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スペイン映画界の名匠カルロス・サウラ監督の遺作、2作品

2024.05.30

お勧め映画:
『情熱の王国(EL REY DE TODO EL MUNDO)』2021年 劇映画の遺作
監督:カルロス・サウラ(Carlos Saura)
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ(Vittorio Straro)
配給元:Action Inc.
http://www.action-inc.co.jp/saura/#
公開:2024年6月1日 渋谷ユーロスペース 全国順次公開
http://www.eurospace.co.jp/
※同時上映『壁は語る(WALLS CAN TALK)』2022年 ドキュメンタリ映画の遺作
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 名匠カルロス・サウラ監督が、2023年2月10日に91歳で亡くなりました。その遺作である劇映画『情熱の王国』とドキュメンタリ映画『壁は語る』が、配給元のAction Inc.のプロジェクト「VIVA SAURA!」で、2本一挙にという贅沢な形で公開されます。

 その生涯で多くの劇映画やドキュメンタリ作品を発表してきたサウラ監督ですが、日本で最初に公開された映画は『カルメン』(1983年)でした。メリメの原作小説とビゼーのオペラをベースに、主役も務めたバイラオール(フラメンコダンサー)のアントニオ・ガデスとタッグを組んだ傑作です。むせかえるような濃厚なフラメンコのダンスと音楽に彩られていて、パコ・デ・ルシアが音楽を担当し、自身もギタリストのパコ役で出演しています。続いて公開されたのは、『血の婚礼』(1981年、日本公開は1985年)で、フェデリコ・ガルシア・ロルカが実際に起きた事件を元に執筆したといわれている戯曲を、『カルメン』に先駆けて、アントニオ・ガデスが演目としていた作品を見事に映画化しました。その後、先頃新作の『瞳をとじて』が公開されたビクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』(1972年)で注目されたアナ・トレントを主役に据えた『カラスの飼育』(1975年、日本公開は1987年)も公開されました。
 しかしながら、日本における最近の公開数は満足のいくものではなく、今回の2作の公開もAction Inc.代表の比嘉氏が「きっと、日本で公開されるに違いない!という思惑が外れ、ならば、せめて追悼のために公開せねば、と思った」ことがきっかけとなったのでした。

 『情熱の王国』は、ミュージカルを作り上げるためのミュージカルといった趣向の作品で、とにかくダンスシーンが圧倒的です。舞台はメキシコのグアダラハラで、演出家マヌエルが元妻の女優で振付師サラに協力を頼みます。舞台を作り上げるために若いダンサーのオーディションが始まり、才能あるイネスを核に、彼女を巡る甲乙付けがたい魅力的な若者ふたりなど、磨き上げられた美しい肉体が躍動する群舞シーンは圧巻です。さらに、イネスの父親のエピソードも絡み、物語はフィナーレに向かいます。撮影当時79歳だった、『暗殺の森』などのベルトリッチの諸作や『地獄の黙示録』を撮影しているヴィットリオ・ストラーロの見事なカメラワークも注目です。
 さらに、特筆すべきは音楽です。映画の原題の『EL REY DE TODO EL MUNDO』は、メキシコを代表するシンガー・ソングライターのクコ・サンチェスのランチェーラの名曲「Fallaste Carazón」の歌詞から取られています。メキシコの歌う映画スター、ペドロ・インファンテが映画『La Vida No Vale Nada』(1955)の中で、酔っ払い演技でこの曲を歌うシーンが有名です。さらには、リラ・ダウンズの「La cumbia del mole」、ペレス・プラードの「Mambo No.5」、チャベーラ・バルガスの「No volveré」などが効果的に使われています。
 サウンド・トラックは、若手のスペイン人音楽家アルフォンソ・ゴンサーレス・アギラールとメキシコのカルロス・リベラ・ゲーラが担当しています。オリジナル曲も素晴らしく、アルバムがほしくなりますよ。

 『壁は語る』はサウラ監督自ら出演し、アルタミラ洞窟から現代のグラフィティまで、芸術家のみならず、著名な思想家やグラフィティ・アーティストと交流し、旅し、壁と芸術の関係を探る作品です。
 
 いずれも映像美が決め手ですので、ぜひ劇場でご覧いただきたい作品です!
posted by eLPop at 18:23 | 高橋めぐみのSOY PECADORA