先日発表された「第25回ラテン・グラミー賞」では、ウィリー・コロンとの大ヒット・アルバム『シエンブラ』の45周年を記念してリリースされたライヴ・アルバム『Siembra:
45° Aniversario (En Vivo en el Coliseo de Puerto Rico, 14 de Mayo
2022)』が<ベスト・サルサ・アルバム>を受賞している。
1948年パナマに生まれた彼は、国立大学の法学部に進むが大学紛争が活発化して大学は封鎖されたためニューヨークへと向かい、人気楽団ピート・ロドリゲス楽団をバックにアルバム『フロム・パナマ・トゥ・ニューヨーク』を製作。その後、大学が再開したためパナマに戻って卒業し弁護士となって国立銀行に就職するが、夢を捨てきれず、再びニューヨークへと向かった。
ファニア・レコードの郵便係をしながらチャンスを狙っていた75年、まずはレイ・バレット楽団で歌い、その後ウィリー・コロンのアルバム『ザ・グッド、ザ・バッド、ジ・アグリー』に自作曲「エル・カサンゲロ」を提供し、ウィリー・コロン楽団の歌手としてデビューした『メティエンド・マノ』でも4曲を提供。歌手と同時に作家としても一気に注目を集めるようになると78年、エクトル・ラボーの代表曲となった「エル・カンタンテ」を提供。同じ年、アルバム『シエンブラ』がリリースされた。
ここでは、物質文明を批判した「プラスティコ」、これからの中南米のためにいま種を植えようと呼びかけるタイトル曲、チンピラの死を演劇的に描いた「ペドロ・ナバハ」など、大都会に生きるラティーノの生活を活写し、ラテン世界の連帯を歌い上げた曲が並んでいる。社会的な内容を歌った曲も、あくまでも一貫して庶民の目から、低い目線から歌われていることに注目したい。
名曲は数々あるが、例えば、ボビー・ロドリゲス&ラ・コンパニアに提供した「ヌメロ・6(セイス)」はどうだろう。
Bobby Rodriguez y La Compania - Numero 6
https://www.youtube.com/watch?v=_SjvRvxcfTI
「ヌメロ・6」とはニューヨークの地下鉄「6」系統のことで、マンハッタンのブルックリン・ブリッジ・シティ・ホール駅を基点に、イーストサイドのレキシントン・アヴェニューの下を通り、イースト・ハーレム(エル・バリオ)などを通ってブロンクスのぺラム・ベイ・パーク駅まで続く各駅停車の路線だ。(最近はわからないが、以前は、)乗っていると、ミッドタウンを過ぎたころから黒人やラティーノたちの数が増えてくるのが実感できたものである。
ルベンは、こんな歌詞を作っている。
♪何時間もここで地下鉄6を待っている。だけどまだ来ないんだ
Numero Seis
https://www.youtube.com/watch?v=-BdFmAU1hu8
当時の米国社会の中で、ラティーノたちが置かれた立場を象徴しているようで、やるせない気持ちになってしまうが、のちに、ジェニファー・ロペスは、この地下鉄6をタイトルにしたアルバム『オン・ザ・6』で99年、メジャー・デビューを果たし、ここから頂点へと駆け上っていったのである。
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