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eLPopメンバーによる『2020年はこれだった!』特集!

2020.12.22

2020年も色々12月、今年はコロナで未曽有の年となりましたが、そんな一年でメンバーにとって印象深かった『2020年はこれだった!』をお届けしたいと思います!

賞を選ぶのでもシーンを見渡した総括的なチョイスをするものでもありません。
音盤あり曲あり本あり映画ありと様々ですが、義理もしがらみもなく、この1年を思い返して「これだわ!」と思い浮かんだチョイスです。

自然体でこの1年が反映した選択になっているかもしれません。
お楽しみください!(記事到着順に掲載)

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◆山口元一("Ay hombe"担当/コロンビア)
『14 Cañonazos Bailables (Vol.60)』(Discos Fuentes)

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14 Cañonazos Bailables (Vol.60)

コロンビアの老舗レーベル、年末の定番はなんと60周年。中身は"1990年のヒット曲集"と言われても気がつかないほどの時間の停止っぷり、あいかわらずのカニョナーソ節なのですが、唯一2020年を感じさせてくれるのはLa Sonora Dinamita の"El Coronavirus"。"中国の話じゃないんだぜ、みんな気をつけよう。でも俺は死なないし、コロナになんかかからないよ、ポルケ?Porque yo canto con la
Dinamita!"...まだコロンビアにコロナが来る前の歌なんですよね...





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◆石橋純(熱帯秘宝館/CASA CACHIBACHI担当/ベネズエラ& more)
『Luis Segura - Cariñito De Mi Vida Ft. Victor Victor 』



皆さん敬愛する音楽家を誰かしらCOVID-19で亡くしたとおもいますが、私が一番ショックをうけたのは ドミニカのシンガーソングライタービクトル・ビクトル の死です。

ビクトル・ビクトルは、ドミニカのヌエバカンシオン運動から頭角を現した音楽家で、ウィルフリード・バルガス楽団のパーカス奏者としても活躍しました。都市下層のアングラ音楽だったバチャータの価値を見出し、バリオのアーティスト達と親交を結びました。彼ら彼女らをメディアに紹介する一方、彼自身はマス聴衆が親しみやすい洗練された新スタイルを提唱しました。この新しいバチャータはフアン・ルイス・ゲラに大きな影響を与えました。バチャータを世界に広めたゲラの功績を否定する人はいないでしょうが、彼が安酒場に出向いてバチャータを聴いたり、バリオのバチャテロといっしょに歌ったりしたという話を私は寡聞にして耳にしたことがありません。ビクトル・ビクトルは、バリオの哀愁の吐露であるバチャータを、場末の現場で人びとと交流しながら、愛した人でした。

このたび選曲したのは、「母なるバチャータbachata madre」とビクトル・ビクトルが呼んだ場末のスタイルの第一人者ルイス・セグラとのコラボ曲です。11月2日にリリースされたこの動画が私のFBのおすすめに上がってきたことで、遡ってビクトル・ビクトルの訃報に接することになりました。7月16日にCOVID-19による感染症で亡くなっていたのです。享年71歳。この動画は近年のビクトル・ビクトルの音楽の熟成を感じさせるもので、ドミニカの安酒場のバチャータの雰囲気を世界の聴衆に伝える、愛と遊びごごろに満ちたプロジェクトです。素晴らしすぎて、とても悲しい。

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Luis Segarra "El Papá De La Bachata, Su Legado - Añoñado 1"



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◆高橋めぐみ(SOY PECADORA担当/スペイン語圏の本・映画)
『アコーディオン弾きの息子』ベルナルド・アチャガ著(翻訳:金子奈美)

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私にとっては2020年最大の収穫と言っても過言ではない作品です。
米国に移住した幼なじみが家族も読めない言葉「バスク語」で遺した私的な回想録をめぐる物語。語られる過去と現在が入れ子のようになっていて見事な構成です。アチャガは存命の作家としてはバスク文学の最重要人物。また、金子奈美氏の血反吐を吐きながら(ちょっと嘘)の翻訳も毎度のことながらすんばらしいです。

もう一つは映画です。

『Aos Olhos de Ernesto (邦題:ぶあいそうな手紙)』(2019)
監督:Ana Luiza Azevedo


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物語は、長年ブラジルに暮らすウルグアイ人のエルネストのアパートで息子が内覧に来た人たちを案内するシーンから始まります。サンパウロに住む息子は視力を失いつつあるエルネストにひとり暮らしは無理だと思いアパートを売ってほしいのです。78歳のエルネストは年金暮らしですが、良き隣人のハビエルや食堂の女将さんや家政婦のクリスティナといった人々と関わりもあり、視力のことを除けばそれなりに元気に暮らしています。

しかし、そこに懐かしい故郷モンテビデオから手紙が届きます。それは親友オラシオの妻で彼も密かに想いを寄せていたルシーアからのものでした。視力のせいで手紙を読むことができないエルネストはハビエルや家政婦に頼みますが上手くいきません。そこで、偶然知り合った若い女性ビアに頼んでみると彼女は快く引き受けてくれ、返事を書くのも手伝います。明るく快活で若さ溢れるビアをエルネストは快く思い、ふたりの繋がりは深まるように見えたのですが...。

何と言っても話の展開が素晴らしく上手い。物語はほとんどエルネストのアパートとごく近所で進むのですが、けっこうな振り幅で引き込まれました。
どこで出てくるかは書きませんが、わたしはあの空港から市内に向かうと見えてくる椰子の木にウルっとしました。

音楽の使い方もよく主演のふたりも魅力的です。と、よく見たらエルネスト役はウルグアイを象徴する名作『Whisky』のエルマンじゃないの〜にこにこ

字幕は(我らが)比嘉世津子姐さんです!完全に信頼できる字幕。
「予告編」


https://www.youtube.com/watch?v=F9ub2zKbj78&feature=emb_logo




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◆水口良樹(ペルー四方山語り担当/ペルー)
一枚は、ロレナ・ブルーメ『クチャラ・チュエカ』(2018)


Lorena Blume "Cuchara Chueca"

ララーとともに、疲れたときによく家でかけていたCD。日常の中に隠された記憶や不可視化された人々などへの思いがまっすぐに歌われたオルタナティヴ・フォーク系の歌手。

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Lorena Blume "Cuchara Chueca"

もう一枚は私家版ラ・カテドラル・デル・クリオジスモ『12周年』

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La Catedral del Criollismo "En su XII Aniversario"

リマのバリオのギタリストの長老の一人であるウェンドル・サルガードが主催し毎週金曜の午後に自宅で開催されている集いラ・カテドラル・デル・クリオジスモの12周年記念CD-R。バリオに集う古老から若手までの歌い手やギタリスト、踊り手、学者、文化人らによって営まれる生きたムシカ・クリオーヤ世界が垣間見える一枚。


El loco del Callao - Carlos Cabrera - Manolo Cadillo/La Catedral del Criollismo


Clavel Marchito (Armando Gonzáles Malbrán) Enrique Suárez /La Catedral del Criollismo



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◆佐藤由美(GO! アデントロ!/南米、ブラジル & more)
『ゼ・マノエウ/裸の心から』(コアポート)

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ゼ・マノエウ『裸の心から』 Zé Manoel "Do Meu Coração Nu"


http://www.coreport.jp/catalog/rpop-10032.html

▼ブラジル人と自らのアフロルーツに迫る最新意欲作。柔らかな北東部ペルナンブー
コ訛りと自然体ピアノの抑えたトーンが、時空を越えた旅へといざなう。かつて日本
盤LPが出たバイーアのグループ、オス・チンコアンスに捧げる「アドゥペ・オバルア
エ」、クリップ映像の厳かさに惹かれた(※ダンサーはジル・サントス)。オバルア
エ=オムルは病を司り、治癒をうながすアフロ混淆信仰カンドンブレの神。2020年を
象徴する“祈り歌”とも受け取れる。



Zé Manoel "História Antiga"


Zé Manoel "Adupé Obaluaê"


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◆岡本郁生(ラテン横丁・USA LATIN & MORE)
『Imprevisto』 Raices Jazz Orchestra



アルバム『マス・デ・ミ』で2019年のグラミー賞を受賞、いまやラテン音楽界の中心人物ともいえそうなマイアミ在住の日系ペルー人、トニー・スッカルと、ベネズエラ出身マイアミ在住のサックス奏者、パブロ・ヒルとが中心となったライセス・ジャズ・オーケストラのアルバムから。アレンジ、アンサンブル、すべてが素晴らしく、スカッとする1曲。

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Tony Succar, Pablo Gil & Raices Jazz Orchestra "Raices Jazz Orchestra"




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◆高橋政資(ハッピー通信担当/キューバ、ペルー、スペイン)
ANA CARLA MAZA アナ・カルラ・マサ『La Flor ラ・フロール 』

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ANA CARLA MAZA アナ・カルラ・マサ『La Flor ラ・フロール 』

今年はコロナ禍で、全音楽界で新譜発売が極端に少なかった。キューバからは、海外への貨物便が停止しているし国内では外出規制などもあり、少しの配信発売以外は皆無。そんな中、ヨーロッパのレーベルが出したチェロ弾き語りのAna Carla Maza(アナ・カルラ・マサ)のアルバムには引き付けられた。彼女の祖父は、チリのピノチェト時代のゲリラで、息子(アナの父親、カルロス・マサ)を連れてキューバに渡った。そのカルロスは、その地で音楽の才能を開花させ、やはり音楽家のキューバ女性、ミルサ・シエラと結婚。2人の間に生まれたのが、アナ・カルラ・マサ。アナ・カルラは、ハバナ、バルセロナ、パリで音楽を学び、今はバルセロナを拠点に活動している。
キューバらしい音ながら、彼女の父方の出自が自然ににじみ出た音。アルバムでは、自作と父親の曲を取り上げているが、YouTubeに置かれた動画では、チリ、メキシコ、アルゼンチンなどのスタンダートのカヴァーもやっていて、それもなんともイイ。
キューバというと、ソン〜ティンバ系、ジャズ系ばかり注目されがちだが、ファンクのシマファンクやアナ・カルラ・マサのような人たちが出てくるのが、逆にキューバ的ともいえるのでは。



https://www.anacarlamaza.com/
オフィシャル・サイト

http://www.ahora-tyo.com/detail/item.php?iid=18993
日本盤は、彼女へのメール・インタヴュー付き



https://youtu.be/yY-Whno84aQ
オンラインで開催された2020年のWOMEX(ワールド・ミュージックの国際見本市)にオフィシャル・アーティストとして参加。その為に製作されたミニ・ライヴ映像。



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◆長嶺修(猫の目雑記帳担当/スペイン & MORE)

Silvia Pérez Cruz 『Farsa (género imposible)』 : Universal Music Spain 00602508825651


業務の関係で、新旧ディスクにいろいろ触れる機会はあるんですが、どれも一期一会的になっていて、唯一、手許にある2020年新譜がこのアルバム。シルビア・ペレス・クルースの生まれ故郷スペインのカタルーニャには、ハバネラが地域の伝統として根づいていて、彼女の亡き父親はそのハバネラを演じる音楽家でした。本作は、演劇や映画のため彼女が提供した楽曲をまとめたものですが、彼女なりに咀嚼したタンゴやランチェーラ、ハバネラなど、中南米音楽ラヴァーな方にも聴いてみていただきたいです。

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Silvia Pérez Cruz "Farsa"

収録曲のビデオクリップ SÍLVIA PÉREZ CRUZ "Mañana"

https://youtu.be/_EXUe6Vchr4

(参照)ちょっと前の映像ですが、シルビア・ペレス・クルースが父親と共演で「ベインテ・アーニョス」を演じた動画

https://youtu.be/-eqJAAi1kE8

それと、まったくの蛇足ながら、このところ音楽の代わりに何にかまけているかというと、若いころにはちっとも食指の動かなかった日本の近現代史で、そっち系の今年の新刊書でおもしろかったのは、エイコ・マルコ・シナワ『悪党・ヤクザ・ナショナリスト――近代日本の暴力政治』(朝日選書)、藤野裕子『民衆暴力――一揆・暴動・虐殺の日本近代』(中公新書)。そんなわけで、当サイトについてはサボりっぱなしで、ほんとーに申し訳ございません。

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◆宮田信(DANCE TO MY MAMBO担当/USA+MEXICO)
ルーベン・モリーナ著(宮田信訳) 『チカーノ・ソウル〜アメリカ文化に秘められたもうひとつの音楽史』 : サウザンブックス

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手前味噌で恐縮。沢山の方々に助けて戴きようやく邦版が完成しました。40年代のパチューコから、リッチー・バレンス以降に登場した数多のバンドによる60年代のシーン、そして公民権運動を経て沸き起こったラテン・ロックやテキサスのラ・オンダ・チカーナまでの歴史を纏めた貴重な一冊。

著者のルーベン・モリーナは、古いドゥーワップやソウル音楽をこよやく愛してきたロサンゼルス生まれの元ローライダー乗り。ストリートでメキシコ系2世たちと黒人音楽の関係を現場で体験してきた肌感覚が何より重要な指針となり、チカーノたちによる「ソウル」の鉱脈がガイダンスされていく。越境、貧困、差別、徴兵などの問題も絡み合いながら、アメリカとメキシコの狭間で沸き起こった音のムーヴメント。単なるディスクガイドを超えたアメリカの文化史として広く知ってもらいたい。




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◆伊藤嘉章(カリブ熱中症担当/カリブ諸島+カリブ沿岸)

iLe, Natalia Lafourcade 『En Cantos』




コロナで人と会う事が出来にくくなった4月にこの歌がリリースされた。初めて聞いた時に、

Yo te puedo sentir aunque no esté' ni cerca (あなたは近くにいないけど あなたを感じる)

いう歌の頭が響いた。愛の歌なのだけど、対象に触れられなくても知りたい気持ちと感情と想像の力で高まる強い想いを歌うこの曲は、ともすればコロナで流されそうな時間にくさびを打ち込む力を感じた。

さすがプエルトリコのイレ(iLe)とメキシコのナタリア・ラフォルカデ(Natalia Lafourcade)という、今を代表する歌のつくり手/歌い手の共演の作品。ラテンらしい地中で沸き立つような情感が今の女性の力強さを通して聴くものに迫る。
イレの昨年リリースの『Almadura』、ナタリアの今年リッリースの『Un canto por Mexico Vol. 1』の2枚のアルバムも素晴らしく、何度も聴いた。

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          "Almadura"         "Un Canto por Mexico"


『Ahora Sí』 Daniel Diaz y Jafet Murguia

もう一曲はプエルトリコの新世代のパーカッション奏者のダニエル・ディアスの曲を。

ディアスはバランキータス出身の33歳。数年前から「トリパンデーロ」というプレーナに使うパンデレータを3つ大中小(Buleadora/segunda/quinto)を一つに組み上げ、両手で3つをたたきながら右足でベースペダルやカンパナを、左足でクラーベやカバサをと一人で複数のパーカッションでグルーヴを作り出し、歌も歌い自己のグループやセッションで活躍して来た。そのディアスが最近、コンガ2人を含むグループでやってるセッションが良いので選んでみた。オーセンティックな曲だが感覚がとてもフレッシュ。これからが楽しみです。

Ahora Sí - Daniel Diaz y Jafet Murguia


Daniel Diaz - Congas y Voz, Jafet Murguia - Congas y Voz, Alexander Lopez - Bajo, Coros y Voz, Roberto Ortiz - Cuatro Puertorriqueño, Coros y Voz, Omar Hernandez - Cajon, Campana, Timbal, Clave y Cabasa




Viento de Agua - La Reina Mía (Cover) by Daniel Díaz y su Tripandero



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posted by eLPop at 21:47 | Calle eLPop