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『eLPop今月のお気に入り!2021年4月』

2021.05.18

さて、非常事態宣言真っ盛りですが、ほんとにオリンピックとかやるの?な状況、『eLPop今月のお気に入り!2021年4月』をお届けしたいと思います。

新譜・旧譜、新作・旧作関係なく、音盤あり曲あり映画あり、本あり、社会問題ありと様々ですが、この月はなぜかこれだった、というのをチョイスしました。この月の気分が含まれた雑誌、プレイリストのように楽しんで頂ければ幸いです。

【目次】(入稿順)
◆石橋純  『イーディ・ゴーメはセファルディだった』
◆高橋めぐみ『シンプルな情熱』(映画)と『恥さらし』(本/フランス&チリ)
◆山口元一 『ボンバ・エステレオ & マリア・クリスティーナ・プラタ』(コロンビア)
◆岡本郁生 『ウィリー・コロンと河村要助さん』(NY)
◆水口良樹 『レナタ・フローレスとウェンディ・スルカ』(ペルー)
◆長嶺修  『ラディオ・トゥティ&バリラ・シスターズ』(フランス)
◆高橋政資 『ムシカ・グアヒーラを代表する女性歌手、マリア・ビクトリア』(キューバ)
◆佐藤由美 『映画『カリプソ・ローズ』を観て』
◆宮田信  『Valley Wolf』(チカーノ)
◆伊藤嘉章 『クバディスコ 2020-2021:ルナ、サンタロサ、レクオーナ』(キューバ)




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◆石橋純(熱帯秘法館/CASA CACHIBACHI担当/ベネズエラ& more)
『イーディ・ゴーメはセファルディだった』



古くからのラテン音楽ファンはイーディ・ゴーメ(Eydie Gormé 1928―2013)の名前を覚えていることだろう。1960年代にトリオ・ロス・パンチョスと共演してボレロのスタンダードを歌った米国の女性歌手だ。

Cuando vuelva a tu lado

https://youtu.be/-yZNJYXSR-Q

同時代のナット・キング・コールの変なスペイン語やコニー・フランシスのイタリア系のクセある発音と一線を画し、イーディ・ゴーメのスペイン語歌唱が「ちゃんと」しているのが不思議だったが、私はそれについて深く掘り下げたことはなかった。最近大瀧詠一の「恋はメレンゲ」という楽曲について調べていて、その元歌のひとつがゴーメの「Blame it on the Bossa Nova(恋はボサノバ)」であったことから、私は彼女の経歴を知るに至った。

「大瀧詠一と古典メレンゲ(後編)」
http://elpop.jp/article/188569145.html

なんと、彼女はセファルディだったのだ。セファルディとは15世紀末にイベリア半島を追われたスペイン語話者ユダヤ人の末裔のことだ。


イーディ・ゴーメことエディ・ゴルメサノ(Edith Gormezano)は、レバノン系セファルディの父とシチリア系セファルディの母の間にニューヨークで生まれた。彼女はスペイン語のセファルディ方言であるラディーノ(ladino)語のネイティブ話者だったのだ。歌手としてプロ活動を始めるまで、彼女は国連や民間企業などで英語・スペイン語の通訳・翻訳の仕事に従事するほどスペイン語が堪能だったのだ(しゃべれるのは当然としても、仕事にするほど読み書きも達者だった)。イーディ・ゴーメのスペイン語歌唱の特徴である、鼻にかかる「N」や破裂する「B」や暗い「L」などの、ちょっとポルトガル語と相通ずる発音も、セファルディ訛りと思って聴き直すと急に好ましく思えてくる。

Sabor a mi

https://youtu.be/vwlZPrdExgs

"Taaaannto tiempo disfrutamos este amor"のaの音がnに向かって鼻母音化し、響きが暗くなっていくニュアンスがなんともセクシー。標準スペイン語のネイティブが歌うとこうはならない。次のライブ映像に記録されたアグスティン・ララのグラナダのイントロなど、メリスマ唱法(コブシ)がセファルディ歌謡調に聞こえて、私の胸にはグッと迫ってきた。彼女のコブシは、平均的ラテンアメリカ人歌手より巧みだ。

Granada
(* 下の画像の"Piel Canela""Sabor a Mi"の後、3分30秒から"Granada"が始まります)

https://www.youtube.com/watch?v=kQeGLk4nGus&t=201s

たまたまこの曲のアレンジでは、スウィング・ジャズのスタイルで英語詞を歌う演出が施されている。湿度を帯びたセファルディ訛りのスペイン語の親密さと対照的に、英語歌唱が明るくカラッとした響きを帯びていることが感じとれるはずだ。

イーディ・ゴーメ&トリオ・ロス・パンチョスというユニットは、プエルトリコ人とメキシコ人とセファルディ娘がニューヨークで企画を立ち上げたプロジェクトというわけで、ラテン・トリオによるボレロというスタイルを醒めた耳で捉えていた人びと言える。世界を席巻したのも頷ける。

Y - Eydie Gorme y Los Panchos

https://youtu.be/NAuLcJ__p5U

星の数ほどあるボレロのネイティブ名歌手のなかにあってニューヨーカーのイーディ・ゴーメがラテンアメリカ人の心を掴み、時代の記憶ともにその歌声をリスナーの脳裏に刻んだのもまた当然、と私には思えてきた。ビジネスとしてスペイン語のマーケットに向けて売り出すだけでなく、アメリカ大陸各地に離散した、まだ見ぬ同胞に届くように歌うという情感を、イーディ・ゴーメは裡に秘めていたはずだから。





◆高橋めぐみ(SOY PECADORA担当/スペイン語圏の本・映画)
『シンプルな情熱』(映画)と『恥さらし』(本)


■観た映画:『シンプルな情熱』(2020)(原題:Passion simple)
監督:Danielle Arbid(ダニエル・アービッド)
公式HP: http://www.cetera.co.jp/passion/

今回はフランスのアニー・エルノーの小説を映画化した作品です。公開は2021年7月なので興味を持たれた方は確実に観られます。

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物語は「昨年の9月以降、私は、ある男性を待つこと、彼が電話をかけてくるのを、そして家へ訪ねてくるのを待つこと以外、何ひとつしなくなった」という主人公のエレーヌのモノローグで始まります。エレーヌ(レティシア・ドッシュ)は40歳ぐらいの離婚歴がある大学の教員で、パリ郊外(と思われる)のしゃれた家で息子と2人暮らし。ある男性ことアレクサンドル(セルゲイ・ポルーニン)はロシア大使館に勤める30歳ぐらいの既婚者。まあ、実際この物語にはふたりの職業や環境はあまり関係ないのですが。

エレーヌの視点で語られるのは、冒頭にあるとおり、男から電話があるとなんとか息子が居合わせないように算段し、彼が訪ねてきて肉体関係を持つ、ということの繰り返しです。途中、彼女が文学を教えている授業の風景や友人との食事やおしゃべり、息子とのエピソードも挟まれますが、基本的にはエレーヌがアレクサンドルにメロメロであることが淡々と描かれます。

エレーヌについての描写に比べてアレクサンドルについて提供される情報はごく僅かです。大使館勤務であることと既婚であること、「君から電話はするな」と釘を刺す、謎めいているというより身勝手な印象です。それは、彼について詳しく語ってしまってはこの物語のポイントがぶれてしまうからだと思います。観る者はこのハンサムでミステリアスな男にあまり魅力を感じられないし感情移入もしにくい仕組みです。

なぜなら、これは「シンプルな情熱」についてのお話で恋愛映画ではないからです。そこの部分は決してわかりやすいものではないかもしれませんが、みじんもリスペクトしていないものに執着してしまう可能性は誰にでもあると思います。

個人的に偏愛しているパトリス・シェローの『Intimacy(2001)』に比べると見終わったあとの気分はさわやかです。

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■読んだ本『恥さらし』(2020)
著者:パウリーナ・フローレス(1988〜)
翻訳:松本 建二
白水社
https://www.hakusuisha.co.jp/book/b548333.html

ロベルト・ボラーニョを産んだ国、チリの新鋭による初短編集。真面目にすごい新人現る!です。

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出版社の説明によると「1990年代から現在までのチリを舞台に、社会の片隅で生きる女性や子どもの思いを切実に描き出す。チリの新星によるデビュー短篇集」で「「恥」と「屈辱」をめぐる9つの短篇」ということです。こりゃあ読まずにはいられません。ましてやこの作家はあのミニマル&ナイスな『盆栽/木々の私生活』(2016)のアレハンドロ・サンブラの弟子筋ということなのですから。

しかし、師匠とはまったく違う語り口。ピノチェト以降のサンティアゴが主な舞台で、90年代のチリというある種独特な政治や経済の状況下で起こる日常の物語です。ただし、現れるのは恥と屈辱ですからね。多少は覚悟しましょう。

物語は以下の9編です。
恥さらし
テレサ
タルカワーノ
フレディを忘れる
ナナおばさん
アメリカン・スピリッツ
ライカ
最後の休暇
よかったね、わたし

この中でわたしが好きなのは「アメリカン・スピリッツ」と「よかったね、わたし」の2編です。いずれも女性が主人公ですが、「アメリカン・スピリッツ」は久々に会ったかつてのバイト仲間との会話から導き出された意外な告白。久しぶりに会ったら自分が思い込んでいたイメージとは違ったという誰にもありそうな経験をうまくあぶり出しています。主人公の相手への態度や思いの描写が秀逸です。大きくうなづく。

「よかったね、わたし」は現代と少し前と思われる2つの時制で図書館で働く孤独な女性と小学生の少女の話が交互に語られます。どちらも能力は低くなく成績もよかったりするけれど友だちがほとんどいないのです。とはいえそれは共通点ではありません。最後にふたつの話は一瞬交錯しますが、これはなかなかスリリングで見事なお話でした。別にすっきりした解決はなく宙ぶらりんのまま終わる話ですが、それでよいと思わせる余韻が充分にあります。

表題作の「恥さらし」や「ナナおばさん」は鋭く辛口で軽い擦り傷を負う感じです。また、視点に工夫はあるけれど、人によってはそうとう嫌な気分になる可能性が高い作品もあります。

誰が読んでも楽しめる(そんなものはないかもだけど)作品ではないかもしれませんが、心に残る読書体験をしたい方には強くお勧めします。わたしは次作が出たら即買います!誰もが楽しめるものに本当に楽しいものなんかないと思うあなた向き!

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Paulina Flores




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◆山口元一("Ay hombe"担当/コロンビア)
『ボンバ・エステレオ & マリア・クリスティーナ・プラタ』



■ボンバ・エステレオ/Bomba Estereo "Agua"

https://www.youtube.com/watch?v=WE-ZbjIv6w4



■マリア・クリスティーナ・プラタ/María Cristina Plata "Amor para Después"

https://www.youtube.com/watch?v=lW0KokoOrKE

いずれも今年の新曲です。
他の国と同様、コロンビアもコロナでめちゃくちゃですが、こんな状況で新曲を出すミュージシャンは応援したい




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◆岡本郁生(ラテン横丁・USA LATIN & MORE)
『ウィリー・コロンと河村要助さん』

4月後半、ウィリー・コロンが妻のフリアさんとともに自動車事故に遭い重篤な状態に陥ったというニュースが世界中を飛び回った。その直後、ウィリーの誕生日である4月28日には、Facebookで彼の誕生日を祝うとともに回復を願うメッセージが数多く投稿されたのだったが、これを見ていて思わず頭に浮かんだのは、2年前の6月に75歳で亡くなったイラストレーターの河村要助さんのことである。

河村さんはウィリー・コロンと同じ誕生日というのが自慢(笑)で、数多くのサルサのアーティストの中でももっとも思い入れのある人だったはずだ。

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河村要助さん(右)とS-KENさん(左)

なにしろ、サルサにハマったきっかけが、(のちにミュージシャン/プロデューサとして日本の音楽シーンを牽引する)S-KENさんから、70年代初頭、ニューヨーク土産でウィリー・コロンのアルバム(おそらく『Guisando/Doing A Job』)をもらったこと。それまでジャズやR&Bを聞いていた河村さんは、このアルバムにすっかり魅了されてしまい、最初は何語なのか?どこの音楽もわからず、まずは、LPの内袋に印刷してあるカタログをすべて、そこに載っていたニューヨークのファニア・レコードの住所に注文するというところから始まったのだった。

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Guisando/Doing A Job


そんな関係のS-KENさんのアルバム『Gang Busters』(83年)で河村さんは、ジョー・バターンの「サブウエイ・ジョー」とウィリー・コロンの「オー・ノー」のカバーで作詞を担当している。

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Gang Busters

「オー・ノー」は72年のアルバム『El Juicio』の1曲目に収録された楽曲で原題は「Ah-Ah/O-No」。ボンバのリズムを基調に、汎カリビアンなテイストを前面に押し出した、ウィリー・コロンならではの楽曲である。ここでの河村さんの日本語詞は、

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El Juicio

♪でも、ツレないね。キスだけしてさ、またその先は、どうしてくれる?
(いま音源も資料も手元になく、かなり曖昧なのだが)

と始まり、Aメロの最後は
♪・・・ベッドは回るだけぇ〜〜〜

と来るのである。
♪Dices que me quieres・・・を、♪でも、ツレないね・・・とは!

「でも、」から始まる歌詞なんてあるのか!と衝撃を受けた。80年代後半、河村さんと一緒にやっていたサルサ・バンド、カメリア・グループでもカバーしていたが、演奏する方としてもけっこう気持ちいい楽曲だったことを覚えている。


Willie Colon (ft Hector Lavoe) – Ah-Ah/O-No

https://youtu.be/54wx9F_ToPM


Hector Lavoe & Willie Colon... Ah Ah Oh No(Live)

https://youtu.be/EZJ1goBZp_4

なんとこんな映像があるとは!
おそらく1972〜3年ごろ、NYのセント・ジョージ・ホテルでのライブ映像で、全盛期のウィリー・コロン楽団のどっしりと地に足の着いた演奏が素晴らしい。




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◆水口良樹(ペルー四方山語り担当/ペルー)
『レナタ・フローレスとウェンディ・スルカ』



4月の紹介トピックとしては、アンデス系ポップ歌手からレナタ・フローレスの新作とウェンディ・スルカを紹介したい。


第二回のラテンアメリカ最新音楽地図でもご紹介したケチュア語ラップで今注目を集めるレナタ・フローレスはこの春新譜を発表している。その『ISQUN(イスクン)』からPVのある「Francisca Pizarro / Invasión」を紹介する。

インカ帝国を征服したフランシスコ・ピサロをもじったようにも見えるフランシスカ・ピサロというタイトル。実は、征服者フランシスコとインカ皇帝ワイナ・カパックの娘との間に生まれたペルーのもっとも初期の混血児として名高い女性の名前だ。征服者達の殺しあいの内乱を生き延び、スペインでその後半生を生きた。レナタは彼女のことを知ったときに非常に惹かれて歌にしたいと思ったと語っている。

また、昨年11月にPVが公表された「Chañan Cori Coca / Imperio」はインカ時代を描いており、最新アルバムが描き出すペルーの歴史(帝国/侵略/植民/独立/共和国)の第一部分となっている。

Renata Flores - Francisca Pizarro /Invasión/

https://youtu.be/nv1R6NaYE18

Renata Flores - Chañan Cori Coca /Imperio/

https://youtu.be/au81GcSOVOs


また、もう一人取り上げたいのは、幼少期からハープとともに歌われる女王様系ワイノである「クンビア・コン・アルパ」歌手としてキャリアをスタートさせたウェンディ・スルカが選挙キャンペーンにオラヤ・サウンド・システムとコラボした作品「Mi Reclamo」だ。

ペルーは今まさに大統領選真っ最中であり、決選投票はともにアンチが非常に多いケイコ・フジモリとペドロ・カスティージョの闘いとなっている。昨年末には臨時大統領罷免に反対する大規模なデモが広がり死者まで出、さらに大統領が三度交代するという事件もあった。

長年低迷しているペルー政治が今後どのように展開していくか、そのタイミングで発されるウェンディの「異議申し立て」では、今非常に注目されているオラヤ・サウンド・システムとのコラボで「変わらなければならない。より良い方向に進んでいくために、新しく始め直すために」と歌い上げられる。

Wendy Sulca - Mi Reclamo (feat. Olaya Sound System)

https://youtu.be/huNzePc4bvU

また、彼女のデビュー当時との変貌ぶりも含めて何作か過去作も紹介しておきたい。ワイノ歌手であることをやめた彼女が、進むべき道を模索しているのがよく分かる。彼女が今後どのように音楽と向かい合っていくのかも個人的には要注目な歌手だ。

ハープのワイノ(幼少)時代

https://youtu.be/fdockhpuFZ4



https://youtu.be/zN_iBfzjaGQ


ポップス(若者)時代

https://youtu.be/oYzI7dfla2s


https://youtu.be/WAKFNSzuSZs




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◆長嶺修(猫の目雑記帳担当/スペイン & MORE)
『ラディオ・トゥティ&バリラ・シスターズ』(フランス)


■Radio Tutti & Barila Sisters “Xogo” (Lamastrock)

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https://radiotuttibarillasisters.bandcamp.com/album/xogo

南欧地域の伝統=民衆音楽の電化/オルタナ化を試みるフランスのユニット。2021年リリースのセカンド作。本作ではスペイン北西部ガリシア地方の女声とパンデイレータ(タンバリン=フレームドラム)からなるアンサンブル、パンデレテイラスで演じられる民謡を主力素材としています。

Radio Tutti & Barilla Sisters - Rumba Morena

https://youtu.be/GXDqk1bmtXY

“本場”のトラッドなスタイルも辿っておきましょう。ガリシアのパンデレテイラス。

Pandereteiras Xacarandaina interpretando Pandeiretada de Baldaio

https://youtu.be/r7qJEXBBXgU


若手3人組Tanxugueirasのパフォーマンスとビデオクリップ。

TANXUGUEIRAS interpretan "Maneo de Caión"- Alalá.TVG

https://youtu.be/J1bJzqnXjyc



TANXUGUEIRAS - Que non mo neguen

https://youtu.be/riXsyaKDaL0

スペイン北部ビスケー湾沿岸地帯では伝統=民衆音楽にフレームドラムが活用されます。ガリシアでの名称はpandeireta、アストゥリアスやカンタブリアではpandereta、バスクではpaderoa。近隣ではアイルランドのbodhran、ポルトガルではガリシアにも共通する方形両面張りのadufe、Radio Tutti & Barila Sistersが前作で俎上に載せている南イタリアでもtamburelloなどのフレームドラムが用いられ、ラテンアメリカではプエルトリコのプレーナで活躍するpandereta、ブラジルのpandeiroやtamborimなんかがありますね。各地での奏法や形状の比較、伝播ルートなど探ってみるのもおもしろいかもしれません。


Radio Tutti & Barilla Sisters - Pizzicarellafro mia

https://youtu.be/c9ooHyLGkAM





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◆高橋政資(ハッピー通信担当/キューバ、ペルー、スペイン)
『ムシカ・グアヒーラを代表する女性歌手、マリア・ビクトリア』


【キューバ、現在ムシカ・グアヒーラを代表する女性歌手、マリア・ビクトリア】

 筆者は、レーベル運営や音楽ソフトの輸入業を生業としているので、ライヴや公演を中心にする人たちほどではないにせよ、COVID​-19のパンデミックによる仕事への影響は深刻だ。配信、しかもサブスクが主流になるにつれ、ただでさえソフトの需要が減っていたところに、COVID​-19禍で世界中で音源制作自体が減り、また航空貨物などの物量インフラも滞り、2020年の輸入量はここ20年で最低だった。特にキューバからは、1便も無かった。

 キューバは、医療先進国でCOVID​-19感染を比較的コントロール出来ていたが、昨秋まで厳しい外出制限がとられ、海外からの航空便も制限されていた。やっと今年初め頃に航空貨物の定期便が再開し、3月末、久々にキューバ直輸入盤が到着した。

 入荷したアイテムの中には、ネットで配信済みのものも多いが、ネット未のものや聞き逃しているものなども多々ある。欧米のレーベルにはハイレゾ音源配信も広がっているとはいえ、キューバなどの非西洋世界ではMP3レベルの音質のものがほとんどで、個人的にあまり聞く気になれない。

 そんなこんなで入荷したCD(ほとんどが正規CD-Rですが、音質は問題無し - その辺の話しはまたの機会に)の中で、とても印象に残ったのが、『MARIA VICTORIA/Entre Cuerdas』だった。

●『MARIA VICTORIA/Entre Cuerdas』の表題曲
バルバリート・トーレス、ガストン・ホヤらが参加

https://youtu.be/OLwrOnml38g

 マリア・ビクトリアは、いわゆる“ムシカ・グアヒーラ”の女性歌手(メキシコの往年の名ボレロ歌手に同姓同名の方がいるので、検索などの時お間違いの無きよう)。このジャンルの伝説的歌手、セリーナ・ゴンサーレスの後継者とも言われている。ファースト・アルバムの解説によると、シエンフエゴス生まれのグアヒーラの名男性歌手、エル・ヒルゲーロの娘だそうだ。ハバナ生まれのようだが。子供の頃からグアテーケ(キューバの田舎のホームパーティ)でプントなど田舎の音楽に親しみ、新作の5曲目「Las penas De Mi Alma」でデュエットしている母親のメルセディータ・ソーサも歌手として名を馳せた人だと言うから、ムシカ・グアヒーラのサラブレッドというわけだ。

●「Las Penas de Mi Alma」母親メルセディータ・ソーサとの共演曲

https://youtu.be/IZ38bPZz_xk

 U.S.A.のインディペンデント・レーベル、PIMIENTA RECORDSより、ファースト・アルバム『ASI SOY YO』を出したのが、2002年で34歳頃の時。その後は、いずれもキューバのBIS MUSICから5枚のCDと1本のDVDを発売している。もちろん、グアヒーラを中心に据えてしっかりとその味わいを伝えているが、ソン、トローバ、ヌエバ・トローバ、フィーリン、チェングイ、キューバン・サルサ系もこなし、そのどれにも彼女らしいグアヒーラ臭を感じさせてくれるのが素晴らしい。また、様々なジャンルの曲を取り上げる一方、自作も多い。

 パンチョ・アマートとの共演作や、個人名義でも多彩なゲストプレイヤーが参加しているのは、キューバでもしっかり評価されている証拠だろう。今後も注目していきたい歌手だ。


●パンチョ・アマートとの共演作『MIS RAICES 』
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●「Amancecer Montuno」

https://youtu.be/mrd8GMVe_pk

● 「Llanto de Laúd」

https://youtu.be/yPmaVjgTlqA

●「Bajo un Palmar」プエルトリコのペドロ・フローレスの名曲

https://youtu.be/yYHFo_y6x6A





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◆佐藤由美(GO! アデントロ!/南米、ブラジル & more)
『映画『カリプソ・ローズ』を観て』


 昔から映画館でよく風邪をもらってくるダメダメな習性があり、時節柄やむなく自粛していたが、この作品はどうしても観たかった。海外アーティスト公演のことごとくが中止の憂き目に遭い、やはり身体が音楽ドキュメンタリーを欲していたのだろう。

 予習にはならんけど、久しぶりにCD『浜村美智子/カリプソ娘』(ビクター2003年発売)も聴きたくなった。浜村美智子さんの歌、凛としてカッコいい。余談だが、数年前に生のお姿をお見かけしたのは確か、長のご友人YOSHIRO広石さんライヴの客席だった。 

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 して、『カリプソ・ローズ』。重たいテーマを孕む映画だが、70歳を記念して撮ったという彼女の骨太な愛すべき歌声に、終わってみればドーンと背中を押された気分。

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 自身インタビューで「いちばん好き」と語っておられる海水浴の水着シーンが、小生も大いに気に入った。重要なベナンのウィダー「帰らずの門」のシーンは、かつてナナ・ヴァスコンセロスが訪れた(※80年代のTVドキュメンタリーだったか?)セネガルのダカール沖に浮かぶゴレ島(※同じく奴隷出港の拠点)の秀逸な映像を思い出す。構成と映像美では、圧倒的に後者へ軍配を上げてしまうが。

 ハードなテーマの中で、風刺よりもユーモアに命賭ける“カリプソ・キング”マイティ・スパロウとの共演シーン(と関係?)は、救いに近い効果あり。2006年8月ブルーノート東京で“キング”のライヴを体験したが、得意の十八番モノマネでナット・キング・コール、サッチモ、サム・クック、マリオ・ランツァらの声色を駆使した「マイ・ウェイ」を披露。そしてもう1曲、歌うポーズまで似せたルイス・ミゲルくりそつ「時計」パフォーマンスが笑えたなぁ(※日本だと、いささかマニアックすぎ?)。エロ系ゴルフ・ネタは、さっぱり聞き取れなかったけど。

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 サントラCD付きパンフレットを入手し一読したら、昨年ローズさん、世が世なれば、映画プロモーションのため来日するはずだったんですね。いつか仕切り直して、ぜひナマの土俵でお姿と歌声を拝ませてください!




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◆宮田信(DANCE TO MY MAMBO担当/USA+MEXICO)
『Valley Wolf』(チカーノ)


サンフランシスコから東に100kmの街モデストのファンキーなバンド、Valley WolfのPVが、良い感じの空気が流れてて楽しい!

Valley Wolf - Corazón

https://youtu.be/Cm9XCkFnClA

(*編集部注)
セルフタイトルのデビューEPに続くシングル「Corazón」は、Chicano BatmanのEduardo Arenasがレコーディング、ミックス、プロデュースを担当。
E.アレナス、ルディ・デ・アンダ、ブレインストーリー、マリネーロと言った面々とのライブでもまれて作られてきたサウンド。現在アルバム制作進行中とか。

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◆伊藤嘉章(カリブ熱中症担当/カリブ諸島+カリブ沿岸)
『クバディスコ 2020-2021:ルナ、サンタロサ、レクオーナ』span>


キューバの毎年恒例のクバディスコ、昨年はコロナで開催できなかったので第24回の今年は2年分一挙に配信で行う事になった。5/15から5/23まで毎日14時間のプログラムが既に始まっている。

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7つの分野、約40のサブカテゴリーでの発表やインタビューやセミナーまでと多彩なプログラム。その中で最優秀書はこの2つ。ロランド・ルナ(p)とガストン・ホヤのアルバム『Fusión de almas』、そして企画盤Alianza Musical de Cubaによる『Al son del Caballero』。

Rolando Luna - Gaston Joya - Shayan Fathi / Fusion del Alma

https://youtu.be/pSuoPfF9Ct0

ロランド・ルナ、なかなか良いです。ドラムはアライン・ペレスのグループなどでやってるシャヤン・ファーティ。


後者の『Al son del Caballero』はマノリート・シモネの企画で、アダルベルト・アルバレスの代表作品を、アレクサンダー・アブレウ&ハバナ・デ・プリメーラ、エリト・レベ・イ・ス・チャランゴン、マイケル・ブランコなどなどが演奏。なんどプエトリコからヒルベルト・サンタ・ロサも参加してラサリート・バルデス&バンボレオとやってます。サンタ・ロサしぶとい。

Hacer una canción - Gilberto Santa Rosa (Homenaje Adalberto Alvarez)

https://youtu.be/RkByiAJNi2A

あとおもしろかったのはレネ・アレンシビア制作のエルネスト・レクオーナの作品を取り上げた映像作品『Al fin Lecuona』。マエストロ ウリセス・アキノ率いる国立交響楽団が取り組む。

映像作品はクラシカルな歌唱の入ったものがメインだが、プログラム最初のフランク・フェルナンデス(p)と共演したレクオーナの「Comparsa」。これが楽しい。クラシックは苦手な方も4:00-10:00くらいのフェルナンデス師匠の演奏をぜひお楽しみください。


Ulises Aquino - DVD "Al fin Lecuona"

https://youtu.be/IIJQM3_rK5s


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