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エル・グラン・コンボの軌跡(2) アカンガナ!

2014.08.31

(第一回より)

■エルグランコンボ結成

人気絶頂のコルティーホのコンボだったが、南米公演の最後パナマからの帰りのサン・フアン空港で、イスマエル・リベラが麻薬所持で逮捕されてしまう事件が起こった。

これをきっかけにグループの将来に不安をを感じたキト・ベレス(tp)、エディ・ペレス(as)、エクトル・サントス(as)、マルティン・キニョーネス(conga)、ロベルト・ロエナ(bongo & dance)、ミゲル・クルス(b)とラファエル・イティエールが、ロベルト・ロエナの家に集まり脱退・新グループの結成を決意。その年の5月にバヤモンのクラブ、”ロックン・ロール”でデビューした。

現在に続く「エル・グラン・コンボ・デ・プエルトリコ / El Gran Combo de Puerto Rico」の誕生だ。

■アンディー・モンタニェスとペジン・ロドリゲスの時代

1962年の結成から’70年までのGema(ヘマ)レーベルの時代は、コルティーホ楽団を受け継ぐ強力なスピード感とリズムをベースにアンディー・モンタニェスとペジン・ロドリゲスの2人のボーカルの魅力で一躍スターにのし上がった時期。

7年間に19枚のアルバムと6枚のコンピ/ベスト盤を出す人気で、そのスタートからの実力が分かる。ドミニカ人歌手のホセイート・マテオを歌手に迎えてのデビュー盤の次の2枚目『..de Siempre』が弱冠19才のボーカル、アンディーが参加した実質的なデビュー盤だ。

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コルティーホの後を継ぎながら、よりノベルティー感の強いユーモアを含んだ歌詞とステージング、2人のボーカルの魅力、グアラチャ、カリプソ、メレンゲ、ダンソン、ワワンコー、ビギンと多様な曲、そして何と言っても、コルティーホ直系の爆発し襲いかかるリズムが人気の秘密だ。時に強力に時にしなやかに飽きさせないグルーヴは当時のカリブの音では革命的ともいえるものだった。

ラジオ番組に次いで、TVの人気音楽番組やお昼のバラエティーショーなどのレギュラーを勝ち取り一気に人気が高まった。

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同年の3作目『Acangana/アカンガナ』はアメリカ大統領ケネディー暗殺の2日前にリリース。事件の混乱で北米やプエルトリコより中南米への配給が先行したが、いずこでも大ヒット。ようやく北米、そしてプエルトリコでの発売となった時には中南米の人気も背負い、初のゴールド・ディスクとなる特大ヒットとなって人気を不動のものにした。

NYではまだチャランガのブームでファニア・レーベルも出来ていない1963年の事。サルサの誕生の事はNYだけ見ていても片手落ちだという事が良く分かる。

ところでこの関西弁のような「アカンガナ」とは?というと、これは「ドカーン」とか「ドスーン」とかを表す言葉。アルバムのジャケには爆発したようなイラストが書かれているが、本作が作られたのはキューバ危機の直後。

キューバ危機とは1962年にアメリカとソ連(現ロシア)との間の対立で政治・軍事的緊張がが高まり、ソ連の核ミサイルが同盟国キューバに持ち込まれて、核戦争一歩手前となった事件。幸い危機は回避されたが、米軍基地を持ち、米ソの核戦争が起こればただでは済まないプエルトリコにとってはキューバ危機の恐怖は巨大だった。

そんな事件を早速取り込んで歌われた歌詞は「さあ踊り続けよう、楽しもう、だって原爆が爆発するんだから。アカンガナ!」というもの。危機感迫った事件を逆手にとって大ヒットする彼らには脱帽もの。日本公演でも歌われる可能性大の曲。その時は是非「アカンガナ!」とご一緒に!

■そして大ヒットの連続
その後の『Ojos Chinos-Jala Jala』『El Caballo Pelotero』『El Swing』は現在のレパートリーにまで続く大ヒット作を次々に生んだアルバムだ。
Ojos Chinos.jpgCaballo Pelotero.jpgEl Swing400.jpg

’67年にはブガルー・ブームに乗り3枚のアルバムをリリースしたが、NY的なのブガルーを想像すると大外れ。あくまでグラン・コンボ的カリブの明るいブガルーだ。ボンバにR&B的なアクセントを合わせたような新リズム、ハラ・ハラから南アフリカのミリアム・マケバのパタ・パタまでまとめて演ってしまう雑食性満載。

キューバ音楽のお手本が必要だったり、エル・バリオの緊張感の中にあったりするNYとは違い、元々コルティーホ直系のプエルトリコの音があった上でのブガルーだったことが分かる。
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しかし良い事ばかりは続かない。’69年にバンドに試練が襲う。

さて第二回はここで一旦お休みして、次回へ。
(続く)
posted by eLPop at 02:18 | 伊藤嘉章のカリブ熱中症