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女子名を名乗りいくつになっても王子様のような雰囲気、しかしその心は荒野を行く孤独な騎士のようなベテラン・シンガー・ソングライター、「ニルダ・フェルナンデス」:インタビュー(前編)

2014.12.12

 2014年12月2日から5日まで飯田橋のアンスティチュ・フランセ東京でフランスからアーティストを招いて行われる「ブラスリー・ライブ」があった。今回来日したのはスペイン人でありながらフランスで活躍してきた人気シンガー・ソングライターのニルダ・フェルナンデスだった。幸いにもアンスティチュのシリル・コピーニさんから連絡をもらったので、ショーを堪能し、またインタビューもすることができた。
 
 まず謝っておくが、おかしなタイトルで申し訳ない。ニルダは気さくで感じが良くて気取ったところのない素敵な人なのだが、なぜか「その心は荒野を行く孤独な騎士」という印象を持ったのでそのようにタイトルを決めた。
 ニルダ・フェルナンデスという名前から想像される性別は女性である。わたしも初めてその声を聞いたときには、「少しスモーキーなのが魅力的なきれいな歌声」だと思い、女性シンガー・ソングライターだろうと思った。
 実際に華奢な体格でサラサラヘア、可愛らしい顔立ちなので、写真を見ても「あれ?男なの?」と思っても仕方がない。おまけに「ニルダ」という女性名だし。しかし、彼は男性だ。
 ニルダ・フェルナンデスはスペイン、アンダルシアにルーツを持つ両親のもと、バルセロナで生まれた。一家は彼が6歳の時にフランスのリヨンに移住し、以後はずっとフランスに住んでいる。ただし、教育は両国で受けておりバルセロナの大学に通った。基本的に歌う歌詞はフランス語が多いが、スペイン語もまた彼の母語であり、スペイン語で歌うこともあるし、歌詞をフランス語とスペイン語のふたつのバージョンを作ることもある。
 学業を終え、スペイン語教師、同時通訳の仕事などをしながら、リヨンやトゥールーズで「レ・ルフレ(Les Reflets)」というグループで地道な音楽活動を続けていた1987年に転機が訪れた。スペインの人気歌手/俳優のミゲル・ボセーがニルダのセカンド・アルバムから「マドリード、マドリード」を取り上げ大ヒット。おかげでニルダ・フェルナンデスの名前がフランスとスペインで注目され、1992年にはアカデミ・シャルル・クロ(Académie Charles Cros)によるディスク・グランプリで「最優秀男性新人賞」を受賞した。「マドリード、マドリード」のミゲル・ボセーのバージョンとニルダのオリジナルを聞き比べると、声の質に寄るところも多そうだが、前者の方がドラマチックで少々芝居がかった哀愁に彩られているのに対して、後者の方は淡々と歌っていてより直接的に切なさが伝わってくる。今回のインタビューでわかったことだが、歌詞の中に3つだけ「カタルーニャ語」の単語が入っているが、ミゲル・ボセーのバージョンでは、それがカステジャーノ(一般的なスペイン語)に変えられているとのこと。ニルダ曰く、それはカタルーニャに対する「ささやかな弾圧」らしい。もちろん政治的な事情だ。「あの曲をミゲル・ボセーの曲だと思う人がけっこういるけれど、あれは僕の曲だからね。それをきちんと書いて(笑)。スペインから離れてしまった人間にしか書けない曲でしょう」。ああ、確かに、散文詩のように状況が散りばめられた歌詞、知っている場所なのか知らない場所なのか、不安を煽るようなメロディは外から見ている者の視線だ。
 いずれにしてもこの曲は素晴らしい名曲なので、ぜひ聞き比べてほしい。
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アルバム「Nilda Fernandez」(1991)「マドリード、マドリード」収録。
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アルバム「Los Dias Aquellos」(1997)

 しごくおおざっぱにニルダの生い立ちとシンガー・ソングライターとしてのスタートまで語ったが、「後編」ではメルセデス・ソーサとの共演、そして一番の代表作にしてフェデリコ・ガルシア・ロルカを歌ったアルバム「Catelar 704」、名前の秘密などを書く予定。
posted by eLPop at 19:04 | 高橋めぐみのSOY PECADORA