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「eLPopがガイドするラテン音楽最新地図Vol.2」(その1)

2020.05.07

 去る2月6日に代官山「晴れたら空に豆まいて」で開催した「eLPopがガイドするラテン音楽最新地図Vol.2」。
 スペイン語圏でいま(というか2月時点で)起きていること、起きようとしていること……
 世界の音楽地図を書き換えてしまうかもしれないラテン音楽のパワーと魅力を、現地情報を盛り込みながらご紹介しました。

 例によって(笑)だいぶ時間が経ってしまいましたが、ご紹介した楽曲/アーティストをここに採録したいと思います。(新型コロナウイルスが蔓延する現在、状況が変わってきている部分もありますが)今後に向けて、ぜひ耳を傾けていただければ。

まずは、アオラコーポレーション・高橋政資による最新キューバ事情です。

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Omara Portuondo「Sábanas Blancas」

 御年89歳のオマーラ・ポルトゥオンドが、ハバナ市制500周年(2019年)を記念して制作されたオムニバス・アルバム『La Habana 500』(EGREM)に、参加し録音された1曲。
歳を全然感じさせない喉の張りにまず驚く。自由な歌唱もいつの通りだが、ハバナっ子のオマーラが、PVで世代を超えた市民たちと楽しんでいるのも微笑ましい。
 自身の再選のためだけの政策しか考えていない、U.S.A.のトランプ大統領による不当な経済封鎖の強化によって、再度経済が逼迫しひいては市民の生活も苦しくなる中、ハバナの元気な姿をアピールするヴィデオでもあるのだろう。現在のコロナ禍の中にあっても、医薬品などの輸入にまでヘルムズ・バートン法の全面適用を続けるトランプ大統領の異常な政策は、日本でももっと報道されるべきだ。

 オマーラ・ポルトゥオンドが元気なうちに共演を果たしたいということか、キューバ国内外から、多くのミュージシャンが名乗りを上げている。そんな中から、2つご紹介しよう。

Haydée Milanés ft. Omara Portuondo「Yolanda」

 パブロ・ミラネースの娘で、現在キューバの若手女性歌手で一番歌のうまい(と筆者の思っている)アイデー・ミラネースが、父親の大ヒット曲を、オマーラとデュエット。

Omara Portuondo & Regina Orozco「Un Poco Más」

 メキシコの女優/歌手のレヒーナ・オロスコとの2枚組共演盤より。
 このアルバムは、メキシコを代表するソングライター、アルバロ・カリージョとアグスティン・ララにオマージュを捧げた内容になっている。

Cimafunk「Talks at Google出演ヴィデオ」

 「Me Voy」の大ヒットで、一躍時の人になったシマファンク(Cimafunk)が、初めてのU.S.A.ツアー時に出演した『Talks at Google』の映像。マーク・アンソニーの事務所と契約したらしく、U.S.A.での露出も多くなっているようだ。他にも、Tiny Desk Concertにも出演している。
 この時、演奏以外にもインタビューも受けているが、自身の出自をピナール・デル・リオ(キューバ西部の町)の逃亡奴隷(シマロン CIMARON)だったようだと述べている。ピナール・デル・リオのサンミゲール洞窟には、シマロンのパレンケ(逃亡奴隷達のコミュニティーのある場所)があるので、シマファンクのルーツもそのあたりなのかも。
 影響を受けたミュージシャンとして、マイケル・ジャクソン、ライオネル・リッチー、オハイオ・プレイアーズ、ジャイムス・ブラウン、マービン・ゲイ、プリンスなどをあげているが、彼の音楽的ルーツをうかがわせると同時に、「キューバでは、ロックやジャズなど欧米音楽(特に英語の)を聞くことを当局が禁止してきた」という、該当する法律や実際の取り締まりの事実を示すなどの検証の無い、いかにも一方的な一部の報道(2016年のローリング・ストーンズのハバナ公演時のものなど)に対して、完全ではないまでも“はてな”を投げかけるものだ。キューバのミュージシャンは、ベニー・モレー、ボラ・デ・ニエベ、エネへー・ラ・バンダ、インテラクティーボなどをあげている。
 生演奏の方は、インタビュアーも指摘しているように、ジェームス・ブラウンを連想させるリズム感〜ステージングでエキサイティングだが、バックの演奏と共にキューバ的洗練が染み出ている。彼の歌以外にも、ヴァイオリンやパーカッションがU.S.A.のミュージシャンには出せないタイム感をファンクのリズムに乗せていて面白い。このリズムのタイト感やスムーズさが、U.S.A.ファンクの一部の信仰者には不評のようだが、別にU.S.A.ファンクのコピーを目指しているわけではないし、元々キューバ音楽に備わったファンキーさと結びついた結果と捉えれるべきではないかと思う。

 私にとってキューバ的ファンキーさといえば、ベニー・モレー、ページョ・エル・アフロカンあたりのイメージが強いが、ジャズやU.S.A.のファンクと結びついたイラケレと結成年が同じ1973年という、レジャス・セテンタ・イ・トレス(Reyes 73)もとてもファンキーな演奏を聞かせていて面白い。

Los Reyes 73「Me canse de hablar」


Los Reyes 73 「Adeoey」


 この他にも、フアン・パブロ・トーレス、ラウル・ゴメス、リカルド・エディ・マルティネスなどが独自のファンク色で活躍していた。このように聞いてくると、シマファンクは突然ファンクを始めたのではなく、キューバ音楽がもともと持っていたファンクネスを進化させた結果現れたスターだということが出来るのではないだろうか。

 シマファンクと同世代のキューバのミュージシャンが、ジャズやレゲトンでU.S.A.を始めとする世界市場に進出しているなか、独自なファンクをひっさげて世界に打って出ようとするシマファンクの心意気!すばらしいじゃないですか!
posted by eLPop at 16:08 | Calle eLPop