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アルデマロ・ロメロ歌詞の世界2 「今宵女房と酔いしれて」

2014.11.12

「今宵女房と酔いしれて」 
Esta noche voy a emborrachar con mi mujer
詞:アルデマロ・ロメロ

今宵、女房と酔い痴れたい
まずはなじみのピアノバー、6時にしよう
彼女には、一輪のバラ、マティーニ一杯、キャビア少々
俺には、いつものやつと、ボサノヴァにジャズ
ディナータイムは10時頃と行きますか
フレンチ・クオーターのどこかの店で
デザートと食後酒の後で、彼女はこう言うかな
「たまには言い訳ぬきで、踊りに連れてって」
踊ろうじゃないの! ダンスはからきしのこの俺が
夜更け過ぎまで、恋女房に寄り添って
そして囁やこう、彼女の耳元で、愛のコトバ
大胆にして奔放、《成人指定》の決めゼリフ
シャンペンが脚まで回って
おもむろにもっと自由に振る舞いたくなって
彼女はよく心得たもの、俺の気分を察して
「家に帰りましょうか」と先回りして
車の中で彼女はねだる「カセットかけて」
アントニエッタのボレロ「キエン・エス・ウステ」
でもすぐに気が変わって
こう言うはずさ「あなたの歌が聴きたい」って
歌おうじゃないの! 歌手じゃないこの俺だけど
ちょっと意味深な歌しか知らないけど
そしてまだ埴生の我が家には着いてないけど
どこかの薄暗い路地裏で、、、
今宵、女房と酔い痴れたい

Esta noche me voya a emborrachar con mi mujer
empezando en el mismo piano bar, coo a las seis
para ella una rosa y un martini y un poco de caviar
para mí lo de siembpre, combinado en bossa nova y jazz

Cuando llegue la hora de cenar, como a las diez
nos iremos a un rinconcito del Barrio Francés
y despés de los postres y licores, ella me pedirá
que me deje de rollos y temores y la lleve a bailar
Y bailaré, yo que no bailo nada
hasta la madrugada, pegado a mi mujer
y le diré piropos al oído
audaces y atrevidos, censura "C"

Por estar saturado de champán hasta los pies
de repente me querrá gobernar la insantez
pero ella que sabe lo que pasa y sabe como soy
me dirá que vayamos a la casa, pues sabe a lo que voy

Ya en el carro ella me pedirá "pon el cassette"
donde canta Antonietta su canción "¿Quién es usted?"
y es seguro que luego de un momento ella cambie de opinión
y me diga que ella lo que quiere es que le cante yo

Y cantaré, yo que no soy cantante
canciones insinuantes de esas que yo me sé
y aún sin llegar a una puerta segura
en cualquier calle oscura. . . .
Esta noche me voya a emborrachar con mi mujer.

古き良き時代のチャチャチャの形式で書かれた、アルデマロ・ロメロ1980年代の作品。この歌詞は、回想でなく、妄想であることにお気づきだろうか?
このころ、巨匠は、10年余りにわたり手がけてきたクラシック音楽関連のプロジェクトに挫折し、失意のうちにあった。さらに追い打ちをかけるように、妻にも去られてしまう。
身も心もボロボロになった巨匠は、お気に入りのピアノ・バーに出没し、夜な夜な往年の自作ボレロを歌い、さらには即興の詩曲に傷心を託し、、、それでも想いあふれてやまない巨匠は、ついに歌手としてレコード・デビューまで果たしてしまう。「歌手じゃないこの俺が」と自覚していた巨匠を歌わせたのは、彼の傍らにはすでにいない、恋女房だったのだ。
劇中劇のように言及される、「キエン・エス・ウステ」(あなたという人は)は、1980年代中頃、ボレロ・リバリバルを先取りして、彗星のように消えていったベネズエラのシンガー、アントニエッタのヒット曲だ。1940年代末、20歳そこそこでベネズエラ初のボレロの国際ヒットを書いたアルデマロ・ロメロ。その40年後傷心の巨匠はかつての自分と同じ年頃の女性がうたうボレロを聴きながら、クダまいていたのだろう。
「クソだな。このアレンジ。俺に頼めばもっと格好よく編曲してやるのに、、、でも、なぜか泣けるぜ、この子の歌」
脳天気にラブラブな恋女房との虚構に、ふと割り込んだボレロのリアリティ。そう思って聞き直すと。巨匠の歌もまた胸にせまる。

巨匠自らの歌でどうぞ
https://www.youtube.com/watch?v=IrRDipCbpxw

劇中歌「キエン・エス・ウステ」熱帯の歌姫の、この寂寥感はどうだ!
https://www.youtube.com/watch?v=g_fAOh18nZ4
posted by eLPop at 22:38 | 石橋純の熱帯秘法館