<Music Voyage 佐藤卓×岡本郁生:DJ&TALK SESSION>
- 卓さん、このレコジャケってどうですか!? - デザインから見るラテン音楽のアルバムジャケット
後半ではいよいよ……
佐藤卓さんがラテン音楽のアルバム・ジャケットをバッサバッサ斬りまくります!
(前半はこちら)
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岡本郁生(以下O) いよいよ……今日の本題です。
佐藤卓(以下S) そうですね。
O 「卓さん、このジャケットどうなの?」って言って、僕が変なジャケットをいっぱい出すっていう企画です。で、僕、ラテン・ジャケットのパターンを色々考えてみたんです。まあ、他のジャンルについても言えることですけれども、まずあるのが、メンバーが並んでるっていうヤツ。
S 並んでるシリーズ。そういう、何ていうか、作法のようなものがありますね。
O そうですね。例えばこれです。並んでるね〜っていう、ラファエル・コルティーホ楽団。プエルトリコのバンドなんですけど。
S あ、並んでます、並んでます、並んでます! こういう、全員並ぶシリーズっていうのがあるんですね。こういうね。
O どうですかね? これ?
S どう?! え〜っと、どうですかね、っていうかねえ……あの〜……かなりクオリティが低いですね。
【会場笑】
S ええ、グラフィック・デザインとしましては非常に低いんですけれども、かなり味がありますね。あの〜、このジャケットなんかは、みんな手に表情がありますよね? すごくね。
で、これなんか、こう、斜めに並んでる。これ一つの、この程度でアイディアってやつなんでしょうか?! これ一つでアイディアなんでしょうかね。この素朴な感じがなんかすごくいいですよね。
O これ、わざわざ坂のとこの芝生を探したんでしょうね?
S そうそうそうそう。で、これが最もアイディアがないっていうジャケットでしょうね。ただ、コンガを挟んで写真撮ってるっていう。これでよくジャケットにするなぁ、っていう。一応これ、結構刷るわけでしょ? 枚数。
O これ、大ヒット・アルバム(笑)。
S 皆さん! 大ヒット・アルバムだそうですよ、コレ、これ、コレ。その割にはこれ、タイポグラフィーなんかもね、こう、結構手書きで、なんていうんでしょうか。
O これ、たぶん50年代末〜60年くらい。
S タイポグラフィーなんかもあまりお上手ではない感じなんですけど。このアルバムで大ヒットですから。ラテンの世界ではですね。面白いですね〜。これ、普通ではちょっと考えられないですね、今ではね。なかなかでも、いいんじゃないでしょうかね。
O 因みに、このコルティーホっていうのは、1950年代後半から……
S これですね?
O はい。全部コルティーホ楽団なんですけど、プエルトリコの大人気楽団なんですよね。っていうのは、プエルトリコのプレーナとかボンバっていうリズムをメインに演奏して、プエルトリコ人の心をがっちりつかんでいたわけです。
それで、河村要助さんがよく、このアルバム『Cortijo En New York』ですね、“ニューヨークのコルティーホ楽団”のことで言ってたのは、やっぱりその、なんでプエルトリコ人が、この寒い……だってほら、みんなコート着てるじゃないですか……なんでこの冬の寒いときにプエルトリコ人がニューヨークの街頭で写真を撮らないといけないのか?っていう。それはやっぱり、プエルトリコ人が否応なくニューヨークに移民して……
S ああ〜、深いですね。読みが深いですね! 私みたいなのと違いますね!
O いやいやいや、それはもうグラフィック・デザイン的なところとは違うと思うんですけれども。やっぱりその、移民としていっぱい来てて、工場労働とかをしてるわけですよ。で、そういう人たちが、人気楽団がニューヨークに来て、「昨日来たばっかりです」みたいな人たちが街角にいてコンガを持っていると、やっぱりこのジャケットを見ただけで、プエルトリカンはグッときちゃう、っていう。
S なるほど、なるほど。それで、よく見ますとね、これ、ニューヨークの景色ですよね? でね、ここにね、「クバーナ・エアライン」って書いてあるの。だから、何かこう、そういうところも入るように、ちゃんと実は、ここを選んで取ってるんですね、たぶんね。
だからやっぱりあの、なんていうかラテン音楽の魅力としてね、もともとアフリカから奴隷とともにアフリカのリズムが中米〜南米にやってきて、それでこう、それぞれの地域で、ラテンのリズムとして育ってきてるわけじゃないですか。だから歴史を辿ると、なんて言うんですかね、そういう、つらい、せつない歴史があるんですよね。だからいつも思うんですけれども、ラテン音楽って、すごく楽しい、楽しいだけって思ってる人がいるけれども、その楽しさの裏側に、そういうつらい労働とか、奴隷時代とか、そういうことを背負っている。それが裏側にあるので、やっぱりこう、なんていうか、いわゆる白人音楽とはちょっと違う奥の深さって、感じません?
O そうですね。だから本当に、コルティーホ楽団、さっきも言いましたけど、まあ、河村さんの受け売りではありますが、このジャケットを見ただけでね、その、ニューヨークで毎日つらい思いっていうか、なんで俺はプエルトリコ生まれなのにこんな寒いニューヨークにいなくちゃいけないんだ?みたいな人たちがね、すごい共感してしまうっていうところがあるのかなって。
S なるほど。だから、逆に言うと、あんまりこう、デザインを必要以上にしていない素朴な感じ? 素朴な感じっていうのは出てるかもしれないね。なんか、洗練はしてないじゃないですか。ニューヨークで出してるアルバムですよね? アルバム自体はどうなんでしょ?
O え〜と、一応プエルトリコの会社ではあるんですけれども。
S あ〜、そうですか、そうですか。でも何か、洗練されてないっていうか、そのあたりがこう、プエルトリコからニューヨークに渡って来たっていうか、そういう世界観が出ているような感じはしますよね。でも、文字なんかもね、見てみるとね、もう、本当にあの、手書きのような、やや下手!ではないかというような書体なんですよ。でも、それがなんか、今見ると、味わいがありますね。
O じゃあ、ちょっと1曲。
S はい、1曲行きましょうか。
O 『Quitate de la via perico』というアルバムの中からタイトル曲を聴いて頂きたいと思います。コルティーホ楽団で「Quitate de la via perico」。
【Cortijo y su combo / Quitate de la via perico 】
※1960年ごろ(?)、現地のテレビ番組でのライヴ映像。
O はい、コルティーホ楽団で「ペリーコ」、お聴き頂いたんですけれど、それで卓さんね、こういう並びジャケットもあるんですよっていうので、いくつか持って来たんですけど。これとかどうですか?
S うぁ〜!!!すごいですねぇ、これ〜!!! これはすごいですねぇ。
O これもプエルトリコの楽団なんですけど、プエルトリカン・パワー。70年代半ばですかね。
S すごいですねぇ、これは。すごいですね〜、怖いですね〜! 何を考えてるんでしょうか?! このロゴの色! これ、今やると、結構一番新しいかもしんない……。
【会場笑】
S これ、かなり勇気がいりますね、このデザインはね、これ、青白赤。
O やっぱり国旗が青白赤っていう。
S まあ、そういうことでしょうねえ。いやあ、すごいですねえ〜。
O これ、因みに場所は、あのエル・モロっていうプエルトリコのサンフアンにある砦なんですけどね。
S 面白い……。面白いんじゃないですかね。このグラフィックのロゴと、それから景色が、一体になってますよね〜。これはロゴが先だったのか、グラフィックが先だったのか?! 写真が先だったんでしょうね。そのロゴを写真と一体化しているところが、ちょっと面白い。
O なるほど。
S だけど、すごいです、これは。これは、勇気がないとできません。
O あ、そうですか(笑)
S はい、かなり。
O あの〜、たぶん、プエルトリコの人たちは並ぶのが好きなんだろうなって僕は思ってて。で、同じバンドが10数年後になると……同じプエルトリカン・パワーなんですけど。
S はぁ〜、どうでしょうね?
O どうですか?
S さっきの方が全然面白いですね! どうしてこんなにつまらなくなっちゃったんでしょうか?!
【会場笑】
O これ、ただ並んでるだけっていう。
S これは、つまらないんじゃないでしょうかねぇ〜! これ、どうでしょうかねぇ〜?! これは、あんまり得点入りませんねぇ〜、デザインの審査では。
O さっきの方が(良い)?
S さっきの方が! さっきの見てみて下さいよ!
これはすごいですよ、これは! 比べたら、もう最高ですね、コレ。最高! この最低具合が最高!っていう。あの〜、今最低っていうのは、意外と褒め言葉ですね! 「最低〜!」っていいながら褒めてるっていう。さっきのと比べたらね、圧倒的にこっちの方が素晴らしいと思いますね!
O じゃあね、もう一つ、同じような感じの。これ、ベネズエラのオスカル・デレオンっていう、真ん中の人がいるんですけれど、その人がいたバンド。ディメンシオン・ラティーナ。
S こ れ は、凄いですねぇぇぇぇぇ。あの、写真の造形とロゴをパースペクティブに合わせてるっていうのは、さっきのやつとちょっと手法が似てますね。
O そうですよねぇ(笑)。
S ほら、ほら、ほら。なんか、パースが好きなんでしょうかね、遠近感? これもすごいセンスですねぇ〜。
O シャツの色と、文字の色が、ちょっと(似てる)(笑)。
S ここ、ディメンシオン・ラティーナって書いてあるんですけれども、だいたい左右同じくらいの長さでやってるんですが、「ディメンシオ」まで左で入れてるんですね。で、「N」からこっち側に入れてるんですけども、ちょっと文字が足りなくなっちゃった。この辺が空いちゃってんの、少し、文字が。こっち、ぎゅうぎゅう。この計画性のなさ! 我々デザイナーは、1回こういうの作ったら、「あ、いけね」っていって、やり直すんですけどね、直してない!
【会場爆笑】
S だいたい「N」の文字だけ、こっち側に入れるって何? 「N」で、ここが空いてるって、変! ヘン! どう考えても変!
O でも、たぶん、あれですよね、人数のバランスと合わせた……。
【会場爆笑】
S 反対だし!
O どうなんですか?
S それ、読み深いですね〜。文字が左側が混んでるから、人は右側が混んで、バランスをとろう、と!
【会場爆笑】
S そんなところまで考えて作ってるんだろうか? っていう噂がありますけどねぇ。この辺の、この何ていうか……、いやぁ〜、これは、あの〜、今となっては、このコンピューターの時代では、なかなかこういうこと出来なくなっちゃったんですよね。あの、実はこれ、全部ね、この文字、作ってます。これね、作ってるんですよ、全部、字を! 今みたいに、すでにあるフォントを使って並べてるんじゃなくて、これ、一文字一文字作ってるんですね! 間違いなく、これ、一文字一文字作っています! で、こういうのがね、実は、これからとっても価値が出てくる。っていうのはね、こういうことをやる人がもういなくなっちゃってる!
O ああ〜、なるほど、わざわざ作ることがないってことですね。
S わざわざ作った、その良さっていうのが、確実にこれからは価値になっていくので、意外とこういうものには、これからの、魅力のヒントが実は隠れてる気がしますね。あのね、上手くやることはコンピューターになるとできるんですよ、練習していくと。ただ、上手ければいいかっていうと、もうね、そういう時代じゃないっていう感じはするので、これはねぇ、いいと思いますよ。本当に。これ、みなさんね、覚えて下さい、これね。
O 卓さん、アロハ・シャツとかすごいお好きじゃないですか。この柄、どうですか?(笑)
S この柄? この柄! この柄……えーとー、コメントを控えさせていただきます! 何ですか、これ?! 一応、植物パターンですかね? でも、色はなかなか面白いんじゃないですかね。あんまり日本人がちょっと使わないようなカラーリング。
O こういう柄のシャツ欲しいなって、ちょっと思いますけど(笑)。
S で、こういう柄のシャツに対してチェックのパンツ。ね、この薄〜いチェックのパンツ、合わせるか?!っていう。普通は合わせないね。まあ、ラテンのこういうアルバムを見るとね、面白〜いファッションが、そこここにあるんだよね。意外とね、普段出来ないことやってるんで、面白いと思いますよ。
O これは、本当にね、裏も結構好きなんですよね。
S あ〜、いいですねぇ!
O ちょっとグループ・サウンズっぽいんですよね(笑)。
S 右足をちょっと前に出してね! 一番左の人だけ、右足を前に出してない! っていう。あの、ちょっともっさりとしたおっさんが、はい。なかなかいいですね、これね! これも多分、ちゃんとした写真家というよりも、友達が撮りました!っていう感じの写真ですね。なかなか、いい、なかなか、いいですね!
【Dimension Latina / La Comprita】
O じゃあ、続きまして、また、並んでるんですけれども、これ、どうですかね? これ、プエルトリコのソノラ・ポンセーニャっていう、エル・グラン・コンボと並ぶ超人気楽団なんですけど、今となっては。
S でも、なんか、色が面白いですね、色がね。結構、青系と赤と、何かその、けっこう派手な色を、色計画がけっこう面白い、と思うのと、それから、この手前の人が指さしてますよね、手前の下をね。これは何なんでしょう? この、何か、で、この人も指さしてます。この人も! ここに何かあるんでしょうかね? なんかこう、物語が何かあるんでしょうね。でも、これはなかなかきれいなレイアウトで、一応左右対称っていう基本がありながら、左右対称を崩している。計画的な、というかね。私はいいと思います、これは。
O じゃあ、この同じバンドの、今度は少し後のアルバム『Explorando』なんですけど、70年代半ばから、こういうイラストのジャケットになってるんですけれども。これ、僕、ラテン聴き始めたころに聴いて、「ジャケット、全然サルサじゃないじゃん」って。
S ちょっと、ロック……。
O ねえ。
S 当時ロックのアルバムで、こういうイラストレーションのアルバム、流行りましたよね。面白いんじゃないでしょうかねぇ。このタイポグラフィーがまた、すごいですね。ソノラ・ポンセーニャの文字、文字がすごいです。この文字が、ほら。
これ、たぶん、書いてるんじゃないかと思いますねぇ。う〜ん。ちょっと不思議な書体ですよねぇ。こういうのは、日本人はなかなか出来ない。アルファベットの国じゃないので、崩し方が分かんないんですね。なかなかこういうのは、難しいですね。う〜ん、ちょっと面白いじゃないですか。
O アルファベットを使う人ならでは、ってことなんですか、これは。
S いや〜、でも、それを超えちゃってますね、これは!
O 超えてる!
S うん、かなり、あの、ぶっ飛んじゃってるっていうか。ただ、70年代くらいのロックのアルバムなんかにも、結構装飾的なロゴ、文字っていうのは意外と使われてるので、やっぱり、その時代の流れは感じますね。まあ、流行りというか、当時らしさっていう。ラテンのアルバムで、こういうロックっぽいアルバムってあんまりないんじゃないですかね。
O そうですね、こういうジャケットのはね。じゃあ、この中から1曲。これ結成20周年記念アルバムなので、そのお祝いの曲をかけたいと思います。
【Sonora Ponceña / Jubileo 20】
O ソノラ・ポンセーニャで、20周年記念の「20周年」っていう曲をお送りしました。
続いて、またどんどんアルバム・ジャケットを。やっぱり、ラテンといえば、女性が出てこないと、っていう感じだと思うんですけども、80年代半ば、相当インパクトあったのは、これだと思います。エディー・サンティアゴっていう人のデビュー・アルバムなんですけど。いかがでしょう?
【Eddie Santiago / Tú Me Quemas】
S やっぱりラテンのアルバムには、ちょっとエッチな香りが漂わないと許されない、って感じがありますよね。やっぱり、男には女、っていうのがつきものでありまして、このジャケット……なんていうか、最低ですね。
【会場笑】
O 出ました、また出ました! 最低が。
S で、この、女性が美人なのか? っていう。そんなに、だいたいあの〜、なんか、女性が意外と冷たい目をしていますね。全然なんだかね、このカットを何故選んだのか、っていうね。
O 僕、コレ、かなりグッときたんですけど(笑)。
S あ! グッときたんですか! そうですか! 好みの問題もありますけれども〜。まあ、ちょっと、どうでしょうかね。アルバムとしては大ヒット?!
O もちろん。
S 大ヒットしたアルバムなんですね〜。あの〜、ラテンのアルバムは大ヒットしても、その雰囲気がジャケットに出ない! 出てない!っていうのがすごいですね!
【会場笑】
S このロゴの、一番上のところに、「Presenta Eddie Santiago」って文字が入ってるんですけど、「Pres-」の頭のところに黄色い文字がかかっちゃってるんで、あんまり読めない! っていう。あの、こういうところに文字を、平気で横に流すっていうことをですね、あんまりデザイナーはしないものなんですけれども、「関係ねーよ!」と。「俺は、上に、横に入れたいんだ」っていう。で、写真合わせてみたら、まあ、読めなくなっちゃったっていう。「まぁ、いっか!」っていう、そういう感じですよね!
O まぁ、名前が分かればいいか〜、みたいな感じですかね?
S まぁまぁ、アルバムのジャケットだって分かればいいか、っていう感じでしょうかね?この辺なんかを見てもですね、もうちょっと何とか……っていうのがあるんですけれども、でもまぁ、それも全部味になってしまうという。大ヒットすれば、味になっちゃう、ってことですね。ローソクに火が点いてますね。こんな明るいのに!
【会場笑】
O この後、どうなるんですかね、二人は?
S この後? それは、まあ、もう、ラテンの世界では目的は一つしかない、っていう。迷わず一つしかない、っていう世界ですからねぇ。
【会場笑】
O 僕は、やっぱり、この、襟の開かせ方がいいなぁ、っていつも思ってるんですけど。
S いや、ちょっとね、独特のセンスなのが、普通、首元にチェーンがジャリっと見えるじゃないですか? ラテンの人は。なのに、何もつけてない。これはちょっと珍しいんじゃないですかね。
O 腕時計してますけどね。
S 腕時計してるけどね、ここに普通はチェーンをジャリっとね。ラテンの人っていうのはね、何か金属系っていうのが重要なんです。私もライブの時は、チェーンを首に巻いて、もうとてもグラフィックデザイナーとは思えないような恰好をして太鼓を叩いてましたけど。でも、ラテンの世界はね、チェーンって重要なんですよ。意外と、このエディー・サンティアゴはね、光り物がない! 女性も光り物、意外と抑えめ? そういう目で見るのも、ちょっとなかなか、いいんじゃないですかね。そして、その次のアルバムが?
O 次、同じく、当時サルサ・ロマンティカの大スターのフランキー・ルイスっていう……。
【Frankie Ruiz / Para Darte Fuego】
S かなり最低な!アルバム! 今日のベスト3に入りますね! これはね!
【会場大爆笑】
S いやぁ〜、でもやっぱり曲いいですねえ〜。素晴らしいですねぇ。洗練されてますねぇ!
O これがね、タイトルが「Más grande que nunca」っていって、「今までより、一番デカい/素晴らしい」って意味なんで、だから……
S 今までで、一番デカい?!
O なので、他の人より大きくしてんのかな、と(笑)。
S あの……、だいたいデザインっていうのは、説明したらつまらなくなるんですよね。で、これ、思いっきり説明してるんですよね。「今までよりデカい」つって、女の子に挟まれてでかくなってるっていう! もう、どうしようもない……良さがありますね。これ、最低ですね! これ、ほんっとうに最低ですよ!
O これ、ジャラジャラですよ。
S ジャラジャラ! ほら! これ、首元見て下さい! フランキー・ルイスの首元! 金属ジャラジャラ! で、手首にも太い、ちょっと見にくいんですけども、手首にですね、非常に太いチェーンをぶら下げてます! やはり、これは決まり事ですね。ラテン系、行くんであれば、チェーンをぜひジャリっと決めて下さい、みなさん! 私も決められるときには、決めたいと思いますけれども。仕事が少なくなりそうな気がしますけれども。
【会場笑】
O 因みに、このフランキー・ルイスも超大スターなんで、名前くらいは覚えておいて下さい。さっきのは、エディー・サンティアゴ。
S これはですね、かなり、今日の最低ベスト3に入ると思います。
O これ、どうですか? 卓さん、これは? 次は、ラロ・ロドリゲスですね。
【Lalo Rodríguez / Ven Devorame Otra Vez】
S ラロ・ロドリゲスね。これもまた、何とも言えない……。どこでしょうかねえ? どこでテーブルを出してるんですかね? 一体?
O 『Un Nuevo Despertar』っていう、まあ、「新しい夜明け/目覚め」っていう意味です。
S 新しい目覚め!!!
【会場爆笑】
O なので、朝起きて、なんか、ここに来たのかな……?っていう(笑)。
S これね、なんかホテルの、ホテルにおいてある、何ですか? あの、パジャマみたいな……バスローブ! バスローブかなんかを、このラロ・ロドリゲス、着てますよねぇ。だから、朝、なんかこう、ホテルの部屋から、その、ホテルの前のところに出てきて、なんかこう、この女性と、新しい人生を歩んでいくんだなぁ、みたいな。そういう最低な、なんかイメージが。いや、なんか良く分かりませんけれども。全然良く分かんないんですけども。あっ! 見て下さい! 手を結んでます! テーブルの上でね、ちょっと手を握ってますね、指の先をね。「君しかいないんだ」っていう感じでしょうか。どうなんでしょうか。
O いいですね(笑)。
S いいですね(笑)。これも、なかなか、ねぇ! 本当にまぁ、よくも、こんな!
O で、ラロ・ロドリゲスも超大スターなので(笑)、覚えておいてください(笑)。
S 2人とも裸足ですよ、裸足! 裸足であそこに出てくるか?! 普通はサンダルくらい履いてくるだろう?! ねえ、これ、どこをどう見ても、本当にすごいですねえ!
O これも、超特大ヒットアルバムですから! 1988年。
S いいですねぇ〜、大ヒットアルバム!
O 1988年って、ブルーノート東京がオープンして、J-WAVEも出来た年なんですけど、その時代を考えるとどうですか? 卓さん。
S それね、貴重ですよ。1988年ですよ。日本はもう、バブルの頂点に向かってるとき、凄い時代です。88年っていったら、実は、ついこないだです。どっちかっていうとね。そうでもないか?! でも、80年代後半っていったらね、
O 我々にとっては、「ついこないだ」(笑)。
S でもね、こういう世界じゃないですよ! その時代にこういうジャケットを作っていたという! これ、70年代のジャケットじゃないんですよ。90年代に、もう、なろうとしている時代にですね、この、こういうスタイリング? まぁ、これはすごいです。ね、それで大ヒットしちゃう!
O 超〜大ヒットです。
S 味わいがありますよ。なかなか、いいと思いますねぇ。
O じゃあ、同じラロ・ロドリゲスの、ちょっと前の……これから5年くらい前の、82〜83年のなんですけど。『Nuevamente』っていう、まぁ、「新作」って意味なんですけど。これはどうですか? これも素晴らしいアルバム。
【Lalo Rodríguez / Se Empeñan】
S いやぁ〜、これは素晴らしい。逆に、なんか、さっきのあの最低具合が無くなっちゃって、意外とまじめにアルバムをデザインして。アート・ディレクターが代わりましたね! 確実です!
O こっちの方が、前なんですよね。
S え?
O この方が、前。
S え?えっ? この方が前?
O 5〜6年前なんです。
S えっ?! 5〜6年前?! ごめんなさい! これを僕は知らなかった! これの方が前ですか! 信じらんないですね! さっきの方が5〜6年あと! この時は、アート・ディレクターに払うお金があったのかもしれないですねぇ。もしかしたら、ねぇ。なんか、“Lalo”って、指さしてますよ、指!
O いや、だから、僕がこのジャケットを一番すごいなぁと思うのは、これ良く見ると、裏焼きじゃないですか。
S あぁ! ほんとだ!
O これ“Lalo”を指差させるために、裏焼きにしてると思うんですよ。
S なるほど〜!!!
O だって、これ、完全に、ボタンも逆でしょ?
S 逆だね! 深いねー!!!
O どうですか? こういうの?
S ポジ裏側に使ってるんだ〜! それは深読みですね〜!!! え、え?どうしてだ?
O いや、なんでかなぁ〜、と思って。“Lalo”を指差させるためとしか、考えられないんですけど。
S 写真撮った後に、もしかして、逆さまの方がいいかなぁ〜、って思ったのかもしれないですね。たぶんね。そうですか、これの方が前ですか! でもね、面白さにおいては、さっきの方が、圧倒的に面白い!
【会場笑】
O これは、カッコつけてますよね。
S これね、格好つけてる! 格好つけてる。なんていうかな、モダンなんだけど、面白みって意味では、さっきの……
O 面白み(笑)。
S さっきの最低なアルバムの方が、味わい深い。
O なるほど(笑)。
S もう、意味が分かんない。これはね、意味が分かる。
O なるほど。じゃ、続いて、マルビン・サンティアゴっていう人。
S また、これは最低な、あの、ベスト3にまた入るような! アイロンをかけてま〜す!
O 80年代、ロマンティック・サルサがブームだったときには、こういう、女性が出てくるジャケットが多かったんです。で、これ、『El filo del pantalon』って、「ズボンの折り目」っていう意味なんですよ。
S ズボンの折り目!
O 何で、アイロンかけてんのかなぁ? 説明して欲しい(笑)
S 何で「ズボンの折り目」っていうタイトルなんですか? 面白いですねえ。全然意味が分からない! これも、お金かけてませんねえ〜! もうほとんど白ホリゾントのまんまですからね! ほとんどお金がかかっていません! それから、右上のロゴのところに、ちょっとこう、左下に薄くシャドウが入ってますね。これ、文字にシャドウをかけるっていうんですね、我々の世界ではね。影をつける。これを、左下にシャドウをつけてるっていうのが、珍しい!
O あ、珍しいんですか?
S 意外と、右下につけますね。
O それ、なんか理由があるんですか?
S いや、理由はないですけど、なんとなく左上から光が差し込んでる、っていうのが多いんですよ。これはね、右上から光が差し込んでいて、左下にシャドウがついてるっていうのが、シャドウのつけ方とすると、ちょっと珍しい。
O 夕方みたいな?
S 何なんでしょうかね? ちょっとそういうのがあるんでしょうかね? まぁ、これはちょっと、やっぱり、今日のベスト3に入るんではないでしょうかねぇ。
O これ、裏も面白いんですよ。
S 裏、いってみましょう、裏。あ、これこれ、これ! この顔見て下さい! この顔! もう、ほんとに、ほんとに、本当に、やる気あるの?! っていう。この何か、いい加減な笑顔!
O そうそうそうそう(笑)。
S こんな感じ?!みたいな、もう〜、最高ですね!これ!
O 結構、グッときちゃいました(笑)。
S なんか、「あたしも、ちょっとやり返してやるわ!」みたいな。そういう感じでしょうかね?
O 卓さん、これ、やられてみたくないですか?
S やられてみたいですねぇ。
【会場笑】
S で、このアイロンをかけようとしてる位置がいいですねぇ。微妙な位置がねぇ。これは、もしかしてカメラマンが、アイロンをもっと下にして下さい、なんて写真撮るときに言ったのかもしれないですけどね。最低ですね! もう、今日は最低連発ですね!!!
O この女の子が、こう、ね、笑ってるっていう。
S 歯出して笑ってますね! これは、もう、今日のベスト3に入るでしょう!
【Marvin Santiago / Los Locos】
O ところで、卓さんは、ジャケ買い、ってします?
S 昔、よくしましたよ! もちろん、もちろん!
O 僕も、ロックとか聴いてるときは、ジャケ買いして、ジャケがカッコいいことと音が、割とイコールみたいな感じだったんですけど、ラテン聴くようになってからは、ジャケ買いすると、ダサさと音がときどき反比例するじゃないですか。だから、ダサいけれども、訴えかけてくるジャケットみたいなね。
S それは、もう、通ですね! オタクですね。
O あまりにもダサいジャケットで買わなかったんだけれども、後から聴いてすごく良くて、まだまだ俺も未熟だなぁ、甘いなぁ、って。
S ラテンの世界は深いです!
O じゃあ、え〜っと、そろそろお時間もなくなってきましたけれども……。他のジャンルもそうですけど、あんまり、自然とかを写してるの、ないですよね。ハワイアンとかだと、割とあったりするんですかね? ラテンは人が写ってるっていうのがほとんど、なんですけども。
これ、プエルトリコのエル・グラン・コンボ。超ベテランの人気バンドなんですが、『イン・アラスカ』っていう、さも、アラスカでのライブ・アルバムのような体裁なんですが。で、サブ・タイトルが「breaking the ice」って、和んでる、とか和ませるとか、そういう意味だと思うんですけどもね……。
S これは、ジャケット・デザインとしてはかなり珍しいアルバムですよね〜! 人が入ってないですもんね、表には。かなり珍しい。あ、エル・グラン・コンボってロゴのところで、またひとつ謎が見つかってしまいました。この「コ」の中(「C」のところ)が、何で、こう抜けてるんだ? っていう。これは謎ですね〜。なんでここが黄色くなってるんでしょうかねえ。ここ、ここ! 普通は空に抜くでしょう、ね?! 普通は、ここは空に抜くと思うんだな。ほら、見て皆さん、ほら、これは謎ですね〜!たぶん校正刷りも出たと思うんですけどもね! チェックはしてると思うんですけれども、すごいですねえ! まあ、このアルバムもちょっと珍しいんじゃないですか。
O 珍しいですね。
S ラブラブな感じが、全然ない!
O 珍しいと思うんですけれども、でもね、裏を見ると、こう、ちゃんと並んでるっていう。
S やっぱり並んでる。
O で、「イン・アラスカ」っていって、さも、アラスカでのライブ・アルバムのようなことを言ってるんですけれども、実はライブ・アルバムでも何でもなくて、ここ見てみると分かるんですけど、アンカレッジですよね。「アンカレッジで、記念写真撮ったよ」っていうだけ。
S 内容とはまったく関係ないそうです! このアルバムの内容とは何の関係もない。
O だから、まぁ、アラスカ・バンドみたいなもん(笑)。
S アラスカ・バンドみたいなもんですねぇ。
O はい。
S あ、裏も、この「C」のところが抜けてる。裏も!
ほら、わざとやってるな。なかなか奥が深いなぁ〜。これは偶然ではなく、わざとやってるってことが分かりました! この裏で! わざとやってるねぇ。やるなぁ! こういう、分からない魅力っていうのが、実は重要ですね、今。分かるよりも、分からないところに、人は興味を抱くっていう。その根本を、昔からこの人は分かっていた。このデザイナーは分かっていた!
【会場笑】
O いいですよねぇ(笑)。僕が見て思うのは、デザインうんぬんよりも「イン・アラスカ」だから、やっぱり、ゾクっとして寒いから、「breaking the ice」っていう(笑)。
S アラスカ・バンドと同じ考え方ですね。
O そう、そういうことです。
S 我々がパクったわけですね!(笑) 我々の方が後ですね! はい! それは申し訳ない。
O まあ、そういうことですね(笑)。はい、じゃあ、このアルバムから1曲。
S 最後の1曲ですね!
【El Gran Combo /Carbonerito】
O はい、エル・グラン・コンボ『イン・アラスカ』からお送りしました。
S やっぱいいですねぇ。
O いいですねぇ〜。というわけで、あっという間なんですけど、
S いや、皆さんにとっては、あっという間だったかどうかわからないですけど(笑)。「長かったな〜! まだやってる!」みたいな!
O はい(笑)。
S そろそろ、我々のトークはこのくらいで、長い時間、この、何か、「ラテン・どうしようもないトーク」にお付き合い頂きまして、本当にありがとうございます。
O 最低ジャケットばっかりで、すいません(笑)。ありがとうございました。
S お楽しみ頂けたら嬉しいです!
O はい、今日はありがとうございました!
(了)


