベネズエラ人の若者ダビシート、ジュニア・カルデラ、ルクソールマスターの3人が、トランプの移民排斥、国外追放に対しフリースタイル・デンボウなヒップホップで「ドナルトロン」というのをというのをYouTubeでリリース。これがTikTokで大バズり。ダビシートはシカゴのヴェネズエラ移民の音楽シーンでは力のあるラッパーでコンピにも取り上げられている。

DONALTRON - ‪@juniorcalderatm‬ バツ1 ‪@Davicito59‬ バツ1 Luxor ( VIDEO OFICIAL)

https://youtu.be/_Z3Mu38CUb4?si=6jSOX1byDAVMDQ-w

「ドナルド・トランプ、国外追放してほしくない。僕はただ書類が欲しいだけ、パスポートにスタンプを押して欲しいだけなんだ。僕はちゃんと働いて、規定で必要なすべての裁判所に顔を出すと約束する。ここで結婚相手を探してるんだ "という歌詞。しかし2月のリリース後、5月に予想通りウィスコンシン州の郡拘置所に拘留となってしまった…。

ダビシートの本名はクラウディオ・ダビッド・バルカネ、現在26歳。ベネズエラのバレンシアで生まれ、2016年20才前にベネズエラから陸路でコロンビアに移住し、その後2021年に家族を頼ってペルーに移住。そこで一児の父となったが、2023年パナマ/ダリエンのジャングルを抜け、中米全土を北上してメキシコに至る王道のルートで合衆国を目指した。そして2024年4月CBP Oneの申請によって合法的に入国している。

CBP Oneは、米国税関・国境警備局(CBP)が提供していたモバイルアプリで、主にアメリカ合衆国への入国手続きの簡略化と待ち時間の短縮、そして国境手続きの効率化を目的に開発されたもの。ESTAのようなものと言っていい。バイデン政権時代にスタートした。CBP Oneは、特に米国とメキシコの国境を越えて入国を希望する人たちにとって、重要な役割を果していた。

ところがトランプ就任後、2025年1月20日、CBP Oneアプリは、米国大統領令で即座に閉鎖となった。
彼が最も恐れているのは、例のエルサルバドル、グアンタナモ、リビア送りにされる事だ。加えてダビシートはマドゥロ政権に反対の意を表明していることから帰国しても人権は保障されないだろうと考えている。

入国後、彼が初めて移民裁判所に出廷したのは2024年6月(バイデン時代)のことだったがその際判事は亡命申請をするよう勧告し、入国から1年直前のギリギリで申請することになった。彼の勾留はトランプがCBPワンの受益者に即時退去命令を郵送した時期と重なるが、一方で彼の亡命申請はまだリジェクトされておらず、彼は期待をかけている。とはいえ、入国時もそうだったが、彼のタトゥーから犯罪歴があるのではとか当局の偏見による追求など、この先の事は見通せない状況。

ダビシートのようなCBP Oneによる合法的入国ですら全く先の事は分からず、ニュースでご存じの通りLAを発火点として抗議行動は広がり、政府の締め付けが激しくなっている。
ダビシートの幸運を祈るばかりだ。


posted by eLPop at 01:36 | 伊藤嘉章のカリブ熱中症