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「ブエノスアイレスに消えた」グスタボ・マラホビッチ

2023.04.03


グアダルーペ・ネッテルの『花びらとその他の不穏な物語』と、ホセ・レサマ=リマの『パラディーソ』を紹介しなければいけないという使命感に燃えてはいるのですが、諸般の事情で叶わず状態なので、思わぬ拾いものだったアルゼンチンのミステリを紹介いたします。

読んだ本:
ブエノスアイレスに消えた(原題:El jardín de bronce 直訳:ブロンズの庭園)2012(日本での出版は2015)
著者:グスタボ・マラホビッチ(Gustavo Malajovich)
翻訳:宮崎 真紀
ハヤカワ・ポケット・ミステリ

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https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000012710/author_MAgyo_MI_4085/page1/disp_pc/

 本作は、本国アルゼンチンのみならず、スペイン語圏で評判になったミステリです。著者のマラホビッチは、主人公同様に建築学んだものの、その後映画やテレビ番組の脚本家として活躍して、本作で華々しく作家デビューという経歴の持ち主なので、出版時にシリーズ化の構想があったという用意周到さがにじみ出ている作品です。2017年にはHBO (Latinoamérica)でドラマ化されています。さすが、業界人というところでしょうか。

 物語は、ブエノスアイレスの晩秋、建築家ファビアンの娘とペルー人のベビーシッターが、友だちのバースデーパーティに出席するために地下鉄に乗り、忽然と姿を消すところから始まります。警察の捜査も遅々として進まない中、元々微妙だった妻との関係もこじれていきます。さらなる不幸が重なり業を煮やしたファビアンは、バローロ宮殿(モンセラート地区にある100年前に建てられた有名な高層建築)に事務所を構える探偵を雇い、自らも捜査を始めます。この探偵は一見怪しげですが、クセのあるいいキャラクターです。すると、次々に手がかりを得ます。しかし、恐ろしい殺人が起き、娘を発見するには至りません。そもそも、誘拐だとしても、なぜ娘がいなくなったのか、その理由も掴めないのです。妻との顛末や、事件の発端から展開していく不安要素の散りばめ方が巧みで読ませます。

 そして、数年が経ち、捜査を諦めかけ、昔取った杵柄でバレボールを再開していたファビアンに新たな展開が訪れます。娘を探して、大河の流れる奥地に向かうことになった彼を待っていたのは、想像もしていなかった忌まわしい過去と.......。

 正直長いです。饒舌な語り口というよりも、途中「これは要るのか?」と少々首をひねるちょっと冗長な描写に、うんざりしてしまう人もいるかもしれません。しかし、映像関係出身の人だけあって、表現がとてもビジュアル的で、状況が画像として浮かんできます。これはなかなか面白い特長です。そして、話の展開は全く予想がつきません。この二点で「長いけど読ませてしまう」作品に仕上がっているのではないでしょうか。

 著者は、主人公はなるべく「普通の人」として描くよう心がけたとのことですが、そのせいかアルゼンチンならではのペルーやパラグアイの人々へのちょっと差別的な意識なども、包み隠さず書かれています。ファビアンもその他の登場人物も正義の人でもスーパーヒーローでもなく、確かに「居そうな人」です。ただし、犯人はトラウマ級におぞましい。
  

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posted by eLPop at 13:23 | 高橋めぐみのSOY PECADORA