浜 忠雄 著 岩波新書 2023/8/18 刊
最近、音楽好きの間でハイチへの関心が高まっているようだ。古くからカリブ音楽やワールド・ミュージックを聞いてきた日本のリスナーには、コンパやララー、トゥオバドゥなどのハイチ音楽は、定番の一つだった。しかし独特なグルーヴを出すのが難しく、ハイチ音楽を演奏するグループは、これまではほぼいなかった。それが最近、それらを演奏するアマチュア・グループも複数出現し、より幅広くハイチ音楽が親しまれるようになって来た。また、キューバ音楽やジャズなどの成立に、ハイチが深く関わりがあることは、この辺りの音楽ファンにはもう周知されているので、そこからハイチに興味を持つ方も増えているように思われる。
そんな折、ハイチの辿ってきた歴史と現状に多角的にスポットを当てた書籍が、昨年発売された。歴史学者である筆者の浜 忠雄氏は、フランス革命を研究する過程でハイチ革命(1791〜1804)との関連や、その後のフランス史に及ぼす影響をなどを調べ、徐々にフランス史からハイチ(革命)史に研究対象をシフトしていったという。それが、1970年代半ばだそうだ。当時、世界史の研究において「忘れられた革命」とされ、ほとんど触れられることがなかったハイチ革命の重要性が取り上げられるようになったのは、ここ20年ほど前からだという。そんな筆者のハイチ革命への眼差しから、世界史を見直してみようというのが、本書だ。学者の書いた研究書という面はあるが、我々のような一般人でもとても読みやすいので、是非皆さん手に取っていただきたい。
フランス革命の英雄、ナポレオンがハイチへ出兵し、奴隷解放を取下げたりしたことはご存知の方も多いと思うが、世界初の黒人共和国を承認するためにとったフランスの非道な政策が今でも両国で争われていること、フランスの後に行われた“いつもながら”のU.S.A.の侵略が、オバマ政権時にハイチ地震の支援という形をかりて近年まで続いていること、さらにハイチ革命と同時代に英雄と言われた人たち、(U.S.A.で奴隷制を廃止した)リンカーンや(南米の独立を推進した)シモン・ボリバルなどが、ハイチ革命に対して示した態度など、私にとっては「そうだったのか」という初めて知る真実も多く、とても勉強になった。そこから、さらにヨーロッパやU.S.A.の哲学史や歴史まで考察して、まさに副題の「奴隷たちがきりひらいた近代」を提示してくれる。
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