Top > 高橋めぐみのSOY PECADORA > 岸のりことラス・ペルラス:インタビュー「これぞ、エンタテイメント!」前編

岸のりことラス・ペルラス:インタビュー「これぞ、エンタテイメント!」前編

2016.05.25

 若い人の音楽離れが語られて久しいが、実はそのことよりも、わたしは中年以上の人があまり出かけないことが気になる。さすがにオールス・タンディングやオール・ナイトは体力的に無理だとしても、たまにはライブに行きましょう!もちろん、若い人もね。
 そこで、「行きたいけれど、何に行けばいいのかわからない」とお嘆きのラテン好き諸兄姉にお勧めしたいのが、今回のインタビューに登場してくれる「岸のりこ」と「ラス・ペルラス」だ。

 わたしが岸のりこを初めて見たのは、かつて歌舞伎町にあったラテン音楽を聞かせる大型のライブ・レストラン「Cocoloco」だった。ここは海外からなかなかすごいメンバーを招聘して連日ライブを繰り広げていた伝説のお店だ。懐古譚はしたくはないが、こけら落としがティト・プエンテとセリア・クルースというあり得ない豪華さで、2000年に閉店するまでよく通った。そんなある日、今でも活動している「大高實とカリビアン・ブリーズ」の公演で噂の女(ひと)がゲストで1曲歌うらしいという情報が流れた。その噂の女(ひと)こそ、一時帰国していた岸のりこだったのだ。ベネズエラのSONYからアルバムを出していて、海外での活動が主な彼女が日本で歌うことは滅多になかったので、多くのお客さんが期待しながらその登場を待った。正直なことを言えば「本場のラテン音楽界で活躍しているなんて、怖い姐さんなんじゃないだろうか」とも思っていた。

 岸のりこは東京生まれ。タンゴやラテン音楽が好きだった父、アメリカン・ポップスやジャズをよく聞いていた兄によって自然と音楽に親しむ家庭に育った。女子美術大学でグラフィック・デザインを学んだ後、在学中から続けて来た女優/舞台美術の勉強をした。その後、女優活動の傍ら歌手としてステージに立つようになり、当時の花形ショービジネスのキャバレーでのレビュー・ショーなどにも出演。次第に歌手活動の方に仕事の重点を置くようになった。そして、70年代半ばに、当時珍しかったサルサ・タイプのラテン音楽を演奏する「オルケスタ246」に歌手として参加。さらには名門ラテン・オーケストラの「東京キューバンボーイズ」を率いていた見砂直照氏と出会い、89年の見砂氏最後の公演となったコンサートにも出演、氏が生前最後に認めたラテン・シンガーとなった。とても幸運なスタートを切ったのだ。
 キューバには84年に初めて渡航。90年から本格的に移住。コンフント・フォルクロリコでキューバ音楽の基礎を徹底的にたたき込まれる。その後、人気歌手パウリートFGがいたオプス・トレッセに参加し、音楽大国キューバで外国人としては珍しい第一線での活躍をする。93年に、国際的に活躍する指揮者の福村芳一氏からベネズエラでの活動を勧められ、ベネズエラのSONY MUSICと4年間の契約を結び、デビュー・アルバム『NORIKO』をリリース。公演先のパナマではファンが彼女の顔を大きく描いた「のりこバス」が街中を走るほどの人気を得た。その後、ニューヨークやラスヴェガスでの活動を経て2000年に帰国。日本ではDIVA NORIKOの名で歌手活動を始めた。
noriko.jpg

 わたしのラテン系女性歌手に対するイメージの貧困も相まって、この略歴からも想像されるのはやはり、「豪快に笑う化粧バッチリのちょっと怖い姐さん」であるのだが、話は「Cocoloco」のステージに戻る。黒っぽい衣装で出てきた岸のりこは、堂々たる歌いっぷりで「Camas Separadas(離れたベッド)」を披露。あとでわかったのだがこの曲はアルバム「Noriko」に収録されていて、「のりこバス」が走っていたパナマでかなりヒットしたのであった。それがわたしの岸のりこ初体験で、思った以上の衝撃であった。見た目は予想通りの化粧バッチリのちょっと怖い姐さんだったのだが、良い意味で「この人は只者ではない」というオーラがびんびんだったのだ。その時は、口をきくことはおろか、15年後にまさか自分が彼女のアルバムをプロデュースするとは夢にも思わなかった。
 しかし、それは実現した。「うちにいてのんびり暮らす人生もありだと思うけど」と言いつつも、岸のりこは全然落ち着かない。本当のところはそういう人生にはあまり興味がないのだと思う。彼女は人生で選択を迫られたときには「必ず困難な方を選んでしまう」生活をずっと送っているのだ。2013年にセカンド・アルバム(!)『Doce Recetas De Amor(恋の12の料理法)』のコンセプトを考えたときに、とにかく彼女が好きな歌を歌ってほしかったのと、長く聞き続けられるアルバムにしたいという気持ちが強かった。なぜならば、岸のりこはそこで一旦捕まえないと、またどこかへ行ってしまいそうな人だったからだ。とにかくその時の彼女を音盤に閉じ込めようと思ったのである。結果は現物を聞いていただきたい(本音)。
ADCD-7003.jpg
 岸のりこはこの作品で「コーラス・ワークの楽しさを再発見した」と言っているが、後編に登場するふたりの若手と結成したラス・ペルラスの原型はこのときに出来ていたのだ。「1曲は1幕の芝居のようなもの。今後は芝居のような歌のような、そんなステージをやってみたい」という。それはファンとしては大いに望むところ。「化粧バッチリのちょっと怖い姐さん」に見えた人は、実は心根の優しい人であり冒険者でありカルメンとして「永遠の29歳」を演ずる挑戦者だったのだ。

 2016年6月16日のスペシャル・コンサートの前半はこの岸のりこのステージだ。後半のラス・ペルラスの誕生などは後編に続く。

岸のりこ、Las Perlas スペシャル・コンサート
〜Realidad y Fantasía〜(現実と夢)
2016年6月16日(木)
会場:JZ Brat SOUND OF TOKYO
Open 17:30
1st:Start 19:30
2nd:Start 21:00
入替なし
チャージ ご予約¥4,320 当日¥4,860
ご予約受付中:03-5728-0168(平日15:00~21:00)
posted by eLPop at 19:32 | 高橋めぐみのSOY PECADORA